ローグ、置き土産を手に入れる
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
嗚咽した。
涙が止まらなかった。
酒場で、人前だというのに、大声を出して、泣き続けた。俺はバカだ。あいつらの嘘に気づかなかった。あいつらとずっと一緒にいて、あいつらがどういう人間かわかっていたのに、あいつらを信じることができなかった。
あいつらと一緒に行きたかった。そっちのほうがよかった。これから生きていて、あいつら以上の仲間になんて出会えない。あいつらと一緒に俺は死ぬべきだった。涙があふれてあふれて止まらなかった。
泣き続けて、ようやく落ち着いたころ、手紙以外の荷物に気が付いた。銀貨だと思った革袋には銀貨ではなく、いくつものメダルが入っている。もう一つの袋には、ガントレットのようなものがあり、そこに、メダルを差し込むような穴が開いてある。
そちらの革袋にも手紙が入ってあった。
「「「
ローグへ。
これは、俺たちから、お前への、置き土産だ。
俺のラーニングの能力を、リナハの呪術とアビーの道具制作のスキルで形にしたものだ。俺が覚えたスキルをメダルの形にしてある。それをガントレットの穴に差し込むと、その能力が使えるようになる。使いこなせるようになるにはだいぶコツがいると思うが、まあ、時間をかけたら何とかなるだろ。コツコツやって最後は何でもモノにできるのが、お前の最大の長所だって、俺たちは知ってる。
ほかにもいろいろな機能を、アビーとリナハが持たせたらしい。詳しいことは使っているうちにわかるだろう。
本当は、お前には冒険者をやめてほしい。でも、お前がそういう奴じゃないこともわかってる。だから、これを俺たちだと思って、お前の冒険に連れて行ってほしい。
じゃあな!元気でやれよ!
」」」
また泣いた。
◇ ◇ ◇
町から、1キロほど離れたところ。魔物の出現地域。
目の前には、ランクFクラスの魔物。スライムがぴょんぴょんと飛び跳ねている。
仲間から託されたガントレットの性能を試すためにここに来た。
ガントレットを構え、”火炎”と書かれたメダルと入れる。メダルがぐるぐると回りだす。俺は、スライムに向けて、ガントレットを振りかざす。
”ちらっ”
ガントレットの先に、マッチでつけたくらいの小さな炎が出て、ちらちらと燃えている。
「なん…だ…これは……」
スライムはぴょんぴょんとはね、どこかへ行ってしまった。
説明書には、使いこなすにはコツがいると書いてあった。これを使いこなすには、そうとうの練習がいるようだ。アキラから託されたメダルは数十枚ある。これはアキラの人生だ。これらのメダルを使いこなせるようになることが、アキラの意思を継ぐことだと思った。
そうして俺は、また、山にこもった。このガントレットを使いこなせるようになるためだ。
そして、15年後。ガントレットを使いこなせるようになって、山から降りてきたら。
世界が滅んでいた。
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