ローグ、パーティーを追放される
「ローグ、もうこのパーティにお前のいる場所ねぇから!」
そういってくるのは親友でこのパーティのリーダーのアキラだ。スキルラーニングが得意な剣使いだ。世界を救うといって大口を叩いて一緒に村を出た時からの付き合いで、ギルドに騙されて報奨金が入らなかった時もひとつのパンをふたりで分け合ったなかだ。口は悪いが決してそんなことをいうやつじゃなかったのに。
「そうですぅ!ローグくん…、昔からずっと、足手まといで役立たずだとおもっていたですぅ!どんくさくって、いざというときにいつも役に立たなくって、ずっと腹が立っていたですぅ!」
そうアキラの隣でいうのは呪術師のリナハ。彼女もずっと冒険を一緒にしてきた仲間だ。確かに俺はどんくさいところがある。この間も、探索に行った封印の洞窟で後衛で敵を食い止めているうちにみんなとはぐれてしまった。
「ローグ…、さん、は、実際、実力不足で…こ、これからの私たちの冒険に、つ、ついてこれないと思うんです、だ、だから、ざ、残念ですけれども…。あ、あの。こ、ここで、お、お別れです!」
涙声で語る、アビー。アビーはこのパーティーの回復役で、すごい優しい子だ。道具製作のスキルを持っていて、その実力は一級品だ。実は、みんなに秘密でアビーとは付き合っていた。ある程度お金を貯めたら結婚しようって話もして、そうしたらその時は微笑んで笑ってくれたのに。なんでそんな泣きながら話すんだよ。
「アビーはなぁ、ずっとお前のことキモいっておもってたんだとよォ!でもなあ、同じパーティーの手前無碍にするのもワリィからって、ずっと我慢してたんだってよ!…実はさぁ、俺とアビーってずっと付き合ってたんだよ、お前に隠れて。お前がアビーに愛を囁くのを二人で陰で笑ってたんだよ!」
といって、ローグが遠慮がちにアビーの肩に手を回す。
「そ…そうなんです、ず、ずっとローグさんのこと、気持ち悪いって思ってました。だから、もう、ローグさんがパーティーを離れるって聞いて、すごく安心して、うぅ」
といってアビーが嗚咽する。
「あ、ローグさんに言われたこと思い出したら、吐きそうになってしまいました。そ…それだけ、ローグさんのこと、気持ち悪いって…だ、だから、もう、私たちの前に、顔を出さないでくださいね」
「ヒヤアアァハッハッハッ!すんげー情けない顔してんな、ローグ。お前の顔見てたら笑けすぎて泣けてきたわ」
アキラが涙を流しながら大笑いする。嘘だろ、俺のこと好きだって言ってくれたじゃないか、といって、アビーの手を握ると。
“パンッ!!!”
とばい菌を触るみたいに手を払われた。アビーが体をガクガクと震わす。
「さ、触らないでください!汚いのがうつります!」
「あーっ!ローグくんがさわったですぅ!アビーにさわったですぅ、キモーイですぅ!」
「俺らみんな、お前のことキモイって思ってたんだよ。でもお互いほかのメンバーに遠慮して言わなかったんだけど、話してみたらみんなお前のことキモイって思ってることわかってさ、だから、も、お前のこといらねーんだわ。実力も低いしスキルもすくねーし、、突っ立ってることしかできねーし、ようは、お前ゴミなんだわ。冒険者としての才能もねーから、田舎に帰って畑でも耕せや!お前にはそれが似合ってるわ」
本気だった。みんなのことを信じていたのに。探索者家業もそろそろ軌道に乗って、ある程度名前が知れたころだったのに。
俺は、パーティを追放される。
「じゃあ、これ選別だから」
革袋を二つ、アキラから投げられる。片方は筒状の何かが入っていて、片方はジャランという音がする。銀貨か何かだろう。
そういって、三人は俺の前から去っていった。
こうして、おれは一人になった。悔しさでいっぱいだった。ずっと苦楽を共にした仲間から裏切られた。そして決意した。すごい強い戦士になって、あいつらを見返してやると。手元の革袋を拾う。中身は見ない。3年だ。3年であいつらを見返せるくらいすごい戦士になってやる。そして、後悔するあいつらに、この革袋を投げ返してやる。
そう決意して、俺はそのまま、山にこもった。
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