03
指導看護師の山下看護師と深夜のラウンドをしてナースステーションに戻ってきた時のこと。一緒に夜勤業務をしている帆波看護主任は内線電話に対応中だった。
「山下さん」
「はい」
「緒方さんの受け入れしてくれる」
「またですか?」
「そうみたい。救急外来から連絡あったらお願いね」
「わかりました」
山下指導看護師は、大きなため息をひとつ溢して私に言葉をかけた。
「受け入れする患者様は、緒方佐知子さん」
「はい」
「結城さん、手伝ってもらえるかしら?」
「もちろんです」
緒方さんは、外来で週三回人工透析を受けている。透析患者は排尿ができないため、水分をとりすぎると身体に水がたまりすぐに心不全になる。 緒方さんは水分コントロールがうまくできなくて、よく心不全で運ばれてくる患者様であった。
救急外来から連絡があり、山下看護師とふたりで緒方さんを迎えにいく。
「山下さん、ごめんなさい。また迷惑かけちゃったね」
体から余分な水分を取り除き心不全を脱した緒方さんが、山下看護師に話しかけた。
「緒方さん、今は自分で自分を責めないでくださいね。どうかお身体をいたわってください」
山下看護師は、緒方さんに寄り添うように語りかけた。
「ありがとう」
緒方さんの顔に笑顔が浮かんだ。