出会い
初投稿です。
最初なので、3話分一時間おきに連続投稿設定しています。
目を覚ますと、そこは洞窟の中だった。
はるかに上の壁面に開いた小窓のような穴から、ほのかな明かりが見える。
ゆっくりと体を起こすと、あちこちが痛かったことから、なんとなくあそこから落ちたのかなと想像がついた。
それにしても、何て高さだろう。
上れるかな?
何気なく岩壁にかけた手が、見慣れた自分のものより小さい気がして違和感を感じた。
目に映った自分の容姿は、どう見ても小さな子供のものだ。
もしかしたら、別の入れ物に入っちゃったかな。
そう考えて、あまりにも突飛な考えに一人で笑った。
入れ物というのは、体のことだ。
物心ついたころ、私は自分の体のことを魂の入れ物のように感じていて、ときどきは別の入れ物から外を眺めてみたいなと、よく妄想していた。
さすがに、20年も同じ入れ物(!)で生きていると、今生を終えるまで入れ物を取り替えることは出来ないということは理解している。
つまり、今私が覚えている20年ほどの人生はきっと終わってしまったということなのだろう。
さしずめ、穴から落ちて死にかけたはずみで、転生前の記憶がよみがえったというところか…
薄暗い洞窟の中だけれど、自分がガリガリに痩せていて、服と呼ぶにもお粗末なぼろぼろのワンピースを着ているのはわかる。
この世界に生まれてからずっと、親とおぼしき人たちには「おい」とか「お前」としか呼ばれた覚えがなかったので、今の名前も分からない。もしかしたら、この洞窟に捨てられたのかもしれないなと思った。
と、なると
助けを待つのも時間の無駄っぽい。
とりあえず、体が動くうちに自力で出口を探して何とか生きていくしかないかと、洞窟の探索を始めることにした。
私が落ちた穴は細い横穴につながっていて、そこを足元に注意しながら壁沿いにすすむと、急に開けた場所に出た。
ほんのりと明るいそこは壁一面に紫水晶がびっしりと群生するドーム状の部屋。
「アメジストドーム?」
思わず声が出た途端、ドームの中央に鎮座していたひときわ大きな紫水晶が目もくらむほどの光を放ちはじめた。気がつくと超絶イケメンの、見るからに偉い人っぽく光っている人型の何かが光臨している。
「我はアメジストの精霊王。我を呼んだのは、そなたか? 幼子よ」
文字通り、輝くほどの満面の笑みで彼は私に両手を差し伸べた。
特に呼んだ覚えはないが、ここはそのままこの場の雰囲気にのっかっておこう。
「せっかくここまで来たのだ。さあ、地位でも名誉でも財宝でも、永遠の命でもよいぞ。何でも望みのものを言うがよい。」
定番中の定番ともいえる呼びかけに、少し首をかしげて考えてから、私は真面目な顔ではっきりと答えた。
「じゃあ、飲み物とおいしいご飯をください。できれば暖かい布団も」
こら、アメジスト王。
自分で聞いておいて、人のことを残念な生き物みたいに見るんじゃない。
まだ、主人公の名前すら出てきていないという…