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四章2〜“半歩の余裕”

 


 俺は数々の修行をしてきた。

 剣術や魔法、体術から細かく為になりそうな事はやってきた。

 高い意識を持って共に行う仲間がいたから、根気よく続けることが出来た。

 天才肌だが努力は惜しまず、常にクリスを目標にトレーニングを続けるエイルーナ。

 目標が出来たから人が変わったようにトレーニングに励むミシェイル。


 この2人のお陰で俺は成長出来たと言っても過言ではない。

 細かく教えてくれるアルフリードにも勿論感謝しているが、近いレベルで共に切磋琢磨する事の大切さを身をもって感じることが出来た。


 だが大変だったのは事実だ。

 特に苦労したのは左手の訓練。

 俺は前世でも右利きだったし、そんな珍しい事ではない。

 特に日本人の文化としてその割合の方が多いだろうし…。


 ちなみにこの世界にそんな概念はない。

 そして前世の記憶を持ってこの世界で生活を始めた俺は当たり前のように右腕を酷使するのだ。


 本来なら別に不便な事なんてないのだが、俺の戦闘に至っては別だ。

 俺の魔法は何故か右腕に偏っている…というより右腕でしか使えない。


 左手でやろうとか、足からとかこの5年間何度も何度も試したのだが効果はなかった。


 つまりはそういうものなのだと諦めて、解釈する。

 次に戦いの選択肢としての問題だ。

 やはり右腕をメインに剣を振るとなると、魔法を使い難いのだ。


 使いたいタイミングで遅れてしまったり、咄嗟に使えなかったりと…まぁこれもエイルーナに気付かされたんですけど…。


 なので左手の訓練を始めたのだ。

 日常生活では左手であらゆる事を行う。

 メイリーンやミリターナが食事中に少しムッとしているような気がしないでもなかったが、気付かないふりまでして行った。

 汚い字を書いてみたり、普段やらないような作業を手伝ってみたりと…。

 レイスやミシェイルは、剣を左で振れればいいだけじゃないのかと…。

 違うのだ…。

 右腕でピッチング出来ても、左腕で出来ないのと同じなのだ。

 感覚の繊細さや、反応速度、筋力やバランスと左右での差は非常に大きい。


 その為に左腕で出来ないのとならないのだ。

 左腕であらゆる事を右腕と同じ感覚で出来るようになる。

 エイルーナはすぐに納得してくれた。


 そんな訓練を続けた結果、俺は左手の繊細な感覚を手に入れた。

 字を書くとたまに書きたい字がわからなくなったりするが、食事から他の事は遜色ないレベルに鍛え上げた。


 左腕の感覚を手に入れるだけではなく剣も振り続けた。

 両手で、右手で、左手で…。

 特に左右は感覚の違いを一振りずつ確認しながら。


 疲れてきたら次は魔法を使う。

 何が出来て、何が出来ないのか…。

 出来そうな事を調べていく事など片っ端から。


 何より重点を置いたのは詠唱を省いて使う事。

 そしてそれを獲得したら試したい事があったのだ。


 結果から言うと詠唱を省いて発動する事は出来る。

 イメージをより明確にする必要があるので苦労したがそれは可能だった。

 アルフリードは驚いていた。

 曰く無詠唱とは熟練の技らしい。

 何年も鍛錬を積んで得る技術らしく、そう簡単にはいかないのだと…。

 俺にも才能があるんじゃね?と鼻高々に成り掛けると、実践練習でエイルーナにボコられた。


 無詠唱を獲得した事で試したかった事を試す訓練に入っている。

 インパクトアームズとボンバーアームズの同時使用である。


 ボンバーアームズはマナを爆弾として仕込む事が出来て、俺のマナに反応して起爆する。

 俺のマナとは、俺の魔法の問題でインパクトアームズを使うのが手っ取り早い。

 同時に使えば仕込む、起爆の段階を踏まなくてもいいのではないかと…。


 これがつまりミシェイルをジュラテッカから助けた時の殴っただけで爆発したのは、これを無意識に行ったから…そう仮説にして訓練している。

 結果はまだ…出ていない。


 マナが切れそうな気がしてきたら、また剣を振る。

 しっかりと音を、剣筋を確認してひたすら振り続けた。

 頭に明確な敵を作り出して戦う。

 相手はクリスだったりジュラテッカだったりが多い。

 エイルーナはイメージしなくてもいいしな。


 今回はイメージではない本物のエイルーナさんが相手です。

 というかもう踏み込んできています。


 エイルーナ基本的に小細工はしない!

 真っ向から踏み潰すスタイルだ!


 才能に溢れたエイルーナだけど、俺が知っている中でその才能に溺れて努力を怠るような姿を見た事は無い。

 彼女はいつでもストイックだ。


 そんなエイルーナが繰り出す一撃は基本的に早く鋭い。

 訓練にも関わらず、一撃必殺を狙っているが如くだ。


 正眼に構えていた俺は半歩引いて、半身になりながら左手で剣を握る。


 エイルーナの素早く振り下ろされる剣に向かって、横から弾くように剣を走らせる。

 鉄同士がぶつかって火花が散る。


 少し俺の方が体勢を崩されている。

 エイルーナは迷いなく二撃目を打ち込んでくる!

 体を捻り、腕を鞭のようにしならせてその二撃目も同じように剣をぶつけて軌道を逸らす。


 エイルーナは当たり前のように追撃を重ねる。

 俺はその剣に同じように弾く。


 鈍い音と甲高い音が混じり合う剣戟。

 ぶつかり合う毎に剣は火花を散らしている。


 体勢から見ても俺の方が劣勢なのは間違いないだろう。

 エイルーナは常に先手を取って動き、攻撃を繰り出す。

 防がれてもさらに猛攻を仕掛ける。

 それは気持ちや性格の面が大きいだろう。


 俺も先手を取りたいところだが、基本的に思案してから動いてしまう。

 どうしてもエイルーナに先手を取られがちなのは厳しい所だ。


 だが後手に回っているとはいえ、負けたわけでは無いのだ。

 俺がしぶとく止めることに、流石のエイルーナもリズムを変えてきた。

 さっきから前後の動きを軸に攻撃を繰り出していたエイルーナは、左右に脚を使って動き始める。


 その動きはもちろん早く正確だ。

 だが、俺はこのタイミングを狙っていた。


 前後の動きだけのエイルーナは素早いステップで、間合いを調整する。

 しかし左右…つまり横の動きが入れば歩数にして半歩程増える。


 つまり一瞬の余裕が出来る。

 エイルーナの素早い踏み込み、その勢いを殺さない流れるような横薙ぎを繰り出してくる。


 俺は剣を下から打ち上げるように振り上げる。

 それは今までと変わらない動きだ。


 だが、一瞬の余裕の間にさっきより腕のしなりを意識して強く踏み込み、そして強く振り上げた。


「ッッ!」


 エイルーナの剣は上に打ち上げられる。


 これで体勢は五分、いや意表を突いた分上回る。

 俺は剣を自然な流れで腕を曲げて追撃のモーションに入る。


 エイルーナは体勢が崩れている。

 いくら彼女の方が速くてもこの一撃は防御に回らなければならない。


 エイルーナは言うまでもなく攻撃型だが、それでも防御術が下手なわけでもない。

 だが、攻撃と違い防御にはこうしなければならないというタイミングが発生することがある。

 つまりはそれを発生させる為に崩したりなんなりという駆け引きが生まれるのだが……。

 エイルーナはつまり俺が最も自然な形でエイルーナに詰める手を予想してなんとか止める動きをするが、俺はそのタイミングを敢えて外した、同時に剣の軌道を少し変える。

 エイルーナと戦う前にイメージをした流れだった。

 剣はエイルーナの読みを上回り、彼女の防御を掻い潜る。

 エイルーナの顔の目の前で剣が止まる。


「……さて、今回は俺の勝ちだと思うのだけど…どうかな?」

「ぐっっ…ううぅっ…」


 俺は勝利した。

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