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七章13〜“そういう意味”

 


 エイルーナは終始申し訳なさそうにしていた。

 彼女の抜ける穴は大きい、しかし彼女自身の事を考えるなら、この選択は正しいのだとそう思えるが、結果としてどうなるかわからない。

 結局その選択の正しさは、答えが出てから決まるのだから。



 そんな俺は昼前に起きて今に至る。

 男部屋女部屋と分けて借りたこの部屋は、当初3人ずつで別れていたが、ルシエルとメリエルが別部屋を借りてしまったので実質2人ずつ。

 俺やレイスはいいが、今後はミシェイル1人になるのだが…大丈夫だろうか?


「ん〜、おはよぉ」

「ああ、おはよう」


 目をこすりながら起き上がるレイスと挨拶を交わす。

 俺はレイスより先に起きて、顔を洗って、今は髪の毛を櫛でといている。

 俺の髪の毛は赤毛の腰まである長髪で、さらに直毛。

 若さ故の潤いもあり、ミリターナ程ではないかもしれないが、それなりに美しい髪なんじゃないかと思う。

 そもそも何故こんな髪型なのかといえば、一言で説明するならクリスへの憧れである。

 クリスのように俺も1つに纏める、つまりポニーテール男子である。


 まぁ短くした方がいいんじゃないかと思う事もある。

 前世では知らなかったが、女性のような長い髪は洗うなりなんなりと手入れが大変である。

 でも前世ではやる事がなかったし、異世界ならではじゃないかって理由。

 あとは純粋にクリスのようになりたい、それに落ち着くのだ……水面に映る自分がクリスに見えたりすると、頑張らなきゃってなる時とある、毎回とは言わないがな。


 そんなわけでこのロン毛の手入れをしているのであるが、レイスも髪は長いので同じようにするのだが…本人の表情は浮かない。


「どうしたんだよ?」

「いや、なんか寝付きが悪くてさ」


 エイルーナが抜ける事が要因だろうか?いや、そうだろう。

 俺もエイルーナの為だぁ!とか言いながら突っ走ってしまった節がある。

 レイスやミシェイルに相談してからでも遅くない事だが、俺は一人で決めて行動してしまった。

 その点は謝らないとな……でも後悔はしてないぞ?


「レイス、ごめん」

「ん?何が?」

「エイルーナの事、相談せずに決めて……」


 俺は手を止めて、レイスに向き直り謝罪する。


「あー、いいんじゃない?ルーナちゃんの為なんでしょ?仕方ないよ」

「あ、えっ…うん…?」


 思いのほか即応で、そして雑な回答になんだかスッキリしない。


「俺だってルーナちゃんの為にはその方がいいかもしれないって気もするし…正直さ、俺達の方が不安だけど、それはなんとかなるでしょ」


 レイスはそう言って立ち上がり、顔を洗いに行った。

 レイスの言う通り、どっちかって言うと俺たちの方が心配な点はある。

 洗濯なんて下手なりに頑張ります、お金の管理もかなり不安だが、食事に至ってはさらにである。

 俺も前世では軽く料理くらいした事はある、なんならアヤよりはうまかった。

 しかしこっちに来てからは、屋敷ではナスタートの方々が用意してくれるし、旅に出てからもエイルーナに頼りっきりだった。

 今思えば体調不良なんかにならなかったのはエイルーナの栄養管理のおかげなのではないだろうか?


「やっぱ止めようかな……」




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 その日は俺、レイス、ミシェイルの3人揃ってエイルーナに食事や洗濯、お金の管理諸々についての説明や注意事項を聞かされた。

 こういう事をしていると、パーティを抜けると言っても、まだ何処か迷っているようにも見える。

 理由は間違い無く、俺たちに対する心配なのだ。

 そんな事でエイルーナの選択を台無しにする訳にはいかないと、必死に覚える。

 元々かな脳は優秀なようだし、何とか理論というか、形としては覚える事が出来そうだが、実践するまでは何があるかわからないので仕方ない。




 そしてもう一つの仕事というか…なんというか…。

 俺が見届けるべき事、その為にエイルーナと2人でルシエル達の部屋を訪ねた。


「あ、レオっ!ルーナ!入って」


 扉をノックすると、来るのを待ってましたと言わんばかりの早さで扉が開く。

 さながら自動ドアである。


「お邪魔しまーす」

「失礼します」


 メリエルに案内されるまま部屋に入ると、俺達の部屋より一回り小さな部屋、そして椅子に座るルシエルが居た。


「来たんだな…」


 俺…というよりはエイルーナを見てそう口にするルシエル。

 俺は小さく頷くと、エイルーナはそのままルシエルに歩み寄る。


「…私も旅に同行させて下さい」


 エイルーナは前置きなくそう口にすると、頭を下げた。

 ルシエルに話を通しているのは伝えてあるが、俺なら前置きをする気がする…、まぁエイルーナっぽいのかもしれない。


「…雑用も頼むぜ」

「はい…」


 エイルーナにそう告げると、ルシエルはヒラヒラと手を振って、もう出て行けと言いたげな表情を浮かべる。

 エイルーナも返事をすると、そのままメリエルにも話をしに行く。


「…エイルーナの事頼む」

「…お前は親かよ」


 俺からも頭を下げれば、何処か呆れたような声色でルシエルがそう返してくる。

 そういえば今回の件で、俺は何かお父さん感が強い。

 未来に向けてお父さんの感覚を少し味わう事が出来たと…そういう事にしておこう。


「ちゃんと守ってやってくれよ?」

「守られるのはアイツの為にならねぇと思うが?」


 ルシエルも今回のエイルーナの行動理由を理解している。

 もしかしたらすんなり受け入れてくれたのは、少し責任を感じていたりしたのかもしれない。


「わかってる!でもそういう意味じゃないけど、そういう意味なんだよ」

「…はいはい」


 俺もうまく言葉に出来ないが、なんとなくのニュアンスだけでも伝わってくれたら嬉しいし、理解してくれていると信じている。




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