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七章10〜“コンプレックス”

 


 キツく怒られた女の子を追いかけて宥める。

 これが今回の俺のミッションである。

 まずミッション内容を整理しよう。


 ターゲットはエイルーナ。

 俺たちの仲間である女剣士であり、今12歳と多感な時期であるのは間違いない。

 彼女はストイックな強さを求めるタイプの、現代社会でいうアスリート系の女子。

 そんな彼女はコーチであるルシエルに、お前に足りないのは第六感だ!

 それも子供の頃の生活が問題で無くしてしまったものだ!普通にやってたらもう二度と手に入らないぞっ!

 そんなんじゃ俺の現役の頃の記録を抜くなんて無理だ無理無理無理無理。


 まぁあらすじとしてはこんな感じかな?うん!

 結局何が言いたいかって?

 難しいことやるよーってことさ!






 エイルーナは夜の海岸に居た。

 そもそも町から外れた所いた俺たちからすると、帰り道がてら寄り道するような感じな場所だ。

 海岸に座って夜の海を見ている。

 夜の海を眺める美少女、絵になる…しかし絵心は自信がないのでカメラが欲しいがカメラがない、残念!


「横…いいか?」

「…どうぞ」


 海岸に座るエイルーナに歩み寄り隣に座る許しを問うと、こちらを確認する事もなく返事した。

 少しだけ距離を置いて隣に腰を下ろす。


 どうしよう…。

 こういう時の…俺は前世の記憶を必死に遡る。

 勿論そんな経験なんて殆どないが、アヤだって女性だったし、テレビやらなんやらでも熱く語っている奴だったいた訳だ。

 女性の悩み相談やら愚痴などは基本的に相槌を打ってそうだよねーって話を聞いてあげるのがいいとか…。

 でもとか言って女性の意見を否定しない事が大切だとか言ってたっけ?


「…正直少し納得してしまった所もあるんです……ルシエルにああ言われて……、私じゃクリス様のようになれないんじゃないかって…」


 掠れそうな弱々しい声でエイルーナは話し始めた。

 急にで少し驚くが、それほど溜め込んでいたのだろう…というか、これを否定しちゃダメなの?

 いやいやそんな事ないよってのが悪手なの?だとしたら女ってわからん……。


「私が何度やっても傷付けることすら出来なかったルシエルに、レオリスは傷をつける事が出来ましたし……森の時だって…」


 エイルーナはそう言って下を向いてしまった。


 俺にとってエイルーナはある種のコンプレックスだった。

 エイルーナの吸収力は凄まじく、子供の頃から共に教わってたから自然と比べて、そして劣る自分を見て落ち込んでいた。

 そもそも俺とエイルーナが戦えば、勝率10%もあればいい方なのだからその度に大なり小なり落胆する事はある…嘘、少しだけ慣れてきたが、この慣れはいけないのだと理解はしている。


 でもこのエイルーナの言葉を聞く限り、もしかしたらエイルーナにとっても俺はコンプレックスだったのかもしれない。

 身近な目標として定めていたルシエルに、自分は傷をつけた事はないが、俺はそれが出来てしまった。

 エイルーナだってルシエルが俺たちそれぞれに合わせて戦っていた事は理解しているだろうし、比べるべきじゃないと思うが……こんな事は絶対に言ってはいけない。うん!


「…………」


 しかし、こうなるとかける言葉が思い浮かばない。

 ごめんなって謝っても意味がないどころか、逆効果だろう。


「…レオリスはどう思いますか?ルシエルの話していた野生的な勘とか…」

「…あんまり良く理解出来なかったけど…でもそういう考え方もあるのかなってのは思ったりはしたかな?」


 思えば俺はレイスと共に、幼い頃に死にかけるような戦いに巻き込まれてる、ミシェイルは枠に入れるかどうか怪しいかもしれないが……。

 でも言われてみればレイスは何となく危険を察知している気もしなくもないが、それは種族柄五感の鋭さからなのかとか思っていたがどうなのだろう?

 って、これも下手すればエイルーナにとってのコンプレックスにもなりえるのか。


「…私もです、レオリスと自分を比べても私に足りないモノを貴方は持っている気がします…、魔法だって…」


 どんどんネガティブになってきているエイルーナに、俺はまともに声をかける事が出来ていない。

 真面目に困った…っていうかこの役目の人選をミスった気がする!突っ走ったの俺だけど……。


「ま、魔法はさ、魔導学園に行けば変わるんじゃないか?」

「……かも…知れませんが……」


 エイルーナの顔は浮かばれない。

 というかどんどん暗い顔をになっている気がする、今からでも人変わるか?ミシェイルはちょっとアレだからレイスくらいの方がいいんじゃないか?こんな繊細な話……。


 そんな俺の焦りとは裏腹に、不安そうな顔を上げて俺を見つめてくる。

 いつも強気の美少女が、弱々しい表情でこちらを見つめている。

 本来なら胸がドキドキーって過呼吸寸前までいきそうだが、何故かそんな感じはない。


「…ルシエルはああやって言っていますが、私はやっぱり目標は変わりません…強くなりたいです」

「…ああ」


 目標…それは間違いなくクリスだろう。

 エイルーナはクリスのような剣士になりたい、可能なら剣聖の肩書きだって欲しいのだと、そう言っていた。

 だが、ルシエルは今のままでは自分を超えることなんて出来ないと…そう言った。

 だが、それはあくまでルシエルがそう思うってだけで、それが間違いないなんて事じゃない。

 勿論本人もそう言っていたし俺も思っていた事だ、エイルーナも馬鹿じゃないから分かっている。

 でも…それでも現状無視できる事じゃないと思っているのだろう。


 少なくとも、俺がエイルーナなら無視出来ない。

 俺がエイルーナなどうする?

 ルシエルの言葉を忘れて、自分の信じた道をいく…それもまた一つの選択肢だろう。

 学園で魔法を学び、新たな道を切り開く、これは魔導士に憧れを持つ俺ならやりかねないが、エイルーナは選びそうにない選択肢だ。

 足りないのは実戦経験……もっと命をかけた戦いをして己の技を…精神を…そして肉体を鍛えていく事。

 …ああ、そうか……!



「私は学園へ行くのを辞めたいです…」


 俺の脳裏を過ぎった事と同じだった。

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