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七章4〜“静かな夕食”

 


 いつからか夕食の時は全員で本日の情報共有をする事が自然になっていた。

 街に居れば今日は何を聞いただの何を買ったから大事に使えなど。

 外に居ればあの魔物は次会ったら先手を取るだの、次の目的地にはどうだのと…大切な事からどうでもいい事まで報告し合う流れ、命を預け合う関係である仲間同士での情報共有の場なので悪い事は一切ない。


「全員分の衣料を調達しました、各自汚れが酷いものや破れてたり傷んでたりするのは処分して下さい」


 エイルーナは今日は買い出しに行っていた。

 薬に衣料品、武具の手入れ用品である。

 回復魔法が存在して、かつその使い手であるミシェイルがいるからといって薬は不必要というわけにはいかない。

 包帯や消毒用の薬草など、ある程度の事は出来るように一式取り揃えている。

 前世に比べて回復魔法は医療の発展を遅らせる要因であるのは間違いない。

 魔法は便利過ぎるのだが、それでも万能とはいかないので、最低限の応急処置が出来るように薬などは旅には必須である。

 もしミシェイルがマナが切れたり、何だりとアクシデントもある場合だってある。

 一応出発前にアルフリードに応急処置のやり方は全員習っているが、実践経験今の所ない。


 ちなみに肌着などの衣料品はグリンダムで調達し忘れた上に泥やら怪我やら激しい戦闘により、傷んだ物が多発したのである。

 てかあいつ全員のサイズとかわかるのか……いや、子供だし大きめ買ってればいいか。


「俺はね、リンドルム大陸行き、というかミュール王国行きの船は3日後の昼に出航予定だよ」


 レイスとミシェイルの担当は情報収集、主に船の日程など諸々の確認である。

 渡航料金なども調べてくれているらしい。

 俺たちは1人銀貨1枚、別に子供料金なんて優しい制度はない。


「つまり銀貨6枚で全員で渡れる」

「…そうですね、前情報通りの料金なので、お金に問題はありません」


 ミシェイルの確認するような言葉にエイルーナが答える。

 金銭的な事は全てエイルーナが仕切る、というよりは管理している。

 決定権の主は一応俺みたいだが、食事などの管理もあるのでエイルーナが管理している。

 まぁ、レイスにミシェイルと、お金を甘く見てそうなセレブに、世間知らずの俺とくればエイルーナが適任なのは満場一致の事柄である。


 しかし…6枚ではないのだ……。


「あー…えっと…」

「俺とメリエルはリンドルムには行かねぇ」


 俺が言い淀んでいる間にルシエルがそう口にした。

 その言葉に沈黙が走る。

 ルシエル、メリエル、そして俺にと視線が映るのがわかった。


「な、何故だ?」

「引き受けた仕事は終わった」


 ミシェイルのその問いにいつも通りの無表情て淡々と答える。


「…な、ならもう一度…」

「その仕事は引き受けない」


 尚も食い下がろうとするミシェイルを一蹴する。


「め、メリエ…」

「ミシェイル…もういい」


 縋るようにメリエルに対象を移そうとするミシェイルを俺は止めた。

 見ていて悲しく感じてきたのだ。


「…何故だ、せっかく仲良くなれたのに…」


 ミシェイルは俺の言葉に悲しそうな目で見ると、視線を床に落として呟くように言葉を口にする。


「…んー、残念だね…、ルシエル達にも俺の故郷を案内してあげたかったけどね」

「…悪いな、機会があればこっちから行くさ」


 空気が重いと感じたレイスは少しでも軽くしようとルシエルに声をかけ、それに答えるルシエル。

 いつも明るく笑顔のメリエルも今日何処か大人しい。


 グリンダムからここまで対して長い付き合いでは無いが、共に視線を潜り抜けてきて、助け合ってきたのだ…まぁ主に世話になっていたとも言えるが…。

 みんな各々思う所はそれなりにあるのだろう。


 いつもは賑やかなはずの食事は、やけに静かだった。


 レイスのお陰で最悪な空気であった気まずい沈黙からは抜け出すことが出来たが、それでも会話は減る。

 メリエルの好き嫌いに対する弄りや返し、王族にも関わらず行儀の悪いミシェイルに対するエイルーナの注意。

 エイルーナがルシエルに噛み付いて、それを流されるという一連の流れは野営の時から見飽きる程に見てきたその光景は、もうないのだと……もう無いわけじゃない。


「…そんなに暗くなるなよ、ルシエル達が死んだみたいじゃないか」


 俺のその言葉に、吹き出したのはメリエルだった。

 そして釣られてレイスが、ミシェイルが笑った。

 ルシエルは相変わらずのように見えたが、少しだけ笑っている気がする。

 付き合いがそんなに長いわけじゃない、でも長さが全てじゃないのだ。

 それ時間の密度であったり…極端な話人としての相性であったり……。

 ルシエルの表情も少し読めるようになってきたのだ、喜怒哀楽のわかりやすいメリエルとは違い、基本的には無表情でわかりにくいが、僅かな差で喜怒哀楽があるのが何となくわかる…説明しろと言われると難しいが…。


 しかし1人難しい顔をしていたエイルーナ。

 何か決心するように1人頷いた。

 エイルーナは俺達よりルシエルと接する時間も長かった。

 ついで言えばメリエルの相手はミシェイルがよくしていたが、ルシエルはエイルーナと良く話してたら何なりとしていた気がする。

 主に戦闘について教わっていたのだが……。


「…ルシエル、私と本気で戦って下さい」



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