六章20〜“努力の理由”
目を覚ますと大木を中心に、レイスを除く全員が眠っていた。
「…案外早いね?」
頭上から声がしたので見上げると、レイスが木の上に座っていた。
「1人か?」
「そうだねぇ、みんな疲れてるし」
俺は立ち上がってレイスの横に座るため、木をよじ登る。
「はい」
「ありがとう」
途中で手を差し出され、そしてその手を取って木の上に座る。
「体は大丈夫かい?」
「ああ、大丈夫だ、レイスは?」
俺の言葉に一瞬寂しそうな顔をした気がしたが、レイスはすぐにいつも通りの緊張感のないニヤかているような顔付きに戻る。
「いやいや、俺はみんなと違ってそんなに活躍してないからね!」
レイスはそう自虐的に言って笑っている。
「そんな事ないだろ…みんながみんな自分の出来ることをやって助け合ったからこうやって無事だったんだ!」
「…ありがとう、でもさ…俺も、もうちょっと目に見える戦果が欲しかったなって思ったりするんだよね!」
レイスなりに色々思うところがあるのだろう。
今回確かに暴走したとはいえ変異種はもちろんストーンタイガーの群れの殆どを倒したルシエル。
ストーンタイガーの群れを排除している間に、変異種を抑えていたメリエル。
この2人はやはり大きかったのかもしれないが、負傷者を治療して回ったミシェイルが居たからからこそ死者が出なかったと俺は思う。
少なくとも俺の足は……。
残りの俺やエイルーナ、そしてレイスは協力してストーンタイガーを減らした。
俺たち3人の戦果として評価されるというなら変わらないのではないだろうか?
レイスの機転のお陰で俺は助かった場面だってある。
てか思い返せば俺とルシエルが色々とやらかしてるような気もしなくもない。
まぁ俺もレイスの気持ちは多分わからなくもないしな。
「……もっと強くなりたいよな…」
「……前まではさ、強くなりたいとか特になくてさ、ただただ父上に怒られないようにするためだけに魔法学んでってしてたんだけど、最近になって思うんだよねぇ、もっと勉強しとけばよかったのかなって」
昔はやんちゃしてたんだけど、あの時勉強しとけばよかった……ってそんな話だな。
だがレイスよ、それにはまだまだ早すぎるだろう。
「前も話したけどさ、レオやルーナちゃんは俺の中ではやっぱ別の世界の人かって感じだったんだよね」
エイルーナは知らないが俺は別の世界の人ですね、はい!
「でもルシエル達を見たらさ、やっぱ無駄なんじゃないの?って思うわけだよねぇ」
「まぁ…全てがそうとは言わないし、俺たちの想像より遥かに努力してるんだろうけど……持って生まれた差だとかって妬む気持ちも出てくるよな」
俺とそこまで詳しいわけじゃないが、戦闘面に限れば俺たち人間より優れた種ではないかと思う。
素直な身体能力の高さ…とか……。
ただ戦闘以外だと、非常に肩身の狭い思いをしてきたのは間違いないだろう。
ルシエルやメリエルは高い身体能力なんかより、当たり前のような普通の生活が出来る方がいいなんて思っていれば……。
まぁそんなことはわかりきってるし無い物ねだりをするのは世界を飛び越えても変わらないのは間違いない。
恐らくヒトという種が進化するために必要なものなのだろう…うん…うん?
「まぁね、でもレオはさぁ、そんなルシエル達を見て努力とかバカらしいって思ったりしないの?」
「……妬む気持ちは出てくるけど…そんなことは言ったって急に俺が成長するわけでも、みんなが俺より弱くなるわけでもない…そんな風に不満を履くならコツコツと努力した方が意味がありそうかなって思うな」
自分で言いながら少し恥ずかしい……。
どんだけ俺は真面目なんだ?
「レオは凄いねぇ……」
「……そんなことないよ」
レイスは少し遠い目をしている。
森の中だが、小鳥や虫の声は聞こえない静かな森。
木々の隙間から僅かに射す月明かりが幻想的に森を染め上げる。
「やっぱさ、もっと頑張らないといけないよね」
俺もレイスもまだまだ子供…遅いなんてことは無いだろうが、何事も早いに越した事は無いだろう。
今までレイスは努力していないわけじゃなかったが、俺やエイルーナ、ミシェイルと比べてもやはり何処か必死さに欠けていた。
それは本人が努力する理由がわからなかったんだろう。
俺の予想でしか無いが、エイルーナは相変わらずクリスのようになりたいと思っているんだと思う、何より非常に負けず嫌いなので努力する理由は常に存在するんだと思う。
俺より強く、最近ならルシエルを追い越す、明確な目標がある。
ミシェイルは俺やエイルーナ、レイスに付いて行くために、必要とされたいという意思で頑張っているんじゃ無いだろうか?
エイルーナのように明確に強くなりたいというビジョンがあるわけじゃ無いが、なんとなくというほど不透明では無いのだろう。
レイスにもどんな些細なことでもいいから努力する理由、目標が出来ればいいんだと思う。
「…そうだな、俺もレイスに負けないようにしないと!」
「あー、現状自分の方が上みたいな言い方するねぇ!」
「事実じゃん!」
「なんか腹立つ〜!」
俺は俺でクリスの影を追っているかもしれない、けど、俺はこうやってみんなで笑いあえる場所を守れる力が欲しい。
その為に頑張っていこう。




