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異世界転生物語〜二度目の人生は剣士となる方向性  作者: 飛鳥
六章 グリンダム〜変異種編
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六章16〜“力の暴走”

 変異種の前足による薙ぎ払い、それを後方に飛び退くように回避した。

 たった一歩でわかった。

 その後ろに飛び退いた動き、速さは異常だった。


 さらに踏み込んで逆の前足を振り下ろしてくる変異種の攻撃を最小限の動きで回避すると、長剣を振り下ろされた前足に深く突き刺した。

 痛みの叫びが、威嚇かわからないが、咆哮をあげる変異種を気にせずにその前足に伝って身体を駆け上がっていく。


 前足には剣の根元まで深く突き刺さっているのがわかる、恐らく地面まで貫通させているのだろう。


 ルシエルの手からは氷の剣が現れた…というよりは魔法で作り出され、そしてその剣を突き刺してさらに駆け上がる。

 変異種は長剣が刺さったままの前足を持ち上げるように拘束を解くが、自分の身体を素早く駆け回るルシエルを捉えることが出来ていない。


「…凄い……」


 俺はその光景に目を奪われた。

 真似できるのか出来ないのか、どうやって動いているのか…そんな事ばかりが頭を巡る。


 変異種は地面を転がったり、激しく飛び回ってルシエルを振り下ろそうとするが、剣を突き刺してそれに掴まったり、素早く動いて跳ねて安全な位置に移動してまた氷の剣を突き刺し、そして作り出す。


 暴れても、魔法でも上手くルシエルを引き剥がす事が出来ない変異種は、徐々に疲弊しているのがわかる。

 突き刺したまま残しているからか、傷も塞がっていない。


 よく見れば氷の剣の形状が独特である。

 突き刺したら簡単には抜けないように刃に大きな凹凸がある…。

 戦いながら考え、そして生成したのだろうか?


 ルシエルは激しく暴れる変異種から飛び退くように離れ、同時に強いマナの波動と大量の古代文字が浮かび上がって光を放って魔法を発動させる。


「アイスボルト…」


 両手を広げると、光の玉が変異種を取り囲むように広がり、そして展開される。

 変異種の身体に突き刺さる氷の剣に向かってピンポイントで白い稲妻が走り、その剣を中心にその部位を瞬間的に凍結させている。

 よく見ればあの歪な凹凸の氷の剣は、変異種の動きを阻害する為に関節を狙って突き刺されているのがわかる。


 地面に着地したルシエルは、前足に刺さったままの己の長剣を引き抜く。

 あらゆる関節が凍結している変異種は、もがいているが動きを許されない。


 ルシエルは剣を持って歩み寄っていく。

 牙をむき出しにして威嚇する変異種だが、もちろんそんな事を気に留めない。

 剣を威嚇してくる変異種の頭に突き刺した。


「アイスフレイム…」


 微かに何か言ったのがわかったのと、魔法を使ったのだとマナの波動で理解出来た。

 しかしその魔法は見当たらない。

 だが変異種がみるみるうちに白く…凍てついていく……。


「やったのか?」


 全身が白く染まり、動かなくなった変異種。

 木の上から見下ろして自分で呟いた言葉に、もしかしてフラグかと一瞬頭を過るが、もう1人の気配があった。



 頭から血を流し、身体を押さてフラついた足取りで様子を見るために自力で戻ってきたエイルーナだった。


「よかった…」


 その姿に思わず安堵の息が漏れる。

 しかし今思えば、もしかしたら即死なんじゃ無いかと思えるぐらいの勢いで吹っ飛んでいたエイルーナ。

 木をなぎ倒してなお吹き飛ばされたにも関わらず、自力で歩いて戻ってきたのだ。


 確か魔装には肉体の強度や硬度を高めて防御力を高めることも出来たはずだ。

 そのおかげなのだろうか?

 何はともあれ無事ならいいか。


 俺が樹上にいるのに気付いたエイルーナはその下にいるルシエルと変異種に視線を移す。


「…流石ですね…」


 フラついた足取りで木に手をかけて体を支えながらルシエルに歩み寄るエイルーナ。

 しかしエイルーナは急に足を止めて、凍りついたような固まった。


 その表情には驚きと、何より恐怖が支配しているのがわかる。

 慌てて腰の剣に手をかける。


「エイルーナッ!」


 何かわからないが胸騒ぎがしたので樹上から飛び降り、急いで二人のもとに駆け寄っていく。


「ルシエル…ですか?」


 そんな言葉を発したエイルーナに…ルシエルの腕が伸びていく。

 エイルーナの首を掴む…というよりは物凄い力で締めているのがわかる。


「あぐっっ!…んぐっ…っっ…ルシっ…」


 咄嗟に魔装を発動して、手と首の間に片手の指を挟ませている。

 もう片手には既に抜かれた剣がある。

 エイルーナは苦しむ表情の中に、少し迷いが入り混じっていた。

 エイルーナは剣を地面に落として、その手でルシエルの腕を掴んで引き離そうとしている。


「ルシエルッ!」


 その様子からなんとなく…いや前世の記憶がある俺だからこそか…直感があった。

 ルシエルやメリエルは半分鬼である。

 鬼のツノが生えてからのルシエルは凄まじかった。

 必要最低限の動きで、素早く力強く変異種にダメージを与え、そして体力と再生に伴うマナを奪い、そして最後には凍結させて身動きを奪う。

 何故はじめからそれをしなかったのか?

 奥の手を取っておく為?その可能性はもしかしたらあるのかも知れない。

 鬼である事をできる限り知られたくないから?…その可能性はあるだろう。

 ナタリアに聞いた限りでも、やはり良い扱いは受けていないし、良いイメージは持たれていない。

 しばらく俺たちと一緒に行動する中でルシエルはそんな面倒な気をかけられたくないと思っているのだろう。


 でもそれだけじゃなかった。

 意図的にその力を封じてる…縛りプレイなんてわけじゃなく大きなリスクがあったのだ。


 こんな異世界…しかも魔族系のハーフのテンプレ…つまり扱えない力の暴走だ。


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