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〜prologue〜
〝黒鳥〟が尻餅をついた。
真っ白なステージの上で大胆に美しく舞っていたはずの彼女。ついコンマ数秒前まで会場にいた者全員を魅了していた彼女。
彼女の髪の色と同じように真っ黒なチュチュは、地べたの上で歪んでしまっていた。
永遠のようにも感じられたその瞬間は、しかし一瞬だった。誰かが瞬きをし、目を開けた次の瞬間にはすでに〝黒鳥〟は立ち上がり、踊りを再開していたのだった。
……今にして思う。舞台裏で〝黒鳥〟が無様に転んだのを目にして、私は何を思っていたのだろう。〝黒鳥〟の失敗を喜んでいたのか、あるいは憐れんでいたか。もはや私にはわからない。
ただ、その時に彼女ではなく私を見ていた人が言うには-------。