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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
級外品の冒険者__闇の糸口

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第98話 荒稼ぎ

 魔法おやじから明かされた街を脅かす事象の存在。

 それは口で伝えられただけだし、まだ成長中らしく、こうとはっきりとは形になってないらしいこともありピンとこなかった。

 だから会議で他の奴らが見せたほどの不安を、俺はいまいち理解してない。


 だけど、それを目の前の魔法使いクロムが裏付けるようなことを言った。

 まだ目に見えはせずとも、すでに環境に影響をし始めているというようなことをだ。

 そこで初めて不安を感じた魔法、闇玉の手応えが手のひらに甦る。

 あの時は必死だったが、結構気合いを入れて叩き落したよな。

 あんなもんじゃないってことか……。


 それで俺もようやく危機感に目覚めたように、黒い霧を見回していた。

 異常な場というのが俺には何か感じ取れないから余計に。

 ただでさえ俺にはどこも異常だってのに。手加減しろや。


 この街に来てから普通の住人として生活してきた。その中で少しずつ記憶に降り積もっていたことから、皆の言う危険とやらにも想像が至るようになったんだと思う。

 なんとなくだけどな。


「だから、わたしが新たな魔法だと思いたかったっていう理由は、そこにあるっていうか」


 そう言えば、なんで拘ってたのかと聞いたんだった。

 その答えが意図せぬ外からの影響だったというのも、別におかしくはない気もするが。

 クロムはひどく言いづらそうに目を泳がせながら続ける。


「その、説明のつかない余分な力を、自分の力だろって片付けちゃってたってこと、かなぁ? って……」

「大雑把な理由だった!」

「だって、そんな異変なんて思いもよらなかったし!」


 クロムは顔を赤くして言い繕っている。

 からかいたくなったが止めておこう。俺はその辺の知識はまったくないんだし。


「まあ、そのために対策すんだろ。それに今回は勘違いだったとはいえ、クロムの魔法研究が役に立つみたいだし。結果的に良かったんじゃないの」

「そ、そうよね! わたしが参加するんだし街の平和は守られたようなものよ!」

「はいはいがんばってね」

「なによ、他人事みたいに」

「俺にもやることがあんだよ」


 こんなことしてる場合じゃなかった。

 思ったより時間食ったよな。


 あーあ、あわよくば新たな獲物を覗き見したかったがしょうがねぇ。

 あんま遠出もできないから、奥部に差し掛かる辺りで引き返すか?

 予定通りではあるけど、毒きのこ狩りだけだな。


「それじゃ、俺は仕事あるんでこれで」

「え? あ、そうね。参考になったわ、ありがとう」


 虚を突かれるとやけに素直だよな。

 なんに一々驚いてるのかは分からんが。

 会話のテンポが合わない相手っているし、そういうのだ多分。


 そんなわけで俺はクロムに背を向け、改めて空間がもっちゃりしていく奥地へと向かうのだった。






「とにかくね! この近辺だから安定して使えるということならと、それを前提に調べてたの。あ、これは副団長と相談もしてきたんだから、逃げてないからね? 準備のためもあって。それから」

「ぁー、ぅん……」


 訊いてないから。

 なぜか隣に浮いてついてくるクロムが喋りたおすのに適当に相槌を打ちながら、前を進む半モヒの後に続く。

 半モヒ……お前は、いつの間に帰ってきてんだよとか絶対突っ込まねぇから。


「お、アニキ―」

「すでに見切ったあああああーーーーーーー!!!」

「え、え? ちょっ、なんなの。なんですっ飛んで、えっなんで? 発砲茸に刺さってるのよ!?」


 黒川辺りと比べて一段と空気がまとわりつくようで重かった気分は、獲物を捉えた途端に晴れ渡っていた。

 俺の視界には獲物である毒きのこだけ。

 半モヒに声を掛けられた時には知覚済みで、地面を蹴りターゲットに飛び込んでいた。


 しかし毒きのこの胴体を突き破った穴から見えたのは、さらなる毒きのこだ。

 毒きのこ、一体じゃなかった!

 俺の知覚能力穴だらけ!

 だがラッキー。


「っしゃあ! まずは一匹ぃ!! 半モヒ、まだ何匹か居るぞ!」

「ヘッ、アニキの溢れる闘争心は誰にも止められねぇんだよぉ! オレも負けねぇうおおおお!!」

「なんなのよあんたたちはぁ!!」


 ふっ、伸ばしたままの右手の平には、すでに闇団子を生成済みだ。

 しかし俺は毒きのこに嵌った直後。

 グズグズに毒きのこの体は崩れ落ちていくのだが、今すぐ敵が跳ねるか胞子攻撃を放たれれば避けられない。


 焦りかけたところで右足の爪先が地面に触れる。


「うぉ、りゃああああ!!!」


 上半身を捩って毒きのこの崩壊を早め、再び地面を蹴るのと同時に突き出した手に闇をこねる。

 いつもはそのまま硬度を増す気分で手に集めるようにしているが、ふとクロムに実演したことが頭を過っていた。


「のび~る闇のお餅ッッッ!!!」


 俺の声と共に頭サイズに膨れ上がった鏡餅が――発射された。



「は?」



 軽いネーミングを裏切る豪速。

 俺の体が到達する前に、毒きのこ前線は爆散!


 飛んだ幾つかは木にぶつかって落ちつつも、裂けて繊維を振りまき粒になって地面へと散っていった。


 俺もべちゃっと前のめりに倒れる。毎度のことだ。もう慣れたもんだぜ。

 飛び起きてすかさずボディソニック!

 胞子を弾く技を土を払うのにも応用できるんだぜ。黒森の土だからだけどな。

 ほんと微妙な能力だよ。


「うおおおお! 新たなアニキの技かッ!! オレもッ閃いたああああ!!!」


 倒れた俺の脇をごうっと音を立てて半モヒが飛んで行き、やはり毒きのこが弾けとんだ。

 俺の新たな技、闇餅にも負けない威力だ。

 というか、閃いたもなにもそのまま再現って感じ。生身でってのがおかしいけどな。


 そして辺りが静かになると、散らばった毒きのこを見回して高揚は消える。

 俺たちは真顔になり無言でしゃがみ込むのだった。


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