表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活__四級品冒険者ライフ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/119

第73話 裏門での報

 黒森を出た俺たちは、木の実を抱えて裏門へ戻ってきた。


「街に戻るまでに、粒が取れて良かったな」

「まぁそうなんスけどぉ? 自力で取ったっつぅより、ついでに取れちゃった? って感じじゃないスか。これじゃ闇耐性を制御できたとはとても言えやせんしぃ」

「この短時間に、そんだけできりゃ十分だろ」


 半モヒは結局、森を出るまでぶわぶわ技能を使い続けていた。

 粒々から出ていた闇のもやもや感が、半モヒから消えたように俺にも見えるから、全部落ちたんだと思う。多分。


「こんなに疲れるたぁ思いやせんでしたぜ……まだまだアニキの力量を図ることさえできねえとは。どれほどの鍛錬を続けてきたのか、想像もつかねぇ……」


 初めて半モヒが疲労困憊の姿を見せていた。

 げっそりしてトサカまで萎びている。生態おかしいから。

 魔法を使うってのは、俺が考えるよりも、よっぽど体に負担がかかるのかもしんねえな。


「どうせ節穴なんだから気にすんな。結果がよければいいだろ」

「そっそこまでっスかー!?」

「講義は後な。ほら戻るぞって」


 いつものように勝手に裏門を開いて中へ入る。もちろん門を開けるのは、八個も木の実を担いでいる半モヒだ。

 疲れていようとも俺よりは遥かに余力がある。


 入って門を閉める。閂のフックもついるが板は通さない。

 ほんと外からも勝手に入れるって、ガバガバ防衛で守る気あんのかと思う。

 でもまあ、外の状況を見れば、これくらいで十分かって思うのも頷けるけどな。


 周囲の魔物には、扉を開けて入る知能が見られないというのもありそうだ。

 ぶち破れるほどの力を持つ魔物が存在するとしても、街には近付けないための外壁の結界効果だろうとは思うけど……。


 身近な危険なら人間だろうけど、裏門で人の出入りなんか見たことない。

 他の街との行き来は表門側で警戒してりゃ間に合いそうだ。


 それでも念のため、こっちにも一応は門番を置いてるんだろうしな……って、いねぇ!?

 常に小屋の側に立っているはずの門番が見当たらない。


 とうとう見張りに置く人員すら削減に踏み切ったのか?

 なんとなく不意に無人改札の駅で降り立ったような寒々しい感覚が沸き起こる。


 杞憂だったんですけどね。

 門を閉めて道を進むと、掘っ立て小屋詰所脇に門番はいた。


「あれ、人が多い?」


 珍しいことに人影は二つ。

 一人はいつもの門番タツィオさんで、もう一人も同じ格好だから門番仲間かな?


「交代にしちゃ妙な時間っスね」


 言われてみれば、ただの交代にしては話し込んでいる様子。

 その上に、二人の体勢が変なような。

 やる気なく立つタツィオさんの横から、びしっと直立した兵が話しかけている。


「なんか上官に報告してるみたい」

「あーそうかもっス」


 半モヒの言葉に思考が停止。


「いつでも欠伸のタツィオさんだぞ?」


 俺が顔を背けて声を潜めると、半モヒも合わせて声を小さくする。


「まあ組織ん中でも下っ端の役目、なんつったら怒られそうっスけど、外壁警護隊の隊長っスよ?」


 対地用門番ってダジャレとか? ……ではなく、本当に隊長、さん? 


「マジかよ……あ、でも朝も帰りもずっとここにいるだろ。その上、夜勤? またまたぁ隊長ともあろうお方が、そんな社畜みたいな扱き使われ方するわけ……」

「誰が畜生だって? 人が足りんのだ」

「きゃー!」

「うぉー!」


 振り返れば奴がいた。

 近いって!


「う、うわあ、びっくりしたなあもうアクビさん!」

「タツィオだ!!」

「すんませんつい! 悪気はないでっす! それよりも何か深刻な問題でもあったのかなあと好奇心が沸き立ちまして!」

「あー、まあ、深刻かもな」


 冷や汗かきながらも正直に言ってみたら、あっさりと白状された。

 

「例の件の調査隊が戻ってきたんだとよ」


 なんのことだ?


「闇魔法の攻撃事件か」


 首を傾げた俺の横で半モヒがタツィオさんに確認すると、そうだと頷かれる。

 おお、すっかり忘れてた!

 俄然、興味が湧いてきたぜ!


「じゃあじゃあ誰の仕業かだとか分かったとかとか!?」


 俺の食いつきにタツィオさんが引き気味に見えるのは気のせいだろう。


「離れろ。ぬか喜びさせて悪いが、どうも判然としない答えでな……まあ、後はこっちの仕事だ」

「えー機密扱いなんすかぁ?」

「そういうわけではない。お前ら冒険者にも手を貸りたからな、なにも俺だって隠し立てする気はないが、現状は戻ったとの報告を受けただけだ。兵士の俺が、はっきりしないもんを口外することはできん」


 ただ戻っただけの報告にしては、話が長かったり真面目な雰囲気だったろ。

 まあ確かに、公的機関が憶測を吹聴できねぇと言われればそれまでだ。

 ここは大人しく引き下がることにした。


「はっきりしたら教えてくださいよ!」

「どのみちギルドにも通達されるから、折を見て職員に聞くんだな」


 呆れたような顔付きのタツィオさん一人に手を振って、ギルドへ続く路地へと入り込んだ。

 一人に……あれ? 報告に来てた人、いなくなってる。交代なしかよ。

 マジで尊敬した方がよくない?


 たとえ冒険者ギルドを追い出されたとしても、兵にだけは志願しないでおこうと胸に刻んだ俺だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ