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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活__四級品冒険者ライフ

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第60話 草むしり

 嫌な目覚ましでだるい頭も、冷たい水で顔を洗うとすっきりだ。

 顔を拭いて目を開けると、ふと土管の向こうにある洗い場の板床が目に入る。

 その周囲は草が囲んでいて、それが衝立代わりでもあるのだが、ちょっと中まで伸びていた。

 そういえば行水中に、倒れかけた草が足に当たったりして邪魔だったな。


 気になったんで片づけることにした。

 玄関から竹ぼうきを持ってくると、まずは土管回りの枯草や葉屑をざっと掻き集めて、根元を見えやすくする。

 背後からバタバタとした音が近付いてきた。


「あぁっ! なにしてんのかと思ったら、またアニキは勝手に気を利かして! そりゃオレの仕事っスぅ! つか気が付かずさーせん!」

「このくらいさせろや。草を引っこ抜くなど我が右手にかかれば楽勝だぜ!」


 と思ったら、掴んだところから千切れてしまい無言になる。

 仕方なく地面から素手スコップで掘り返した。

 膝の高さほど伸びてる草むらは残しておかないとな。

 こっちも便所みたく目隠し用に柵とか作ってないのは理由があるのか?


「じゃオレゃゴミを集めやス」


 半モヒは朝食を作っていたようで、きのこエプロンのまま俺が集めたゴミを塵取りに集めている。


「こんくらいなら燃えるっしょ」


 そんなことを言いつつ半モヒは、少し離れたところにある焼却壺に向かう。

 膝の高さほどある程度の土器のような壺だ。

 何度か見かけたが全部それで処理してるらしい。


 包装紙といったもんがないからか驚くほどゴミが少ない。

 だから回収業者なんか存在しないらしい。

 実際に、この家で出るもんといったら野菜の皮くらいのものだった。


 その開けた場所にある、壺に葉っぱを放り込んだ半モヒが、丸石を二つ取り出し、壺の中で打ち鳴らすと同時に飛びのく。


 ファイヤー!


 炎が半モヒの背ほどもボッと燃え上がったのは一瞬で、壺の口すれすれまで引っ込む。一際赤く輝くとスーッと消えていった。


「ふーっ! よしゃおしまいっス」


 すげー火力だ。


「アニキ、草むしりもそんなもんでいっスよ?」

「いや、草むしってるだけじゃないんだよ。なあ、こっちに柵、作っちゃだめか」

「え、いっスけど」

「いいんかい。なんで今まで放置?」

「面倒でー」

「自作かよ」

「あ、今は木材がねっス。買いにいかねぇと」


 周囲には杭に手ごろな太さの木々も生えているが。


「そこらの伐ったら怒られるのか?」

「構わねっスが、乾燥させねぇと歪みやすぜ」

「あー。それに水回りだし、なにか加工しねぇと腐りそうだな」


 臨時でもいいけど、都度作り直すのも間隔が短いと余計に面倒くさいか?


「材木屋で買って魔法屋に持ち込みゃ、すぐっス」

「高いんじゃねーの」

「そこはお任せを!」

「普通のお宅はそんな加工しないだろ?」

「まぁ、そっスね……じゃあ材木屋で水飴でも頼みやスか」

「あるんじゃん。みずあめ……待った。樹液つーか松脂だっけ? そういうやつじゃないの?」

「いや樹液なのはその通りっスが。水飴ってのは樹液を煮詰めたりだとかなんかして、飴みたいにねっちょりしたもんっス」

「嫌な言い方だが分かった」

「さらになんやかや混ぜるらしっスね。そいつを塗ったくりゃ艶が出るし水気も弾きやス。たまに塗りなおしを頼まにゃならねっスけど、年一くらいだったかな?」

「それは、魔法具ほど高くはないと」

「主な売りもんが木材っスし、おまけの加工なんて安いもんス」

「前に配達手伝ったおっちゃんとこだよな?」

「そっスそっス」


 半モヒの安いは信用しないが、ちょろっと覗いてみるか。

 帰りに寄ろうと話すと手を洗って朝飯を食い、新たなウェストバッグに弁当と水袋を詰めて家を出た。


 森の中を街へ向けて歩きながら、枝葉から覗く青空を見上げる。

 今日の予定について考えていた。

 昨晩、半モヒと話して、とりあえず黒森に行くとは決めた。

 それは変えないけど、他になにかできないかと考えたが、碌な知識もないから浮かばない。

 昨日の依頼では、なんとなく不満な感じが残っている。

 それについて考えてみた。


 まるで苦行のごとき星屑浚い。

 そんな難易度高い依頼をやり遂げたというのに消化不良感があった。

 何故か考えてみたら、想定していた幽羅討伐がなかったせいだと思う。

 そこを愚痴ってもいたしな。


「というわけで? 本日は討伐重視で四級品範囲を探索しちゃおう企画ー」

「えっ!? うおおおおおおぉ!」


 俺の気合いの入らない声で告げられた予定に、半モヒは拳を振り上げて吠えた。

 半モヒにとっちゃ鼻ホジで散歩できるような場所だろうに、討伐だとか腕が絡みそうなことならなんでも、あからさまに嬉しそうな様子を見せるよな。


 職業的なもんなら、俺も気が付いたらこんな風になってたら嫌だな。

 まあとにかく、何かちょっとでも日々新しい試みをするのはいいことだ。




 裏門につくと、やる気のない門番は相変わらず欠伸している。


「うーっス」

「ちわーっす」


 挨拶しつつ通り過ぎる、ここ数日で馴染みつつある行動をとり半モヒが裏門に手をかけた。

 が、今朝はちょっと違い声をかけられた。


「ヤロゥ、また木の実か? たまには二等級の魔物も片づけてこいよ。知らず腕は鈍るもんだからな」


 うーっス。

 とか言ってまた通り過ぎると思ったが、扉にかけた半モヒの手がぴくりと反応して止まる。

 バッサとトサカを揺らして勢いよく振り返った。

 こえーから。すぐ後ろにいるのはハリボテの力しかない俺なんですよ?

 意に介さず半モヒは俺の頭越しに門番を睨んだ。


「おいタツィオ、オレが怠けてっと思ってんなら、とんだ欠伸野郎だ」

「……なんだと?」


 タツィオさんという名前らしい。

 半モヒの言ってる意味はよく分からないというか、挑発なんだろうか。

 タツィオさんは顔を険しくさせたが、欠伸野郎って、ただの事実じゃね?


 いやいや、なに挑発してんの?

 こんなところで絡まれイベントかよ。今さら!


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