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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活__四級品冒険者ライフ

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第52話 耐性なにそれおいしいの

 おかしい。


 黒森から抜け出した俺は街の外壁が見える辺りで一瞬、眩しさに目を眇める。

 これは毎回のことだ。

 前と同じ具合で、特に酷くなった感じはない。


 だからこそ、思わず漏れた感想だった。

 もしかしたら急に暗所から出ると、視界が白くなって目が潰れるような思いをするかと心配だったんだが……杞憂だったみたいだな。


 意気揚々と森の中に入った来がけのことを思い返した。

 それまで慎重すぎるくらいに足元ばかり見ていたせいで牛歩だった。

 そのせいで上空への警戒も追っつかないし闇耐性あっからと、普通に歩くのを心がけてみたのだ。


「おおお、見える、みえるぞ……!」


 などといった劇的な感覚変化などは確かになかった。

 意外と普通に歩けたことで、やっぱ気持ち的に大げさな反応をしていただけなのかもと思った。

 それで、すっかり木の実採りや敵との攻防に夢中になってしまっていたのだ。


 耐性があると知ったから、前よりも物の輪郭がはっきりしたような気がしないでもないと気が付ける程度。

 足元の根に躓かないようになったから、気のせいではないだろうってくらいのもんだ。

 とても夜目が利くほどとは思えない。


 なんでだ?

 やっぱおかしいだろ。


「こんなもんなのか?」

「おおっ、ただの採取と魔物を叩き落しただけの間に如何様な鍛錬を積んでいたというのか!」

「耐性の効きっつーか、はっきりと分からないもんなのか? どうも闇耐性が働いてる気がしなかったんだけど……」


 言いかけて声が小さくなった。

 ここまで率直に自分の状態を話したことはなかったよな?

 無知具合をどれだけ晒していいものか悩みつつも徐々に気にしなくなっていたが、それでも無意識に取り繕っていた感はある。


 思い切って魔法具屋で語ったことで、吹っ切れたのかもな。

 なんか半モヒの態度にも特に変化はなかったし、魔法おやじからも召喚術はないかと聞いたこと以外で特に怪しまれた感じはなかった。

 ……半モヒはもう少し疑った方がいいんじゃないかと、そろそろ逆に心配になってきたくらいだ。


 こんな一般常識が欠如してると思われる人間がいて、ここまで怪しまれないというのも変な気がする。

 山で修行することが脅威なことで、そこで暮らせるほどのいかな変人だろうと、元は街で暮らしていたはずだろ?

 聞いた限りでは、とんだポストアポカリプスな世界だしな。

 人と関わらずに生きていけるとは思えない。


 生まれた時から山で修行生活している人間がいたとしても、そこは半モヒが言ってたように師匠というか保護者はいるはずだ。

 言葉を覚える内に、人の生活圏についての話は自然に出るだろう。


 ただ……あんなうるさい時報妖精を知らなくてもおかしくない環境ってのが気にかかる。


 どうせ俺の常識なんか通じないんだから、これ以上は考えても無駄かな。

 また半モヒが聞いてもない黒森合宿の話とか語ってるから、そろそろ現実に戻ろう。

 喋らせておくと楽だからって放置しておくと、俺の評価が無駄にうなぎ登りで危険地域に連行されそうで怖い。


「カーッ! 振り切れた耐性を身につけてさえ驕らぬ態度! オレなどは黒森を出る時にゃ、あまりにも視界がはっきりしたことに浮かれていい気になっちまったもんスよ!」

「え、視界がはっきりするのか……」


 くっ、たまにこういった情報が入るから下手に止められないんだよ……。

 でもそっかー、やっぱ結構違いが分かるもんなのかー。


「半モヒは、あの属性検査だっけ、やったことある?」

「そりゃもう! どんな魔法が使えるかって期待に胸を膨らませたときもありやしたから……」


 しまった魔法関係は全部地雷かよ。


「ま、適性がなかったおかげでアニキの弟子になれたと考えりゃ幸運だぁ! 実際、この短期間で技量の上がり方が半端ねぇっスから!」

「そ、そう」


 あまり期待されると胸が痛くなってくる。

 いや一応、勘違いとはいえ助言になってるなら気に病むこともないか?

 その内……もう少しマシな生活送れるようになったら恩は返すから、もうちっとだけ待ってくれな!


「っで、オレの耐性っスが元は三属性とも平均的なもんっした。鍛えた後は闇耐性は倍になりやしたぜ!」

「倍? 計り方が分からないんだけど」

「あの属性瓶の中ほどまで満ちない位が一般的っスね。オレは瓶の八分目くらいにゃなりやした」


 瓶は首が短い三角フラスコや丸底フラスコに近いものだった。

 その八分目って、首がすぼまる辺りか?


「それ、十分に高水準なんじゃね?」

「げへ、実はそうなんスよ。闇耐性持ちの冒険者といやぁオレってな地位はアニキに譲りやしたが、荒野の踏破だろうが喰らいついて付いていきやスぜ!」

「いかねーけど。え、八分目で冒険者の中で一番? まさか全部が高水準っていう毒姉を超えてんの?」

「あぁその、コドックさんは引退してやすし……いや、それでもオレがギリギリ勝ってる、かも?」


 なるほど。現役の中なら一番だったといえそうだ。

 もし半モヒが魔法を使えるとしたら、闇魔法が得意になるんだろうな。

 確か、耐性が高いことも、それが向いてるということなら無縁じゃないよな?


 あの魔法検査結果が魔法の強さにも関係してるなら、半モヒラインはどのくらいなんだ?


 俺が見た中でメーター振り切ってる闇魔法は、事件の闇玉くらい。

 けど、あれは特別異常っぽいからなぁ。

 他に知ってるといえば……盾男の光魔法は結構強そうだったな。


「ニバンさんだっけ、あの人の結果がどのくらいか知ってるか」


 半モヒは見るからに嫌そうな顔をした。

 あ、これもまずい質問だったか。苦手そうだったもんな。


「その通りっス。光魔法ならあいつの名が上がりやス。検査結果も光だけ八分目行くかどうかってところっだったらしっスよ」


 この言い方は八分目行ってたんだな。


「八分目であのくらいの魔法なのか……」


 しかも一番になれるくらいと。

 確かに光の盾は、あの場に居た魔法使いの中では大がかりなものだった。

 まあ他の奴らは光の力を集めるのに集中してたんだけど。

 ふーん。

 そういえば、この世界の一般的な魔法がどんなもんか知りたかったんだよな。

 これで思ったより正確な情報が得られたとは思う。

 ……俺が使える当ては外れたので、今となってはだから何って気分だけどな。


 俺も魔法使いが妬ましい半モヒ陣営となってしまったわけだが、そこまで羨ましさも感じなくなってる。

 期待してたような派手さがなかったこともあるけど、思ったほど融通が利かないからかな。


「あぁ! 遅ればせながらアニキの言いたい事は伝わりやした。この程度じゃ弱え、もっと極上の獲物をよこせと! どんどん黒森の奥地を目指すしかねぇなぁ!」


 だから物騒な方に思考を飛ばすなよ!


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