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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活__四級品冒険者ライフ

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第51話 帰り道探しの第一歩

 現在、俺の持つ最大の謎。

 強化ツッコミパワーを持つ右手。

 おまけに、なぜか全身も半端に強化されちゃってる理由。

 その解明に近付くための鍵となる情報を入手した。



 それは、闇属性魔法!



 残念ながら、この世界では至る所にある当たり前の存在に過ぎない。

 だが周囲の全てが原因かもと手探り状態だった時よりも大分狭まったのは事実。


 ほんの数日前に冒険者ギルドに転移してきたばかりで、さっそく手がかりを得られたんだ。

 これなら帰る手段を見つけられそうで、期待が高まるってもんだ。

 取っ掛かりとしては十分だろ!




 感動を噛みしめていると、ここ数日間のことが思い出された。

 生活が不安定な今は、思い立ったからと動き回ることは難しい。

 今は半モヒのツテでそこそこ楽に行動出来てるだけだ。

 半モヒの半ヒモ状態とかシャレにもならねぇ。


 ずっとこのままでいいわけない。

 今は大人しく甘えさせてもらってるけど、半モヒが俺に合わせて依頼ランクを落としてる状態が続けば蓄えは減るだろうし。

 いつまでも俺がランクアップしなければ、さすがにハリボテの力を怪しまれるだろう。

 追い出される前に、少しは力をつけねぇとな。


 この街で、ある程度探って情報が得られなければ都に出ようとも考えている。

 何をするにも金がいると言った毒姉の言葉が甦った。


 そうなると、せめて俺も三級品冒険者へのランクアップが急務なんだが。

 数日間、冒険屋として過ごしてみたことから導き出せる未来は、先は長そうだなぁというものだ。


 俺は運動神経こそ悪くないと思うが、せいぜい体育の時間に発揮するくらいだった。

 武術だとかは習うどころか齧ったこともなく、いきなり魔物と格闘しての生活なんて勝手が違いすぎるのだ。


 当然、そんなうまいこと稼げるわけでもなくてさ……正直ちょっとだけしょげかけてた。

 行動開始するにしろ、いつになるか分からないと思ってたからな。



 だから、一歩進めたことで気持ちが軽くなったのさ。

 これからも、きっと何か手がかりは掴めるだろって感じられると、やったるわとやる気が湧いてくる。




「話、長くなっちまったな。そろそろ出ないとまずい。おやじも仕事の邪魔してごめんな!」

「いや久方ぶりに心が躍った。気をつけてな」

「またっスー」


 来た時とは違ってほくほく気分で店を出る俺と半モヒ。


「よっしゃ、木の実拾いでも行くとするか!」

「っすがアニキ! 魔法団にまで顔を売る手際も鮮やかだったっス!」


 売り込みなんかしてないけど嫌でも覚えられただろうね。

 珍しい高耐性持ちと良い印象だけでなく、掴みかかったこともあるしな!

 それにしても闇耐性が高いってのはありがたい。


「これで黒森もらくしょー」

「へっへっへ、オレも気合い入れて追いかけやすぜ」


 色々知れたことや、自分だけの灯り石を手に入れたのが嬉しいだけではない。

 袋小路のような道に出ると、奥まった店の入り口を振り返った。

 俺の心の中で胡散臭い魔法具店が、隠れ家的な憩いの場所にランクアップだ。


「いい話が聞けたな」

「まったく驚きやしたぜ! なによりアニキの力の一端を知れてラッキー!」


 なぜか半モヒもうきうきしてると思ったら、そこかい。

 ここぞとばかりに半モヒは食いついてくる。


「で! で! 耐性での攻撃っスが、そのカラクリはどういったもんなんスか!」

「いや耐性で殴るとか意味わかんねーし」

「自ら学べと! やっぱ甘かねぇなぁ! そっスよねぇ!」


 相変わらずウルトラポジティブ思考で羨ましいぜ。

 俺も少しは見習った方がいいかもな。

 そう思うのも、今は晴れやかな気分だからか。

 この勢いに乗じて手がかりである闇魔法に関して、どう調べていくか前向きに考える。



 そうだ、次なる俺の一手は――――特にない!



「稼ぐぜ稼ぐぜー!」

「稼いで鍛えるっスー!」


 先立つもんがないからにはどうしょうもないってことですよ。

 世知辛いなぁ。






 黒森へ分け入り、全身で他者を拒絶するフォルムを射程内に捉える。

 無理やり枝から垂れ下がる、無駄に鋭く太い棘を持つトゲトゲ木の実だ。


 だが俺はもう勇んで襲い掛かりはしない。

 彼奴の手前で足を止め、すっと右手を頭上に掲げると意識を研ぎ澄ます。

 俺たちを待ち構えていたように、タッタッと軽快な音が近づいてくる。


「来たな」


 木々を蹴りながら距離をつめてきたそれは、頭上の黒い靄を破って姿を現す。


 ――クワッキャー!


「絶技――有り体に言ってただの鷲掴み!」


 ――クキュウ……。


 頭から真っ正直に俺の右手の平に突っ込んだ愚かな敵。

 空中で霧散するように死んだクワガタリスから、もさりと外皮が舞う。

 それと共に落ち行く魂の欠片を、地に付く前に掴んだ。


 欠片はポケットへつっこみ、偽毛皮は肩を覆うように首に巻いて準備完了。


「瞬殺か……っすが、アニキ。適応力半端ねぇ!」


 そう煽てる半モヒは、すでに毛皮を首に巻いているんだが。

 ちょっと居たたまれなくなって軽く咳払いすると、木の実をもいだ。

 ドングリ型の側面にある棘を残して、他は手刀で切り落とす。

 残った棘の先だけ折ると、そこに革紐を絡めながら木の実二つを縛った。


 俺が毛皮を首に巻いたのは、別に半モヒの悪者ファッションに感化されたわけではないし、持ち帰りやすいからでもない。

 ちょっとチクチクするが、これを巻いて木の実を背負えば、歩く時にがすがすと背中に当たる衝撃が和らぐのを発見したのだ!


 小さなことだが、ささやかな日々の工夫は暮らしを豊かに変える大事なことだ。

 仕事を楽にというより、気持ちが楽になるだけだけどな。


「アニキに気合いが入りゃ、一度の採取で依頼達成も楽なもんだぁ!」

「……そうだね」


 来た道を戻りながら半モヒが吠える。

 俺が微妙な気持ちで返事をしたのは、昨日と同じく二個を背負っているだけだからだ。


 半モヒは四個を背負い、二個ずつを両肩に担いでいる。

 木の実拾いノルマ十個達成は、半モヒが八個を持つことで達成しただけだ。

 なのに俺を持ち上げた理由。


「アニキに気遣いなど余計なことっした! 戦うのに片手を空ける必要もねぇ。オレは大人しく荷物持たせていただきやス!」


 ということで、俺は胡乱な目で「うん」と答えるしかなかった。


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