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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活

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第49話 魔法おやじに相談する

 フラスコの一つに満ちた黒いもやもやは、俺にも魔法耐性がある証だ。

 予想はしてたが、改めて実感が湧いてきて大興奮!


「なあこれ、これが闇属性だよな?」


 けど肝心のローブおやじは、ああと気が抜けたように返事するだけだ。


「聞いてる? 結果教えてくれよー」


 そこまで驚くことなのか?

 そういえば半モヒも静かだな。


 隣を見れば、こちらは死んだようにだらりと口を開いて、遠くを見て揺れている半モヒゾンビが。

 無表情に睨むと、シャキッと背を伸ばした。


 改めてローブおやじに問い詰めようと声をかける前に、たった今こちらの存在に気が付いたように顔を向けられ説明が始まった。


「なんとあんたは、闇、光、露の三耐性を身に着けている。しかもかなり高い水準でな。それだけでも珍しいことだが、ほぼ、と言ったのは、高水準なだけならばそれなりに存在するからだ。光と露に関しては、そういった者らと変わりない」


 ローブおやじは一つ息を継いで続ける。


「だが、闇耐性が突出しておる。しかも瓶の口まで溢れるこれ以上は計れない状態……我らの規定では、最大値を指しているということだよ」

「計れないだけで、もっと高いかもしれないってことか」


 ローブおやじは目が眩んだように手を頭にやり、遠い目をして弱々しく頷いた。


「人生でそう何度も会えるもんではない。長い事この街に居るが、見たのは一度。かつて露属性魔法を思うままに操り名を馳せた一級品冒険者、一流の露魔法使いで『毒魔女』と畏怖された者のみ」

「へぇ毒は露属性なん、だ……毒魔女!?」

「うむ、君らも恐ろしさの片鱗を見ておろう」


 やっぱ人外中の人外だったよ毒姉!


「しかし、これはどうだ。突き抜けた闇属性を持つ者は初めて見た。いやはや、再びこのようなものを見れるとはなぁ……」


 驚きのあまりか、溜息交じりのしわがれた声で真面目に語られると、えらいすごい神のお告げでも聞かされてる気がしてくる。

 あのぉ、太鼓持ち役、半モヒと変わりません?


「そりゃないぜえぇ!」


 ドキッ。

 お供を入れ替えようと思ったのが読まれたのか!?


「全く耐性など持たねぇフリして……いやそうか、そうだった。アニキは常に示してくれてた。小手先に頼るなってよぉ……」


 あぁ、またなにか壮絶な勘違いとポジティブ思考が炸裂してんな。


「アニキ、せんっした! たかが闇耐性一本でアニキに張り合おうなんて思い上がってた己が恥ずかしいぜ。今後もご指導ご鞭撻のほどよろっス!」

「う、うん」


 半モヒの謝罪ヘドバンアタックを避けて道具から手を離すと脇に避けるが、もう一人うざいのが居た。

 ローブおやじがメトロノームのように左右に揺れながら、必死に俺の視界に入ろうとしてきやがる。

 さすが魔法使いの巣は魔境だ。


「言いたいことあんなら言ってくれよ」


 無言で主張すんな。


「これは失敬した。新人のようだが……冒険者なら、もしや昨晩の魔法使いによる襲撃の場で活躍した噂の御仁ではないかと思ってな」

「……参加はしたけど。噂ってなに」

「ヘヘッ、すでにアニキの手柄が知れ渡ってんだな?」

「そういうことだ。あのように前例のない異様な魔法を撃退するとは、度肝を抜かれた。見事なものだ!」


 敵は魔法使いと言った。

 前例がないとも言った。


「おやじもあの場に居たのか!」


 うむと偉そうに、しかもなぜか誇らしげに胸を反らして大きくローブおやじは肯く。

 俺は頭にきて胸倉に掴みかかっていた。


「ええぇー! なんでだ褒めたろ!?」

「んだよ例がないとか聞いてねぇ! 魔法使いの襲撃とはっきり言ったな? 内容だって、もっと他にも分かってたんだろ! 危ないもんだと分かってんなら情報の共有くらいしろやオラ! 後ろで壁の上から人がゴミのようだとか思ったり現場のやつらなんぞ手駒としか考えてねぇのかオラ!」

「でで、出たあーッ! これがアニキの狂犬ぶりだああぁ!」

「そのようなことはにゃいっ! くびっ、くびぶぁ!」




 魔法使いは全員体力がないと思っていたが、ローブおやじは意外と善戦した。


「大事件にゃぞ! 迂闊にぃばら撒けんだびょろ!」

「っからぁ! 前線に出る俺たちには知る権利くらいあるだろってんごっ!」


 ひーとか、わーとか俺たちは掴み合い押し合いしていたが、言い分を聞いて腕を離した。


「ぐほっ、心配かけたようだが、今も全力で調査中なのだ!」

「げぉ、ごめんごめんって……」


 互いに喉を撫でながら深呼吸して落ち着かせる。

 ぜぇぜぇいってるローブおやじに向き直って、俺は頭を下げた。


「えーすいませんでした。なんか色々と不安と不満が奇跡の融合を遂げて不条理満載で」

「よく分からんが、言いたいことは理解できるよ。冒険者とは持ちつ持たれつではあれど、互いに深く干渉することはないものだからな」

「オレら誰でも通る道ですぜ。ヘヘッ、アニキもそんなとこあるんスねえ」


 どこかの組織に属していれば、対抗意識つーか反発心みたいのはどこでも起こるものなんだな。


 俺はそういうつもりはなく、何か隠し事されて捨て駒みたいに使われてる気がしたからなんだけど。

 しかもそれを当然のように受け止める冒険者たちを見て、余計に掻き立てられたというか……それが言われてるような反発心なのかな?


「わしらも調査中のところでの奇襲だったのでな、満足に伝えられんかったことは素直にすまなかった」


 ローブおやじは、それで片づけようと言ってくれた。




 仕切り直すようにローブおやじは咳払いする。


「さて、検査の結果についてだったな。今後の冒険者としての活動にどう役立つか知りたかったのだろ? 闇属性について、あんたはほとんど心配することはない。例えば、黒森などでの仕事はしやすかろうな」

「やっぱあの界隈は闇に呑まれていたか……」


 確かに、知りたかったことではある。

 でも今はそこじゃない。

 今ならなんか話しても良さそうというか、聞いてくれそうな雰囲気ある。


 でも、このローブおやじは魔法団の人間で、調査中ということは深く関わっている。

 あの敵と仲間と思われたらといった不安がぶり返す。

 でも俺の肉体に関する重要なことだし、魔法団以上の尋ねるのに適した相手なんかいない気がする。

 いくら毒姉のように優秀でも一人に聞くより、幾つも当たった方がいいし、組織だからこそ貯め込んだ情報量が違うだろうからな。


 何もやらなきゃ、ことは動かない。

 思い切って疑問をぶつけてみよう。

 俺は真剣な気持ちを込めて顔を上げる。


「あーそれなんだけど、まずは疑問を解消したい。実は気になることがあって。でも俺は魔法について全く知らないから、これから話すことで変なところがあれば教えて欲しいんだ」

「それは、魔法に関することだな?」

「そこは間違いないはずだ。昨晩の事件で感じたことだし」

「なんと、ならば是非聞かねばなるまい」


 ローブおやじも真面目な顔になって促す。

 俺はありがたく闇玉との戦いでの違和感を掻い摘んで話すことにした。

 掻い摘むといっても戦闘内のことはほとんどそのまま。

 なにが致命的か分かんないから、今の俺の判断で隠すとこ間違える方が怖い。


 闇縄が体に触れようとすると反発することに気付いてから、敵が消えるまでのことを聞いてもらった。


「そんな感じで、俺が闇縄を弾き飛ばせたのは、触れないと気付けたからなんだ。それで、その後に、あくまでも後な。俺の耐性が増した気がしたんだよ。そういうことあるのかなーって……?」


 どんな裁定が下されるのかとハラハラもんでチラッとローブおやじを見ると、腕を組んで唸っている。


「なるほど、なるほど……あれほどの相手ではあるが、あの検査結果ならば当然といえるか。とすれば相手も同水準ということになるのか……」

「なるほど、なるほど……アニキの秘密は耐性で殴ると……」


 俺の緊張は霧散した。

 なにか三者三様に注目ヶ所が違う気がするんですけど!


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