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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活

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第48話 俺の属性

 光属性は人体に害があるといった注意を受けたのが思い出される。

 そうだよ、デメリットといえばそういったことを気にしていたはずだ。


 しかし魂の欠片を持ち帰るときなどは素手で拾ってた。魔法具自体からの害は耳にしてないから、加工後危険になることもないだろう。

 魔法製の水飲んで気分悪くなるのは欠片酔いなどと呼ばれていると聞いたから惑わされたが、欠片が毒になるとは聞いてない。

 だから欠片は無害っぽいと思う。


 妖木の被害を考えれば問題は属性の方、妖精の影響の方に偏ってるんだ。

 何かの魔法として形に現れるものは、そうなる前から既にその性質がある。世界に干渉しようとする現象。

 前に漠然と考えたことの裏付けが取れたように合点がいって、思わず叫んでしまったというわけだった。



 今後も魔法具を買う時があるなら、その辺りの注意点を聞けばいいだろう。

 メンテ怠ると半分魔物化しするとか、問題点は把握してるようだからな。

 使用禁止にならず自己責任っぽいから、逆にしっかり伝えられるはずだ。

 魔法具の件はそれで終わり。


 で、俺が気にかかっていた属性の方は、妖精素材が直接には関わらない人間の魔法についてだ。


 光魔法は潔癖だといった質があるらしい。

 露魔法は水系といっても、水が引き起こす結果をなぞってる感じか? 洗い流すとか冷やすとかだし。

 擬似的なものというなら、全ての属性がそうだな。


 荒野の魔雨という言葉が浮かんだ。

 その時は魔力濃度の高い雨と考えたが違うなこれ。

 わざわざ呼び分けるなら、それこそ妖精が直接、露魔法で降らせるものなんじゃないか?

 日を司るもんがいるなら、天候を司るものが居たって驚かない。


 ……なら闇魔法の影響はなんだ?


 昨晩見たことでそれっぽいのは、光を通しにくくなるとかありそうだった。

 耐性としては夜の闇を緩和する……やっぱここの昼夜自体が元の世界ものとは違いそう。




 なんか興奮しちゃったけど、考えれば当たり前かと思うと頭が冷えてきた。

 簡単に言えば効果として表に出すのが属性設定なんだから当たり前じゃん……。

 ちょっと恥ずかしくなってきて俯く。どう誤魔化そう。


「その悟った顔付き……アニキが、一体どのような技を編み出すに至ったのか! この兄弟分にもぜひにお聞かせをぉ!」

「技とかない」

「え、えええバッサリ!? まだっスか! まだ信頼に足らねっスか! くっそおおお! 負けねっスー!」


 無言で拳を半モヒの顔につきつける。


「お店の人に迷惑だろ」

「すいやせん、取り乱しやした!」

「そうじゃなくて……俺もちょっと闇耐性ついた気がすんだよ」

「マジすか……こんな短期間でコツを掴んじまったと……」


 昨晩に見上げた、やけに鮮やかな夜空の光景が頭から離れなかったんだ。

 なにより、闇玉を追い返した直後だもんな。

 無関係と切り捨てるには、ちと偶然が過ぎる。


 そもそも、俺に対する煙触手の反応がおかしかったじゃねえか。


「……オレの、オレのぉ、一月がぁ……」


 なにか落ち込んでいるらしい半モヒに戻ってこいと声をかける。

 確かめることは決まった。


「魔法耐性を調べる道具とかある?」

「あるにはあるっス」

「いまいちなのか?」

「あーゴホン」

「ふわっ誰だあんた」


 振り向くとローブおやじが困ったような視線を向けていた。


「魔法具についてなら、わしに聞くがよかろう」

「それもそうだ」


 なんか説明とか面倒くさそうな気配がしてたから、無意識に避けてたぜ。

 大体いつまでも店先で固まられても俺が邪魔者でしたすいませんゲヘ。

 笑顔を取り繕ってローブおやじの顔色を窺うと、笑顔を浮かべていた。


「属性耐性について知りたいのだな。昨今の若者には珍しい視点だぞ!」


 ……あぁ、耐性がどうのに食いついただけっぽい。




「すぐに準備する」


 俺の疑問に興味津々だったらしいローブおやじ。

 これまでの気怠い雰囲気が嘘のように機敏に動き出し、俺からの返事を待たず背後の箪笥を漁り始めた。

 薬箪笥っていうの? 引き出しわんさかついてるやつ。

 それを開いては閉じ、その度に妙な部品が俺との間にある長机に増えていく。


 最後に重そうな台形の金属を両手で持ってきて置いた。

 さっきローブおやじが使ってた天秤の台座みたいのだ。

 そこにラムネ瓶色の小さなフラスコみたいなもんや水晶片やら丸石やら、側に置いてあったゴチャゴチャした部品を取っては、穴に差し込んで装着したり台座の下にあった小さな引き出しに詰めたりと忙しく手を動かす。


「うわー本格的だな……」

「本職だから」


 ローブおやじは嬉しそうに呟いた。褒めたんじゃないけど。

 手際の良さと、いきなり精彩を取り戻したローブおやじの変わりように怯えつつも見入ってしまう。

 組み上げられていく科学実験道具もどきに目を奪われるが、そのパーツの幾つかが、商品棚にあったものと似ていることに気付く。

 それ、すっごくお高いんじゃ……。


「ちょっと待って。俺は道具があるかどうか聞きたかったんだって。使いたいんじゃなくて! こういうの高いんじゃないのか。俺、もう金ないぞ」


 ここで押し売りか? 買い物済ませて安心したところをついてくるとは策士か。


「いや構わんよ。話から察するに、今後の仕事に悩んでいるのだろ? わしら魔法団は、冒険者組合とは切っても切れぬ間柄だ。なにより二級品冒険者が見込んだ新人になら、このくらい大した手間ではない」

「ヘッ、いい判断だぜ」


 得意げに答えた半モヒを見た。全身魔法具野郎だった。

 ああ、半モヒはいいお得意様だよな。

 ローブおやじが誤解した言葉で気付いたけど、今後の活動に関わるのは確かだ。

 しょうがねぇ今回はお零れに与ってやんよ。

 ……恩を返せる日は来んのかなぁ。


 ローブおやじは出来上がったものを俺の前に押し出した。

 台座の上にはこんもりと、ワイヤーや木枠などに挟まれて様々な形の小さなフラスコが盛られている。

 その両サイドに、金属パーツが飛び出ている。巻いたら音が鳴りそう。


「ほれ、この端と端に両手をかけてくれ」


 そう言って指し示されたのは、飛び出たパーツ。六角レンチの棒を四角く折り曲げて取っ手のようにした部分だ。

 電流とか流れないだろうな。

 不安になりつつも必要にかられ好奇心に押され取っ手を掴む。


 すぐに反応はあった。

 幾つもくっついたフラスコの中に、もやもやとした色が湧き上がっていく。


「お、おぉ、錬金術っぽい!」

「魔法だ!」


 思わぬ文句。

 魔法と錬金術も似たようなもんじゃねえのゲーム的に。


「そのような胡散臭い術などと一緒にする……ぬぁッ!?」


 なにが違うのか声をかけようとして見たおっさんの動きが固まった。

 険しい視線は道具に縫い付けられている。

 気が付けばフラスコの中身はほとんど満杯になっていた。

 それを凝視したままローブおやじは驚愕の表情を浮かべると後ずさった。


「な、なんだよ」

「なんと、完全なる耐性持ち、だと……ほぼ」

「おい完全なのかどうかはっきりしろよ」


 なにかしら安心材料が欲しくて検査したのに、ますます不安になったじゃん。どうしてくれる。

 ローブおやじは答えようとしてるのか、しかし出ずに口をパクパクさせる。


 改めて変な器具に視線を落とすと、フラスコのうち三つの中身が溢れそうに渦巻いているだけだ。

 黒、白、薄い水色……ああ、これが属性の反応か。

 特に今にも溢れそうというか、見てる内に口まで満ちてしまったのは黒だ。


 黒――闇属性。


 やっぱり、と思う。

 納得の結果だった。


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