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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活

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第45話 和解?

 のそのそと去った巨大闇マリモを見送り喜んでいる冒険者の皆さんだが、俺はその光景に不審な目を向けていた。


「え、マジで帰っちゃったの?」


 あんだけ派手に仕掛けて来たのに?

 諦め早ぇな。


 背後から物音がして振り返ると門が開いていく。

 そこには人が並んでいるのが見えた。


「追え! 急げ!」

「出るぞ! 出発!」


 そんな号令と掛け声が上がり猛然と駆け出した人の列は、拳を振り上げて歓んでいる冒険者たちの脇を瞬く間に駆け抜けていく。


 うおっ驚いた!

 兵士の一団だ。後を追えとか指示していたようが、その速度の出方がおかしい。

 ジョギングしてるような走り方で、短距離走のスタートダッシュ並みだった。

 あれも魔法具か魔法かなにか?

 ……鍛えればあれくらいにはなるのかもな。


「頑張れよー!」


 駆け抜けていく兵たちに冒険者から声がかけられる。

 冒険者らのごっつい歓声が波を引くと、急に辺りが静けさを取り戻した。

 辺りの物音も耳に入るようになる。

 開いたままの門から慌ただしいやりとりの気配があり、ローブ姿の奴らも出てきた。


「今さらかよ」


 兵もだけど魔法使いも何してたんだ?

 近付いてくる魔法使いグループ数人をつい睨んでしまうが、俺たちの場所に辿り着いたときには息切れしていた。


 ……え、こんな奴らもいるんだ。

 半モヒが言ってた外は冒険者の領分って、魔法使いが体力ないせいじゃね?

 もう少し運動しようぜ。


「ゼヒーッ……出現位置はぁ分かる、か?」


 息も絶え絶えに声をかけてきた魔法使いは、何か大きめの鞄を持っている。

 あー魔法の調査用に居たのかな。


 気付いた先頭パーティから一人が出てきて案内に連れて行く。

 リーダーっぽい盾男は街を振り返って光る手のひらを振った。

 街の方を見ると城壁上の灯り棒も振られている。なんかの合図?


「よし、もういいぞ。さあ戻った戻った!」


 そうして周囲に声をかけながら移動を始めると、辺りも雑談しながらぶらぶらと動き出した。

 まるで花火大会でも見た帰りのような暢気さだ。


「へ? マジで終わり?」

「かなり力を削ぎやしたし、ここまでやりゃ十分っしょ」

「うぉっ、半モヒ!」


 いつの間に戻ってきた!?


「生きてたか」

「心配かけやしたぁ!」


 ごめん心配するどころか怪我さえないと思ってた。


「俺たちは追わなくていいのか」


 というか俺たちは何のために出てきたんだよ。

 冒険者は力を削ぐ役割だとか決まりがあるの?

 兵も強そうなのに、なんか戦い損な気分なんだけど。


「ヘンッ、引き揚げ時ってな妥当な判断だ。ありゃ闇の煙幕で間違いねえ。さすがに追っかけるのは無理っス」


 半モヒは鼻を鳴らしてリーダーの男を睨みつつ言った。

 ライバル心でもあんのかい。


「兵の足はかなり速いと思ったけど」

「そんなもんで掴めるような魔法じゃねぇのは承知でしょ。せいぜいが魔法具で魔法の痕跡を嗅げりゃ上々っス。ま、領軍のメンツにかけて追わないわけにゃならんだろうし、冒険者で良かったっスね」

「え? そ、そうだね」


 まさか何か掴めるまで帰ってくるなとかいう任務?

 うん恨めしいなんて思ってすまん。足止めで済む立場で良かったぜ。


「一体なんだったんだろうな。あんな短時間で……あ、もしかしたら魔力切れとかそんなん?」

「そうだろうな。もし奴の限界が知れたのなら、俺たちの出動にも意味はあった」

「ひっ誰だあんた」


 突然に近くで聞こえた声に振り返れば、立っていたのは盾男だった。

 ついさっき先頭にいたよな!? いきなり近付くなよ。ほんと冒険者は怖ぇな。

 さっと半モヒが遮るように俺の前に出る。


「いきなりなんだよてめーは。アニキに気安く口きいてんじゃねえ」

「今回の指揮を任された二級品冒険者として、言わなければならないだろう」


 やはりリーダーだったのはいいとして、こんないきなりの招集で指揮とかなんとか決めて動くんだ。

 冒険者組合って各々好き勝手にしてそうだと思ってたから意外な感じ。

 いやこれは毒姉が解説とか面倒くさがりなせいか?


 盾男を睨みつけていた半モヒが俺をチラ見した。

 俺に何か用があるんだっけ?


「あのぅ、ぼくなにか粗相をしたでしょうか」

「とんでもない。咄嗟の助言、助かったよ!」


 盾男は爽やかに笑った。

 俺の頭は混迷を深める。


「え、どれのこと」

「敵に合わせることを提案してくれたろう。あれが皆の耳に届いたから、俺も即座に動けた」

「あぁ、それか……役に立ったなら良かった」

「何より、俺たちが魔法を使う隙を作ってくれたことには特に感謝したい」

「い、いぇ、まぐれでして……」


 あんな風に対処できたなら元からある方法だろうし、俺が言わずともすぐに気付いて行動に移した気がするけどな。

 ここは適当に頷いておこう。


「冒険者になりたてなら、こういった異例の行動は驚いたろう? しかし滅多にないことだから安心してくれ」


 などと嫌味のない笑顔で格下の俺を気遣ってくれる。

 地味な顔付き通りに、なんとも真面目風なおにいさんだ。

 なあやっぱ半モヒが異端なの?

 とはいえ、こいつらもガチャガチャしたバンドマン崩れな恰好なのは同じだから、逆にギャップで違和感すごいけど。


 隣からフンスと荒い鼻息が前に出た。


「おうおう用は済んだなら早く行けや」


 半モヒは威嚇すんな。


「そうだった、ヤロゥ君もお疲れ様! 今回もさすがの活躍だったな」

「っからぁ! その呼び方はやめろってんだ!」


 半モヒは痒そうに体を掻く仕草をする。

 ああ、ライバル心とかじゃないのか。嫌がってたのはそれが理由かい。


「それにしても、ヤロゥ君が認めた男だと聞いてはいたが本当だな。とても四級品の胆力ではなくて驚かされたよ!」


 とても誠実で誰からも頼りにされる兄貴分的な人なんだろう。

 リーダーを任されるだけのことはある。

 ……ちょっと俺も苦手なタイプかも。居心地悪くなるというか。


「ヘンッ、てめぇもよく覚えとけ。今に伝説の冒険者と成るミノルアニキをな!」

「おっとミノルアニキ君だったか。俺はニバン。いつもはただの二級品冒険者でしかないよ」

「誰が気安くアニキと呼べといったよ! てめぇのような舎弟は認めねぇぞ!」

「名前はミノルだけだからな!」


 半モヒな、お前のせいだろ!


「ハハハ、ミノル君か! ここまでヤロゥ君が期待するほどなら、すぐにでも一緒に依頼を受ける日はきそうだな。そのときはよろしく!」

「は、はぁ、よろしく」


 今にも唾を吐き捨てそうに威嚇する半モヒを意に介さず、ニバンさんは大股で門へと向かうが、そこで待ち受けていたようなローブ姿の前で止まった。報告があるようだ。


 俺も歩き始めたら、周りもぞろぞろと動きだす。

 気が付けば他の奴らは周囲で話を聞いていたらしい。

 見回す俺を見て片手を軽く上げる。


「よっ、ミノル! おつかれ!」

「おうミノル、おつかれさん!」


 口々に労いの言葉をかけてくる。

 な、なんだよお前ら、いきなり知った気になってんじゃねーぞ。

 そう戸惑っていたら、理由が分かった。


「初めっから、いい拳してんなと思ってたんだよ」

「この身に喰らって知ってるからな!」

「ヤロゥから間接的にだけどね」

「そうそう、言伝は届いたぜ。気に済んな。いいネタになったぜ」


 そいつらは俺が殴り飛ばした半モヒに巻き込まれ、毒姉にメッセージを送ってくれと頼んだ相手だったんだ。

 なぜか逆にありがとよなどと言いつつ、野郎どもとお姉さんたちは門をくぐっていった。


 そのお礼は、さっきのことに対してだろうとは分かるけど。

 少しだけ、肩の荷が下りた気がした。


 ちょっと待った。

 あの野太い歓声にあんたらお姉さんも居たのかよ!?


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