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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活

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第40話 自己鍛錬

 ゴブ退治だーっと勢いよく走りだした俺だが、森の方向くらいしか分からない。

 森に突入すると半モヒが気を利かせて先頭に回るのに大人しくついていく。

 一応なにか目印を探したほうがいいかな。

 木だけだと生え変わったりしたら迷いそう。地面とか? 


 モヒ家までの獣道は曲がる数とかで、なんとなく覚え始めた。

 壁の内なんだから迷ったところで遭難するほどのことは起きないと思うけど、なにかあって一人で戻ることがあれば困るしな。

 木々が途切れると、いきなり目的の姿が現れた。


 ふよ~ふよよ~。


「ぅおりりゃ!!!」


 パキャキャン――到着するや突撃!

 相変わらず、やる気あるのかないのか分からないゴブだが、人間を見れば近寄ってくる。

 ちなみに毒姉が書きつけていた正式名称は、緑釉(りょくゆう)のゴブレットだ。

 とてもモンスターの名称とは思えない。


 で、なんとなく殴り始めたはいいが、魂の欠片の鮮度のことが気にかかった。

 放っとくと消えるらしいが、どの程度もつかは聞いてなかったな。


「こいつらの欠片さ、持ち帰っても明日には消えるとかない?」

「朝一で持ち込みゃダイジョブっスかね」

「そこそこもつんだな」

「なんならオレが一っ走り行ってきやスよ」

「いや、それなら早めに戻る」


 そういえば半モヒは当初、久々に来たから拾うのを忘れてたなどと言いくさってた。

 どんな魔物相手だろうと、換金できるもんが欠片しかないなら、素で忘れるって変じゃね。

 そこらをつついてみたら、俺も少しダメージを喰らった。


「あ、あー……二等級の欠片はでかいんで、その、探そうとしなくても目に付くというかっスね……」

「わかった」


 目に付かないなら落ちてないも同じと。

 飛ばした鼻くそほど見向きするに価しないものだっていうんだな!

 二級品への道は遠そうというか、俺、今のままだと三級品も危うい気がしてきたよ……。


 特にない恨みを掻き立てつつ機械的にゴブ退治してると、なんとも途方に暮れてきた。

 今さら武術なんて身につく気がしない。

 まあ人間相手じゃあるまいし半モヒのアシストもあるから、毒姉が言うように現場で学べってのが一番いいのかもしんないけど。

 実際、体力だけは嫌でもつくだろうしな。


 ただ四等級最弱モンスターの幽羅はまだしも、次のクワガタリスですでに俺の動きではなかなかついていけない。

 そりゃ倒せるよ?

 変な拳のお陰で、敵が近付いてくれるのを待ってからならな!


 けど肉体が少しくらい頑丈になったからと、痛みはあるんだから無駄に攻撃を受けるわけにはいかないし。

 立ち回りなんかさっぱりの現状じゃ先が知れてる。

 人の動きを見て学んだ方がいいのは俺の方だよ。


 ちらっと半モヒを見ると、すかさず笑顔を向けられ何か用かと待機される。

 駄目だ……盗み見さえ無理じゃん。

 毒姉には及ばなかろうと俺から見たら人間超えてんだって!


 半モヒに本気で動かれたときは目で追えなかったから、力を抜いているらしいゴブ退治中くらいしか機会はないんだよな。

 黒森だと暗いし、木の実採りつつ上から跳ねてくるリスもどきを気にして人の動きを見る余裕はない。


 仕方ねぇ、意地張ってる場合じゃない。

 大人しく頼もう。


「半モヒ、俺のことは気にせずゴブ退治に集中してください!」


 半モヒは大仰に仰け反りショックの表情。

 今度はなんの誤解だ。


「アニキ……欲深すぎんだてめぇはと釘を刺してくれるんスか……オレがアニキから奥義を盗もうと伺ってばかりで、また基本を疎かにしてるとぉ!」

「……とにかくたのんだから」


 盗み見が成功しないのはお前のせいもあったのかよ!




 俺も少しは真剣みが出てきたらしく、もう少しまじめに前向きにこの世界での冒険者生活に取り組もうと考えた。

 ちょっと収入が減ったくらいでこの気落ち具合かメンタル弱っ、とか言っていつもなら笑い飛ばしてたと思う。

 しかし未来が容易に想像できると違うね。不安感半端ねぇ。


 それで、どうにか俺のことなど気にするなと半モヒを言いくるめて、俺からは堂々と動きを拝見させてもらいました!

 なんか半モヒは訓練つけてくれてると勝手に奮起してたから、しめしめと思いつつ複雑な気持ちだったけどな。


 元々あちこち出歩くのは好きなくらいだったけど、同じ体を動かすでも戦闘職は別物すぎ。

 こっちの体術とかどうなってんのか雑談に紛れて聞いてみたけど、半モヒにしろ他の奴らにしろ大半は町民の出だし、特になにか鍛錬を積むことはないらしい。


 毒姉の態度からしてギルドからの講習があるわけもなく、ガキん頃の喧嘩の要領でそのまま慣れて行くから我流でしかないようだ。

 なんだよ、やっぱあの洟垂れガキんちょが基本なんかい……。


 俺の場合、スポーツは学校でやる範囲。家では筋肉つくかなーと衝動買いしたパンチングボールでボクシングもどきをやったくらい。もちろん三日坊主だ。

 ダンベルやエキスパンダーやハンドグリッパーとかインテリアだよな!


 えーというわけで、俺に技能だとかはない。

 数日間のデータしかないが、どう考えても俺の体はこっちの人間の身体能力を有してない。

 鍛えたところで半モヒのような伸び方をするかは不明だ……。

 半モヒと毒姉という特殊な例しか知らんけど。

 だとしても人を担いで軽々歩くようなのが普通なら、俺にそんな進化はないだろう。


 ほんと物理的に? 打たれ強くなってるだけだ。

 高反発クッションにでもなったように微妙にな。

 謎バリアーとか、小学生のエンガチョ合戦かよ。


 まあ逆に言うなら? 普通に鍛えるなりには、鍛えられるはずだ。

 そんなん出来るもんなら元の世界で既に鍛えてるわ!

 せめてもう少し背でもあればいいのに……今170センチない。もう伸びねぇのかなぁ……ハァ。

 あっと、つまらないコンプレックスにいじけてる場合じゃなかった。


 まずは実践!


 なんとなくだが半モヒの真似を意識しつつ、ゴブ狩りに集中。。

 格闘系の本とかで読み齧ったものも思い出しつつ、足を肩幅に開き腰を落とす。

 それに加えて常にどうとでも動けるようにとかで、半モヒは半身に構えるのが基本のようだ。


 半モヒは俺に確認を求めるために動きに加えて自説を語ってくれていた。

 ほんと心から感謝しておく。

 でもすまん。適当に頷いてるけど正直分かってないから。


 とりあえず俺は右手を阻害されないようにした方がいいだろう。

 肘は引いて腰につけるように、特に力を乗せる必要はないが素早く拳を繰り出すことを心がけるなら腰のひねりで腕を前に出す。引くのも早く無駄に力を浪費せずに済む、らしい。


 反復練習しつつ朧げに自分なりの動きを掴めたところで、空の遠くが揺らぐのが見えた。


「お、そろそろ夜が近いっス」

「んじゃギルドに戻るか」


 俺にも朧気ながら空の変化が分かるようになってきた。

 遠くの空や雲が揺らぎ横一線に藍色が広がる様は、さながら終末を思わせる。

 時報妖精さんの機嫌を損ねたら人類は一巻の終わりだろうな。


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