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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活

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第34話 魔法事件?

「んなわけでして、ついでに拾える魂の欠片が使えるもんだから無駄じゃないっスし、生活の足しになるなら活用していこうってな感じっスかね」

「なるほど、な……」


 魔物は積極的に倒した方がいいらしい理由を質問したわけだが、木の実を縛って背負ったところで、ようやくお話終了の合図が出ました。


 なんと話は、いきなり歴史から始まり政治だとかに及んで、無意識にスルーしようとする頭をなけなしの気力で捻じ伏せつつ聞き終えたぞ!


 細かいところは、いつものごとく別の前提知識が要りそうでよく分からん。

 俺でも重要かなーと感じたのは、どうも魔物が発生しやすい環境というのがあるということだ。

 今でも周囲に出没するが、それよりもっと酷い場所があるとか……ぜってぇ行きたくねぇ。


 そんな場所には余計な力が溜まっているか、湧きだしている証拠ということらしく、そのついでのように魔物が生まれるのだと。

 だから魔物を倒すことで、その場の余剰の力を削れるということらしい。

 迂遠に思えるが、やらないよりは効果があることは判明しているそうだ。


 簡単に言えば、それだけの話に思えた。

 が、実は似て非なる別の不思議現象があって、それらもまた別の魔物のようなものを生み出してしまうのが、この辺のことを面倒くさくしているようだ。


 しかも、そっちは住民任せにできない危険度なんだと。

 例の如く毒姉が俺に言い放った、天然記念物並みという言葉は、それら特定の危険現象のためにあるようなものらしい。

 毒姉め……。


 とにかく、そのためにかつて人類が危険に陥った際に専門の対策集団を設立したのが、なんと魔法団の始まりだったという。


 未だ名前だけ存在を知る謎の魔法使いギルドがそこに絡むとは!


 とすれば、魔法使いとは別に魔女と呼び分けられてる理由も、そこから来てるんかな。

 たんに魔女は毒姉のような化け物が生まれたときに自然発生した呼び名の気がしないでもないけど。


 とにかくそんなわけで、「魔物を倒す意味は何?」に対する結論は、とりあえずぶん殴れなわけだと分かったのだった。




 重い木の実を背に項垂れながら街へ戻ってくると、どこか通りが騒がしい。

 路地を抜けてギルドが見えると、まだ真昼間だというのに珍しく、人の出入りがあるのが見えた。


「なにかあったんかな?」

「そのようですぜ」


 遠目にも恰好はどう見ても冒険者だ。

 こっちの事情に疎い俺でも、戦闘を伴う職種の奴かそうでないかくらいは分かるようになった。


 当たり前だけど店の人たちとかと違って、武器っぽいものや防具っぽい装備を身に着けている。

 曖昧なのは見慣れない形状が多いからだ。


 なんか硬そうだから、バールのようなものくらいの認識。要は何を身に着けてるのかは分からないんだけどな。

 防具の方も基本は革装備に、ごちゃごちゃと小物がくっついていて、ぱっと見はメタラーっぽい感じ。


 どこが防具なんだと言いたいが、この時代感だ。革のジャケット程度でも布の服より防御面では勝っている。

 それにいくら何でも全員がバンドマン崩れのはずはない。そもそもバンドがねえよな。

 アクセサリーに見えるものは魔法具なんだと思う。

 半モヒほどガチャガチャしてるのは少ないから、ランクの割合からしても合ってるだろう。


 そうなると半モヒは全身で、俺は金持ってるぜ強いぜと言い放っているも同然ということになるな。

 ……俺も舐められないように何かぶら下げた方がいいかな?


 そんなことを考えつつギルドのスイングドアを抜ける。

 やけに静かだと思い隣を見上げると、半モヒは神妙な面持ちで室内の様子を観察しているようだった。


 この時間に事務所にいる者は、毒姉曰く『冒険者の面汚し』。

 それが一度に集まるなんてありえないよな。


「聞こえてくる話じゃ、どうやら表門側の荒野のど真ん中に、不審な魔法跡が見つかったらしっスね。その調査のため、狩場に居た奴らに呼びかけたらしっス」

「へ、へぇ」


 なんか話してる風の人はそこそこ居ますが、全員が大声出してるわけでもないし同時に話してるんですけど。

 耳、良すぎない?

 ああでも、無言で妙に力んで集中してるから、聴力がいいというより何かのスキルかも。


 窓口に近付くと、先に話していた冒険者たちが走って出ていき、入れ違いに毒姉と目が合った。


「遅かったわね。ちょうど臨時依頼は締めきったわ」

「臨時依頼って何、金いいの?」


 なにか起こったことに関してだろうけど唐突だな。

 追加で採ってきたトゲトゲ木の実を置きながら聞いてみた。


「三割増しよ」

「どうせなんか裏があんだろ?」

「そんなもんないわよ。こういったものは領主側からの正式な調査依頼なの。三級品以上の能力が欲しいってだけ」

「俺無理じゃん!」


 まったく、なにかあると思ったよ。

 捻くれた笑みを浮かべて毒姉は木の実をチェックする。

 見に行く気はなかったけど、こんな異常世界の異常事態がどんなもんかは気になるなあ。


「あちこちで妙な現象があるのに、わざわざ調べんの?」


 毒姉が胡散臭そうに俺の様子を窺ってきた。

 また何か俺が企んでるとか考えてんだろうな。


「自然現象じゃなくて魔法の跡らしいから。しかも大規模な。人為的なものでしか有り得ないということよ」


 おお珍しくまともに説明を始めた。

 毒吐くネタが尽きたか?


「あぁ、魔法か、魔法ね……しかもでかい跡」

「ええ、滅多にない力量の持ち主ね」


 魔法って人間しか使えないのか。へー。

 しかも大規模な魔法は、よっぽど珍しいと。

 似たようなことは前に俺が戻れる魔法がないと聞いた時にちらと話に出たけど、あれは環境に影響するほどの力だからという話だったよな。

 人の力を越えるからと。


 まだ俺は普通の魔法使いがどんなもんなのか見たことないし、人間の魔法使いにできる限界ってのが分からん。

 けど、わざわざ招集して調べようってほどなのが気になる。


「でも荒野だろ? 誰にも被害はなさそうだし、なにがマズイんだ?」

「比較的、街が近いというのが気になるんじゃない? 街に対する攻撃意図があるかどうかってね」

「うわ、そっちか」


 領主案件とか。深刻度パネェ。

 そりゃ幾ら毒姉でも毒を吐いてる場合じゃないか。


「はい、今朝のと合わせて依頼一件分の報酬。多めの分は買い取りで加えておいたわ」


 気が付けば目の前に報酬が置かれていた。

 茶色い小銭がジャラジャラではなくて、ジャラっと手のひらに収まる程度。


「やっす!」

「なによいらないの?」

「いりゅぅ! いるから返して!」


 毒姉から死守したトゲトゲ木の実採取の報酬は、初めのゴブ退治よりマシなくらいだった。

 ランク一つ高くて、あんなに持ち帰るの大変だってのに!


 しかも半モヒが持ち帰った偽毛皮一つとほぼ同じ額だってよ。

 もっと真面目にクワガタリスの方を退治しておけばよかった!




 ギルドを出て、なんとなく表門方面に目を向ける。

 調査か。

 誰かがストレス発散してるだけかもしんないのに行動が早いよな。

 まあ、こんな場所を統治する人たちなんだから、なんでも事態を重く見るくらいがちょうどいいのかもしんないけど。


 憧れでもある魔法の恐ろしいところでもあるよな。

 近所のガキの悪戯で済まないレベルの迷惑さとか想像つかねえ。


 できれば、こんな人間にとって狭い世界しかないところに、無差別テロ妄想癖を持つ極悪人が居ませんようにと心で祈る俺だった。


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