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闇魔法で最強の拳を得た俺は異世界を突き抜ける!~いずれ拳聖のぐだぐだ冒険者生活~  作者: きりま
冒険者な生活

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第28話 星歩き荒野

 もこもことした雲の島に俺の視線は釘付けだ。

 近くにあるようでいて離れてるんだろうか。

 だから雲の上に乗った滝だとかが見えるんだと思うが……雲に乗った滝ってなんだよパフェじゃないだろ。気軽に虹でデコレーションされてんじゃねえぞ。


 そりゃ滝があるなら水飛沫がキラキラしてるし虹が架かっていてもおかしくはないだろうよ。

 でもその比率がおかしいんだ。


「なんだよ、あの、浮いてるの……」

「あれが虹の浮島っス」


 その呼び名の通り、滝に対して虹がでかいんだ。

 幅もそこそこあって色味も濃い。滝の上で、看板かというように掲げられて主張している。


「丘の上からは、こんなんなかったぞ」


 あれは反対側だったからか?


「今日は近い方っスね。普段はもちっと遠いんで、あんま街から見えないんスよ」

「俺、反対側に行ったから見なかったってわけじゃないのか……」


 というか、あれが空を気ままに移動してると。


「あー、やっぱ表門側の方が大地も安定してやスんで、見通しはいいっスね」

「こっち側、圧倒的に危険そうなんですけど?」

「お、燃えてきやしたか」


 不安が大炎上だよ。

 えぇ、本当に四級品冒険者ごときが出てきちゃっていいところ?


 半モヒが歩き出そうとした方向を見やる。

 壁のすぐ傍まで広がる黒い森は圧倒的な胡散臭さだ。言葉通りに枝も葉も、その狭間も黒い。


 かといって右手の寒々しい荒野は見晴らしはいいものの、それらが遠くで蜃気楼のように霞んで見えなくなるまで延々と続いている。


 もちろん門から伸びる道も薄れて見えなくなる……道?

 幾度となく何かを引き摺ったような跡が、自然と残っただけというような筋があるだけだ。

 こんなん魔物だかなんだかに襲われたらひとたまりもねーじゃん!


「もしかして、街道なのかこれ」

「まあ、こっちはオレらくらいしか使わねぇからしょぼいスね」

「こっち側に街はないんだ?」

「ええ、表門からの道が都行きで、こっちの壁沿いに黒森を抜けるともう一つの街に行きやス。この荒野ん中の道は他の街道を迂回する必要がある時用で、普段は討伐依頼で使うくらいっス」

「そうなんだー……」


 言われて壁沿いに目を凝らすが、こっちも道というより自然と出来た通り道が森との間に延びているようにしか見えないんだけど。


「行ってみるか……」


 不安にどきどきする心臓を宥めつつ半モヒを促した。

 歩きながら、近付く黒森とやらをきょろきょろと見回しつつ、本日の用事を思い浮かべる。


「それで、四級品の採取物ってなんなんだ?」


 今日は下見だけのつもりだけど、依頼の内容くらいは確認してくればよかったかなぁ。


「つまんねーのは星屑(さら)いっスかね。ザルを手に、そこらの地面に這いつくばって材料集めるんスけど、一日終える頃にゃ腰が痛くてたまらねっス」

「は? そこの荒野で? なにその砂金採りで川底を浚うような苦行」

「おお、っすが修行者! やっぱ苦行って聞くと昂りやスか!」

「ときめかねぇよ! つーかマジで? この荒野の中をか……」


 バカじゃねぇの。

 どんだけ価値があるか分からんが、いや四級品仕事なんだから、大した価値もないのか?


「なんに使うんだ。結構な量も必要そうだけど」

「高温の炉で溶かして固めて使うらしっス。頑丈な道具作るにゃ便利なんスわ。大して集まりゃしねんで、小物が多いっスね。あ、壁沿いじゃほとんど見つからないですぜ」


 ついつい地面を見てしまった。


「砂粒みたいなもんだよな」

「それよりゃマシっスかね。初めは討伐のついでにでも見つかりゃ儲けもんって感じスわ」

「やっぱ、そうなるよな」


 特徴を聞くと、パッと見は硝子の欠片のようなもので主に水色らしい。ラムネ瓶を砕いたようなもんなんかね。

 破片のようなもんなら砂金よりは見つけやすそうだとは思うけど。

 それでも挑戦する気は起らないが……念のため地面をチラ見しつつ歩こうかな。


 ザルを買うべきかどうか気持ちが傾きかけていると、半モヒの話は次に移った。

 あ、四級品の採取依頼全般について聞いたんだった。


「そんで一番金になるのは天蓋の流れ星っスね」


 なんでそんな夢見がちな名前のアイテムばっかなんだよ。


「ほんと星が好きだな」

「星歩き荒野ってくらいっスからねぇ」


 やっぱそれに因んで星柄が多いのかね。


「それで金になるってくらいだから、その流れ星の採取は大変とか?」

「採取だけなら専用の道具さえありゃ楽勝っス。辿り着くまでに三級品以上の腕っぷしが必要で、パーティ向けの依頼っスがオレたちゃパーティっスし」

「却下な」

「えぇ? オレらにゃ楽な仕事ですぜ……アニキ?」


 じゃあそれでと迂闊に言おうもんなら、とんでもない場所に連れて行かれるところだったな。

 足を止め半モヒを睨む。


「いいか半モヒ……下積みは大事だ。俺はな、きっちり段階を踏みたいんだよ」


 どうだ、もったいぶった態度でそれっぽいお断り文句!


「オレとしたことが、んな大切なことが頭から抜けるたぁ……力に驕って基礎を疎かにしていると戒めてくれたんスねアニキぃ!」


 よし、うまくいったぞ半モヒの操縦法!


 再び何事もなく歩き出す俺たち。


「他は黒森の木の実採取とかなんで、討伐しがてらになりやスね」


 掲示板見たときにも思ったけどさ、やっぱ外はほとんど討伐依頼ばっかやん。

 結局は採取がメインなのって、星屑浚いとかいうのしかないじゃんか。

 枯草がこびりついたような、ざらついた土の地面を眺めると、考えるだけで気が遠くなる。


「そうなると、木の実拾いかねぇ」


 けどなぁ、それも魔物を倒しながらだから気合いいれねぇと……あれ?

 荒野の蜃気楼が強くなったな。というか蜃気楼が近付いてるような?

 そんなわけないな。

 距離感がおかしく感じるから気のせいだろう。


 待て待て、俺の常識で考えて痛い目に遭ったろ。

 見たところ荒野には魔物らしき影は何もない。だから星屑浚いとやらは採取だけに専念できると思い込もうとしていた。

 けど、ここではなんでもスルーしない方がいい。


「なあ、半モヒ。ゆらゆらが近付いてきてる気がするんだけど」

「幽羅っスか? 揺れが大きいと動いてるようで紛らわしいんスよね」


 ん? ニュアンスおかしくね?


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