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第115話 報告と準備

 半モヒはだらだらと、俺はひーひー言いながら、もいだトゲ木の実の回収に黒森と往復した。

 三往復目にして、ようやくカウンターに齧りついて一息つく。

 まぁ半モヒが山盛りで担いでくれたから、それで済んだんだけどな。

 ただでさえ予想外の出来事で時間食ったのに、さらに無駄に長引いてしまった。


 その予想外な現象について、黙ってたら半モヒが勝手に報告してくれるかと思ったが、こんなことだけはきっちりと俺を立てやがる。

 毒姉に追い立てられそうになり、ようやく俺は重い口を開いた。


「異常事態あったから報告でーっす」


 黒森奥部の境で、謎の闇属性の魔力の流れが発生しており、それがどうやら奥へと流れ込んでいるようだったこと。

 それから、言い淀んだものの、それを吸引してしまったことを白状する。

 後で知られると余計に怖いからね。


 毒姉は、特に感情を見せないまま言った。


「そう。よく確かめてもないのに、消したの」


 はい、そうですよね……。

 威圧するでなく、呆れのようなものでもない。怒りのために逆に能面のようになる時とも違った。

 心情が分からず、逆に緊張してしまう。

 そんな毒姉の新たな生態など知りたくないです。


「まあ、今回はいいわ。あんたの無知っぷりにも慣れた。私から伝えておく」

「魔法団に、だよな……よろしくお願いしまーす」


 余計なことは言うまい。素直に毒姉にお任せだ。

 あっと、もう一つ用があった。


「確認しておきたいことがあんだけど……」




 ☆




 もう正午は回ってる。

 太陽もないのに、どう言っていいか分からんから体感的なものだが……多分、昼過ぎ。


「やっと買い出し行けるな」

「なんならオレが、一っ走り済ましてきやスぜ」

「俺の買いもんだから。選ばせろ」

「おお! アニキのこだわりの一品から学ばねばッ!」


 都までの距離は最短で徒歩一日だ。

 旅支度の買い物ったって、保存できる食い物とかくらいだろう。

 灯り石の補充は必要ない。ほぼ使ってねぇし。

 まだ買ったもんさえ満足に使ってないのに、本体の予備を買うのは、もったいないもんな。


 旅行鞄も必要なほどではない。

 いつものように弁当は持って行かないから、ウェストポーチで済むだろう。ちょっと大きめだし。

 下着とシャツなんかは、半モヒから借りてる巾着袋で丸めて詰めりゃ足りる。


 おや? 買い出しの意味……い、いや、飯は重要だよ、うん。


 後はテントみたいなもんとか考えたけど、いっそ下手な荷物は持ち歩かないでおこうと決めた。

 俺の場合、ぜったい身軽な方がいいもんな。

 道中で無理レベルの魔物と出会ったとして。もし半モヒが逃げるレベルのやつとか居たらどうするよ。

 あいつに俺が追いつけるはずもない。それどころか、最下位ランクのやつとだって負ける自信がある!

 別に足は遅くないのによ……こっちの人間がおかしいんだ。

 だから、せめて荷物が足を引っ張らないようにしておきたいのだ。


 そんなわけでだ、もう防具だとかなんだかは、俺にまとわりついてる闇魔力を信じることにした。

 強化までされちゃったしな。


 とはいえ、温度とかは普通に感じるわけで。

 夜までに都に到着できずに、野宿するはめになったときのことを考えたら、ジャケットくらいはあった方がいいかなぁと思う。

 代わりに昔っぽい旅のマストアイテムといえば、あれだ。

 マント!

 今回はそのくらいで様子見しよう。





 内心で、選びようもない品ぞろえの少なさに愚痴ったり迷ったりしてる間に、あっさりと買い物は済んでしまった。


 買ったのは、いつもの塊パンの四角版みたいな乾パンどっさりと、時代劇の旅人が着てる合羽みたいなやつだけだ。

 乾パンは身が詰まってて重い。一個で腹いっぱいになりそうだ。

 短いマントは首で紐を括る簡単なもので特に水気を弾くといった加工はなく、シャツよりは硬くて厚みがあるくらい。

 暑くなれば腰にでも巻いてりゃ邪魔にならないだろう。


 ほんと短時間で済んだから、ちょっと魔法おやじんとこ寄っていこうかと思ったけど、今行くと絶対話が長くなるよな……クロムの事とか、他に聞きたいこともありすぎる。

 そんなわけで毒姉が報告するのを待つことにして、今回はスルー。


 まあ、旅の準備はもういい。

 午後にやりたかったのは買い物だけじゃないんだよ。


 荷物をモヒ家に置いて、再び外出。

 そのまま森の中を、表門方向に歩いていく。


 そして何気なく始まるお喋り。

 半モヒに黒川の前で取った謎行動について尋ねていた。


「なぁ、なんで闇川に頭刺した」

「あ、これっスか。調査用に仕込んでるんスわ」


 え、仕込む? ただ髪逆立ててるだけじゃないのか。

 何も埋まってるようには見えないが。


「なんで、わざわざそんなところに」

「肩当てとかだと邪魔っスからー」

「そういう問題か」

「とっさにがちゃがちゃ道具出せねっスし、こういうもんは直感的に使えねぇと」


 合理性を突き詰めてアホになる典型見本市だな。


「その、道具? どこにあんだ」

「これっス」


 がさっと無造作にトサカへと指を突っ込んだ半モヒが、短めの針金っぽいのを摘んで引っ張り出した。しなるけど、柔らかくはなさそう。


「お前、どこまで改造してんの」


 生体パーツは残っているのだろうか。


「へへっ、つい凝っちまって」


 照れくさそうだが自慢げだ。感心したわけじゃないんだが。

 こいつ全身の魔法具外したら、それだけでかなり身軽になりそう。

 魔法具は高ランク冒険者のステータスみたいなもんらしいが、俺には縁遠いのぅ。

 どんどん必要性もなくなってきてるし、便利で楽だけど少し寂しいもんがあるな。




 そんなことを駄弁りながら、しばらく歩けば木々が途切れ、視界が開ける。


 ふよ~?


「いきなり攻撃!」


 ――パキャーン!


 よし、もうただのコップに憎しみを込めるのも容易いぜ。


 というわけで目的地に到着。

 さっき毒姉に聞いて許可を得たのは、ゴブ塚の原因の調査だ!



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