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第108話 繋がりつつある点

 全ての発端となるのは、クロムが開発した大魔法。

 でもそれは、人の目にも明らかになった状態という意味だと俺は思っている。


 その魔法を形にするのに、魔法おやじがこっそり目を付けていた異常な場の力を利用した。

 それが場に力を与えたのか、それとも別の力を引き寄せたのかは分からない。

 とにかく、大きな力を生み出す切っ掛けとなったのは間違いないと思うんだ。


 そこで知ったのは、この街では、過去に天然記念物と呼ばれる異次元への大きな扉が開かれたことがあるということ。

 魔法団が押し返して、人類は平和を取り戻した。


 でも、穴は閉じられたというんだが、傷口は残るように思うんだよな。


 ちょっと気になるのは、どこに開いた穴の向こうも同じ世界らしいということ。

 俺は異世界だと思ったけど、実は、星の裏側の可能性だってある。

 まあ、ここが惑星なのかと言われると、お空の三大妖精さんの存在がそう思わせてくれないわけだが。


 そういえば異世界ではなく、異次元と呼ぶ由来を細かく聞いてみたら、この世とは元になる理からして異なる次なる空間というような意味らしい。

 そういう意味では、クロムの反応からしても、完全に異なる別世界という認識ではないのかもしれない。

 そんな中途半端な異界との接触があるからこそ、俺が異世界産だって理由を上げ連ねても、信じる方に傾いてくれないんだと思う。

 俺からすれば、そんな事象があるからこそ、別世界に繋がる理由になり得ると思うんだけどなぁ。


 意見の相違は脇に置くとして。

 空間に歪みができたのはクロムと俺の双方にとっての事実だ。

 そして、一度歪められた箇所が弱い部分になった、というのは考えられることだろう。


「というわけでだ。そこに様々な要因が重なった結果、想像以上の力がピンポイントに働いて、行き場を失った衝撃が、なんと地球の俺の目前にまで突き抜けてしまったのだ!!!」


 どうよ、それっぽくまとまってね?

 一息に推測を吐き出し、汗を拭う仕草と共に爽やかスマイルをクロムに向ける。

 気が付けば熱く語っていたのだが、クロムの顔に「キャーステキ!」といった感嘆の色は微塵も見えなかった。


「意味不明。狂人の戯言に付き合ってたら移るっていうし、ここらでやめておくべきかなぁ……」

「失礼なこと丸聞こえで言うな!」

「だって、わたしが聞いたのは、わたしがどう関わってると思ったのかよ? もしかして、そのあれこれ一点に負荷がかかったところに、わたしの闇魔法が関わってると言いたいのかと思ったけど、結局どの時点の事かも分からないし……」

「あ、そうだったそうだった。どの時点か、ね……」

「まさか、考えてないとか言わないよね」


 手でちょっと待ってとお願いし、考える。

 クロムが目に見えてでかい魔法を放ったのは、俺も見た二回目と三回目だ。

 一回目は試し打ちで、荒野に魔法跡が残っているだけだったというやつ。


 でも、当然ながら、それだけじゃないだろう。

 魔法団に新魔法として申請してたくらいなんだから、形になるまで、試行錯誤してるはずだし。

 あ、でも安定しないとか言ってた。

 それで妖気や妖精素材、効果の安定し易い場を探したのか?

 俺が信じるキーポイントは、俺が転移した時点だ。

 そこに近い時期で、クロムの行動が、この街を取り巻く不穏な要因にどう関わるかだよな……。

 クロムは試し打ちする直前で、魔法団は不審な場を発見していた時期。

 不審な場の力に、すでにクロムは触れていたと思うが。


「なぁ、クロムが、この変な場に気付いて利用したのって、荒野で試し打ちする前じゃないか?」


 疑うような眼差しを向けられたが、真面目に考えてくれているようだ。


「そう、かも。ううん、その通りかも。やっぱり、あなた、本当は色々知ってるのに、わざと隠してるんじゃないの?」


 なん、だと……?

 これは、俺目立ちたくない系の主人公に見られるチャンス!?

 ならば多くを語る必要はない。

 ふっ、と意味ありげに笑みを浮かべてみた。


「気の迷いね。そうそう、魔法の成功率が低かったから、あれこれ材料を変えたりしてたのは確かよ」


 くそっ、カリスマ値が足りなかったか!


「そ、そう。なら俺の推測も結構当たってんじゃん?」

「……そこは、否定できない。じゃあ、あの時かな。荒野で試す前に、この黒森の、もっと街から離れたところで試したの。少し良い素材を使ってみたりね。試してる内に、完全に安定したって手応えのあったときがあって」

「おお、離れてても黒森内ならありえる!」

「今となっては、素材の配分のおかけではないと判明したようなものだけど……」

「でも、多分それだろ! その時に、変な場と強く繋がっちまったんだよ」


 固着したというか、言い方は分からんが、その時にクロムの魔力の癖に書き換えられたんじゃないか?

 未だ繋がりがあるからこそ闇川は、クロムを通して同質の魔力をまとってる俺の体にも、馴染んでしまったと考えれば辻褄が合う。


 あともう一押しで、クロムを納得させられそうなんだけどなぁ。

 この際、俺が異世界産であるとごり押しするより、異空間から引き摺りだされた可能性に持っていく方がいいかも。

 ……できれば天然記念物とは無縁の場所としてだけどな。

 よし、その線で考えてみるか!


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