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第107話 闇綿菓子に縋る

 疲れて地面に座り込んでいた俺とクロムだったが、クロムが気を取り直して背筋を伸ばす。

 ちなみに、クロムは地に落ちても闇座布団のままだった。

 そこから、ぶわっと風が渦巻いて、闇と埃が舞う。

 よく見ていたら、浮力を得るために風を起こすというよりは、何かの闇魔法を座布団下に起こした力で持ち上げてる感覚があった。

 以前には分からなかったから、闇川から得た力によって強化された肉体によって、より詳細が掴めるようになったということかな。

 それでも、やっぱり、特に闇属性だからという理由が大きそうだが。


 どっこいしょと俺も立ち上がると、ゆっくり浮かんだクロムの目線と、ちょうど合う。

 やっぱさ、普通に動いた方が早くね?


「と、とにかくね。一度、報告に帰ろう」

「それは、そうだけどさ。俺の話は」

「異世界がどうとか本気で言ってるなら頭を疑うところだけど……今は目をつむってあげる。できれば、妄想無しで、この異様な場についての意見を聞きたかったのだけど」

「だから本気ですぅ!」

「あーあー聞こえなーいー」


 くるりと座布団を翻してクロムは去ろうとする。


「まずは、魔法団に戻らないと……わたし、調べてみるから」

「え!? ちょっと待て!」


 戻ろうとするクロムを慌てて呼び止める。


「魔法おやじに言っちゃうのかよ!」

「きゃー! 掴むな! 言えるわけないでしょ!」

「え、そうなの?」


 闇座布団に縋りつこうとしたら、掴んだところから千切れてしまった。

 意外と固形物なんですね。

 手に残る綿毛のような闇の塊が、何かを思い出させる。


「食べようとするなー!!」

「おっと、ついつい」


 繊維具合が綿菓子に見えたもんでな。

 クロムに闇触手で頭を叩かれるが、当然のようにつるっと滑って当たらない。

 こんなところは、強化前と変化ないな。

 邪魔をされずとも、残念ながら口に入れる前に、すっと消えてしまった。

 魔力を魔法という形に変換したものなんだよな、これも。

 維持できなくなれば元の魔力に戻るということなのかな。

 意味はないと思うが手を叩いて埃を掃う。


「……一々あんたの非常識な行動に付き合ってたら、身が持たない」


 ぶつくさ文句を言いながらもクロムは、すでに俺のことなんか頭にないように、ふらふらと移動していこうとする。


「だから待てって。なんで報告できないんだ?」

「なんでって……」


 目が泳いでいる。


「わけが分からなすぎるし……色々起こりすぎっていうか」

「あー、クロムの知ってる感触の場だったからとか? また怒られそうだよな」

「なっ! そ、その通りだけど、なんでそんなところは当てるのよ……それより、あなた自分の言ったこと理解してるの!?」

「え、天然記念物? それも、なんのこっちゃ知らねぇし。多分、俺は違うぞ」

「多分とか、なに胸張って言ってんの!」

「まあまあ落ち着こうぜ」

「あんたと話してると、はらはらするし心臓に悪いの!」

「どでかい魔法ぶっ放して住民を脅した上に魔法団員を煽るような奴が気にするほどのことかよ」

「違うし! 住人に危害を加えないよう気を遣ってたし! 魔法団との対立は、団内の問題だし!」

「俺は団員じゃなかったですけどぉ」

「紛らわしい現れ方するからでしょ! はっ、こんなことしてる場合じゃない」


 また無駄な言い合いをしかけたことに気付いて、クロムは帰り始める。

 もう俺も引き留めずに、渋々と横に並んだ。


「おやじに報告しないなら、どうすんだ?」

「魔法団の資料庫にある文献を、もういちど浚ってみようとおもって。近い件があるかもしれないし。それからなら、落ち着いて考えられるというか、考えざるを得ないというか……」

「目、泳いでっから。また自分のせいだと考えてるなら、原因はクロムじゃないと思うぞ。まあ、影響がないとは言わないけど」

「魔法のこと知らないっていうわりに、力量はちぐはぐだし、変なことするけど。今度は何に気付いたの。はっきり言ってよ!」


 これ、相当てんぱってるな。

 別にもったいぶったつもりはないんだが、ちょっと悪い気がしてくる。


「あんまツッコミ入れずに聞いてくれるならな。俺は、俺の信じている前提を元にしか考えてないから」


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