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プロローグ
細やかな光すらない、新月の夜。自身の周りから漂う鉄の臭い。広がっていく液体の中心にいる、最愛の貴女。
私は、その貴女を膝をついてる抱き締めた。口から出るのは嗚咽ばかりで、言葉にならなかった。
「ごめんね、貴方との約束果たせそうにないわ。」
その貴女の言葉に私はやっと、こえを絞りだした。
「すまない。間に合わなかった。」
腕のなかにいる貴女は安らかな顔で、最後の言葉を紡いだ。
「誰よりも愛しているわ。どうか…生きて。」
私のこころは完全に闇の中に沈んでいった。