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彼女ガーディアンプロジェクト  作者: 三浦サイラス
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第13話 彼女に誓うイベント

 「ほとんど……って、つまりそれは――――」

 「そうだ。ごく少数ながら災厄獣は生きている。お前が倒したので二十一体目だ」

 「……マジかよ」


 その事実に司は驚きを隠せなかった。唯から聞いていた説明の中で、その事実が一番衝撃だった。


 「この地球にはまだ脅威が残っている。あの日からずっとな」

 「……姉ちゃん達はずっと戦ってたのか? あのヴァインってロボットと一緒に」

 「私はサポートしているだけだ。実際に戦っていたのは百合だよ。ヴァインに乗ってデスディスルシステムを起動させて――――――ずっと戦ってもらった。無理矢理な」

 「無理矢理?」


 司は百合が説明に出てきたエルポノルユーリなのだと内容から察した。


 百合という名前はそこから取ったのかもしれない。そういえばバルビルシグナスという単語の中にシグの二文字がある。きっとシグの名の由来も百合と同じなのだろう。


 「さっき説明しただろう。デスディルシステムは百合に大きな負担をかける。本来なら何度も使っていいシステムではないんだ。あくまで緊急用。それを何度も使えば――――――百合は傷ついていく」


 そう言う唯の表情は悲痛に歪んでいた。


 「百合は傷つくって…………パイロットは? 災厄獣がやってきた十二年前ならともかく、今ならパイロットを探して確保する時間は十分あるだろ? どうしてまだ緊急システムなんかに頼ってるんだよ?」


 それは至極真っ当な質問だった。


 今はもう災厄獣がやってきた時と状況は変わっている。当時いなかったパイロットを探す事は容易なはずで、もう百合に負担をかける必要は無いはずだった。


 「…………適任者がいないんだ。ブレイブヴァインのメインユニットであるヴァインに乗る事のできる者がな」


 答えにくそうに唯は言った。


 「いないって……操縦者になるのって、そんなに難しいのか? オレでも――――」

 「――――難しくなってしまったんだ。おそらく、この地球で操縦者になれる者はほとんどいない」


 オレでも操れたのに、と続けようとした言葉を司は飲み込んだ。


 「いなくなって…………しまったんだよ」


 気づけたのは姉弟の付き合いがあったからだろう。僅かに起伏として見えた唯の負の感情に司は気づいたのだ。


 悔しげで、腹立たしくて、不本意で――――そんな様子が唯から見てとれた。


 きっと、操縦者探しについては大きな問題があったか、もしくは起こったのだろう。それ以上は何も聞かない方がよさそうだった。


 「なのでロンバルディ社はお前を求めている。ヴァインを動かす事のできた篠々木司という存在を」


 唯は深々と司へ頭を下げた。


 「ね、姉ちゃん何やってんだよ!?」

 「頼む。私達にはお前が必要なんだ。どうか百合の助けになって欲しい。ヴァインに乗って災厄獣を倒して欲しい。私にできる事があれば何でもする。だから頼む」

 「やめてくれって! そんなの全然姉ちゃんらしく無いじゃんか! 頼まれなくてもするって! 手伝うからさ!」

 「…………本当か?」

 「本当だよ。まさか姉ちゃんに頭下げられる日が来るとか寒気がするぜ…………」


 唯は司の知る限り、頭を下げる所か人に頼み事だってしない人間だ。


 基本スペックが高い人間であり、誰かに頼る必要が全然無いのだ。一人で大抵の事は解決してしまう。

 してもらう事はあっても、してあげる必要が無い。


 それが司の知る篠々木唯という人間だ。だから、そんな人間が頭を下げるのを見るに、相当にパイロット探しは切羽詰まっているらしかった。


 「操縦者になるよ。オレなんかで良ければさ」

 「……ありがとう。恩に着る」


 「姉ちゃんから恩に着られるなんて……なんか怖いな。つか、礼とか言われたの初めてな気がする……」


 それに、ブレイブヴァインの力になれるのは司にとって名誉な事だった。大好きなブレイブヴァインに尽くせるのであれば、何だろうと断る理由は無い。


 「ふむ、つまりこれで司は正式に我らの仲間になったという事だな」


 シグがフヨフヨと司のそばへ寄って来る。


 「篠々木司、私はお前を歓迎しよう」


 シグは手(手と言っていいか不明だが)を差し出し司は握手する。強く握ると手を潰してしまいそうなので、握手というよりも触ったという方が正しかった。


 「すみません司さん………………本当に…………」


 申し訳なさそうに百合は言う。


 パイロットになる事は災厄獣と戦うと言う事で、百合は不安に思っているのだろう。死ぬかもしれない戦いに巻き込んで喜ぶ者などいないはずだ。


 (この子が…………あの時、オレを救ってくれた張本人なんだよな……)


 十二年前命を救い、後の人生を大きく変えるきっかけを与えた英雄は、司の心臓をドキリと鳴らす可愛らしい女の子だった。


 「……………………」


 ――――この女の子の背中に人類はどれだけの命運を背負わせたのだろう。


 その事に司はどうしようもない後ろめたさと途轍もない凄さを感じた。


 戦い抜くのは辛くなかったのだろうか。全てを背負うのは耐え難くなかったのだろうか。人類存亡の圧力に晒される事から逃げたくならなかったのだろうか。この星に味方になれる存在がいない事に寂しさはなかったのだろうか。


 こんな華奢な体で――――――――それらと百合は戦ってきたのだ。


 (力になれるのなら…………こんどはオレが…………必ずオレが…………!)


 そう思うとふつふつとやる気が沸いてくる。どんな事があろうと必ず力になるのだと、司は心の底に強くその意志を刻みつける。


 それが恩人にできる最低限の礼儀だ。


 「えと……百合さん……って呼べばいいかな。恥ずかしいけど」

 「百合でいいですよ。呼び捨ての方が気が楽ですから」

 「じゃあ……えっと、百合」


 少し顔を赤くしながら司は言葉を続ける。


 「オレさ……ずっと何か自分にできる事はないかって思ってたんだ。恩返しがしたかったんだよ。助けてくれた大好きなオレのヒーローに」

 「え…………」


 それを聞いて百合の顔がボッと赤くなる。司は言ってから「しまった」と顔を歪め、慌てて言った事の訂正をした。


 「ああ違うッ! そ、そういう意味じゃなくて! いや、そう意味でもある――――じゃなくて!」


 小さく深呼吸をして司は自分を落ち着かせる。


 「ブレイブヴァインの力になるのはオレの夢だったんだよ。それがパイロットになって一緒に戦えって事なら、こんなに嬉しい事は無い」

 「そ、そんな……恐縮すぎます……」

 「百合を助けたいって思いはオレの本望だ。だから……その、あまり悲しそうな顔しないでよ。オレは大丈夫だからさ」

 「……はい」


 ぎこちない言葉だったがきちんと伝わったようで百合はコクンと頷いた。まだ顔が少し赤いが、これは司が言った事に対する照れ臭さのようだった。


 「では……またお願いしますね司さん」

 「ああ、任せてくれ」


 ドンと胸を叩く司を見て百合はニコリと笑った。


 「………………」


 司はそこにあった僅かな陰りを見逃さなかったが、あえて気づかないフリをした。


 まだ自分の知らない事はある。きっと何か隠されている。


 だが、それが何だというのか。


 司はずっと十二年前助けられた恩を返したいと思っている。その知らない事が何であれ、それを反故したくなる程のモノとは思えない。


 パイロットを否定する気にはなららず、司はこれから百合の力になる事を光栄に思い胸を高鳴らせた。

 そこに私的な好意がある事も認めながら。

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