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彼女ガーディアンプロジェクト  作者: 三浦サイラス
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第1話 人類滅亡のイベント

人類が滅亡するのは時間の問題となっていた。


 「ハァッ……ハァッ……」


篠ヶ木司(ささがきつかさ)は森の中を逃げ惑う。


今年で四歳を迎え、本来なら幼稚園に通っているはずだったが、そんな安寧の日など司には無い。何処へ行こうとも現れる“敵”から逃げ続けなければ殺されてしまうのだから。


 災厄獣。


 その名で呼ばれるようになった外宇宙生命体の侵略により、人類に安息の日々は無くなってしまったのだ。


 災厄獣が突如として地球にやってきた理由はわかっていない。


 だが、人類にとってそれは大した意味を持っていなかった。重要なのは現れた災厄獣をどう全滅させるかであり、この未知の外敵に対して何が有効であるのかという事だった。


 しかし、現れた災厄獣達は各国の主要基地を恐るべき速さで破壊し尽くし、人類の持つ兵器のほとんどは使う前に災厄獣に破壊されてしまう。


 何らかの統率による無駄の無い動きと、その圧倒的物量は間違い無く脅威であり、人類の誰もがその侵略者に恐怖した。


 その後、災厄獣は攻撃手段を無くした人類を、ゆっくりと料理をするように殺戮していった。特に主要都市は第一の標的とされ、多くの命が奪われていった。


 災厄獣が現れてから、もう十億人の命が奪われている。


 最低でもビル程度の大きさがある災厄獣に、兵器の無くなった人類に刃向かう術は無い。


 ただ、殺されるしか選択肢は残されていなかった。


 「ハァッ……ハアッ……ハァッ……」


 災厄獣は人が何処にいようと必ず察知する。そのため、逃げる事はできても隠れる事はできず、人類は毎日休まらぬ日々を過ごしていた。


 それは酷く残酷なゲームように。


 「ハァッ……ハァッ……ハァッ……ハァッ……」


 そう、逃げなければならない。


 それ以外にやれる事など存在せず人類は逃げ続ける。


 災厄獣への絶望、恐怖、憎悪で心を染めながら。


 「ぐうう……ううう……」


 逃げ続ける司の肉体と精神は、もう限界を迎えていた。


 街に災厄獣が現れた事による混乱で父親と母親とはぐれてしまい、手をずっと握ってくれていた姉とも離れ離れになってしまった。もう家族が何処に行るのかわからない。


 「うっ……うっ……うう……」


 司はたった一人、何処とも知らない森の中を彷徨っている。


 どうして自分がこんな場所を歩いているのかよく覚えていない。


 ただ、五つ目の避難所に逃げても意味はなかった。覚えているのはそれだけだった。


「もう……もう……いやだ……よ」


 地面にそのまま倒れ込む。


 司はもっと遠くへ逃げなければならない事は理解している。だが、周囲に家族も友人も誰もおらず、食べるモノも無く、たった一人行く当ても無く、安心して休める場所も無いのでは、その気持ちが折れるのも無理はなかった。


 「もういやだ……もういやだよ……いやだよ……」


 まだ夜は遠くとも、孤独は司の心を締め付け生きる力を奪っていく。


 「誰か……誰か助けて……」


 流れる涙は止まらず、精神にすり寄ってくる無限の闇に、司は助けを求める。



 誰でもいい。この地獄から自分を救って欲しい。



 それだけをひたすらに願う。


 「…………あ」


 だが、それは許されなかった。


 地響きと共に、司の目の前に二体の災厄獣が現れたからだ。


 「…………う……ああ」


 毒のような紫の霧を背中から吹き出す巨大な蠍の災厄獣と、ビル程度なら一口でかみ砕いてしまいそうな大きな口を持つ顎の災厄獣が現れる。


 無機的である機械の外見を司の前に晒し、部位が動くたびに聞こえる金属音が、司以外誰もいない山の中響き渡った。


 「………ああ…………ああ……」


 この外見、これは全ての災厄獣に見られる絶対的な特徴だった。


 災厄獣の姿は数多くのパターンがあるが、その外見は全て金属的特徴を持っているのだ。


 故に、その巨大な姿も相まって災厄獣の姿を見間違う事は絶対に無い。


 「あ……ああ……あ……」


 司は襲い来る恐怖で気が狂いそうになった。


 身体は震え全身から水を垂れ流し、この現実から目を背けたいと意識は懸命に訴える。


 気絶でもできればよかったのだが、司の精神はヘタに頑丈でそれを許さない。


 「ああ……あ……あ……」


 災厄獣が攻撃すれば当然即死だ。


 しかし。


 「…………………………え?」


 その死は――――――――突如現れた英雄により上書きされる。


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