予言ノート
思いつきです。
俺は普通の高校生だ。
今年高校に入ったばかりで、運動は得意じゃ無いが苦手でも無く、勉強は大体平均より出来る程度の普通の高校生。それが俺だ。
今日も面倒だった学校が終わり、独り家に向かって歩いていた。
俺が家の前まで来ると、家のドアの前に何かが落ちていた。
近付いて見ると、それは真っ黒な一冊のノートだった。
「何だこれ?」
俺はノートを拾って開いてみたが、中はどのページも真っ白で、何も書かれていなかった。
そこで俺は、もう少しで地理のノートが終わりそうな事を思い出す。このノートは汚れている感じもしないし、誰かの名前も書かれていない、丁度良い。俺はノートをもらう事にした。盗みでは無い。落ちてたから拾ってもらっただけだ。
俺は自分の部屋に行き、ノートを机に置いた。
そしてそのまま普通に夕食を食べ、風呂に入った後に寝た。
翌日。
俺は今日使う教科のノートやら教科書やらをバッグに入れて、部屋を出ようとした時、風も無いのに真っ黒なノートが勝手にペラペラとめくれた。
「何だ?」
俺は開かれたページを見てみた。
〇月×日
登校時、車に轢かれて死ぬ。
そこには、今日の日付と、その文字だけが書かれていた。
俺はこのノートには昨日机に置いたきり触ってなどいないし、ノートには何も書かれていなかった筈だ。それにこの意味不明な文章。
俺は気味が悪いと感じながら、家を後にした。
いつも通りの道を通って、横断歩道を渡ろうとする。
ふと、ノートの言葉を思い出した。車に轢かれて死ぬ。
馬鹿馬鹿しいと思い横を見る。すると、信号を無視して突っ込んで来る一台のワゴン車。
「は!?」
俺は急いで前に走った。
ワゴン車は、さっき俺が居た所を通り過ぎて去って行った。
もし、俺が横を偶然見なかったら今頃……。
ドバッと、冷や汗が全身から流れ出る。
俺はその場に力無く座り込んで、心の声が漏れた。
「……何なんだよ」
その日からだ。
毎日ノートには、日付と起こる出来事が書かれていた。
俺がノートを捨てても、翌日には机の上に元通り。
燃やしても元通り。そして、ノートに記されている事は確実に現実になるのだ。そしてノートの内容と言えば、俺が死ぬ原因となるものばかりだ。俺に残されたのは、ノートに書かれた事に注意しながら過ごす事だけだった。
〇月×日
鉄骨が降ってきて死ぬ
〇月×日
ガス漏れで家が火事になり死ぬ
〇月×日
トンネルが崩れて下敷きになり死ぬ
まるで呪いのように繰り返される死の宣告にうんざりして来た。
ノートを拾って今日で三ヶ月だ。
俺はベッドから出て、何時ものようにノートを確認する。
ノートには珍しく長文が書かれていた。
〇月×日
貴方は今まで良く頑張りました。
今日まで死ななかったのは貴方が初めてです。
おめでとうございます。
なので、貴方に敬意を表して、今日で死の呪縛から解放してあげます。
「……本当か!?」
俺は独りで歓喜の声を上げた。
信用して良いか分からないが、ノートが嘘をついた事は無い。
俺はとてつも無い解放感に安堵の息を溢す。
俺はもう一度ノートを見た。
「……あれ?」
良く見ると、次のページにも文字が透けて見えた。
俺はノートをめくって見る。
そこには、短く一文。
貴方は今日必ず死にます。
「――――は?」
それが、少年の最期の言葉だった。
お疲れ様でした。




