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誇りある失恋

作者: ぼけなす

初めましてぼけなすです。

衝動的に書いた拙い文章の短編ですが、とにもかくにも失恋です。


しかし惨めというわけではなくどこか男らしい――――という風に書いたつもりです。楽しんで読んでほしいのが自分の願いです(笑)


 俺こと相良宗助には小さい頃から恋慕している女の子がいる。

 名前は川上美紀。黒の長髪で才色兼備という言葉を常備している女の子だ。性格は明るく前向き。

 学校の人気者ということだ。


 小さい頃から俺は彼女のことを知っている。よく家に遊びにいったし、イタズラもした。そう、所謂幼馴染みというヤツだ。


 いつも一緒にいた。

 いつも会話を交わした。


 彼女を意識したのは、中学生の頃だったかな?

 まあ思春期真っ盛りな時期だし、彼女と恋仲になったという妄想もよくしていた。


 恋することに時間はかからなかった。


 そんな彼女に俺は今日こそ、告白しようと決意していた。

 夕陽が見える教室で、いつものように彼女は何かを必死に書いていた。最近、手紙を書いているようなのだが俺は気にしていなかった。


「よ、美紀。いっつも何書いてるんだ?」

「ちょ、見ないでよ!」

「いいじゃんいいじゃん! 何々……――――え……」


 『あなたのことが好きです』


 そう書かれていた手紙――――ラブレター。俺に対してでなく、中学の同級生で親友の田中陽一に向けてだ。


「返してって!」

「あ、ワリ……」

「もう、人の一世一代の告白を邪魔しないでよ」

「……ごめん」


 俺の落ち込んだ感じに美紀もやや怪訝な顔をする。踏ん張れ、と無理矢理笑みをつくっていつもの調子で聞いた。


「まっさか、あの美紀が陽一の好きだったとはなぁー」

「悪い?」

「いんや。意外。あいつって大人しい雰囲気だし、美紀の好みじゃないかと思ってたから」

「確かに好みじゃないわよ。でも、彼は優しいわ。よく、私の愚痴を聞いて励ましてくれたから」


 顔を紅くしながら、俺が知らない彼女の表情を今見せてくれた。

 それをどうして俺にも、俺だけに言わなかったのか。

 不満があるなら言ってほしい。幼馴染みだろ。


 と嫉妬しているわけだが、なんとか堪えて、俺は美紀に聞いた。


「ホントに好きなんだな……陽一のこと」

「ええ! 大好きよ!」

「そっか……」

「ねぇ、もしかして陽一くんって恋人とかいたりする?」

「いないって本人は言ってたぞ。やったね美紀ちゃん! 優良物件ゲットだぜ!」

「そうなの? よかったぁ」


 ズキンズキンと胸が痛い。心臓が張り裂けそうだ。

 でも俺は笑う。笑みを浮かべる。道化を演じる。


 いつもの俺で演じることで、彼女を不安にさせたくなかったから……。


「あ。そういえばあいつ、今が部活が終わる時間帯だから、それを渡してこいよ」

「え、そ……それは、ちょっと」

「おいおい。いつも明るく元気な美紀ちゃんが尻ごんでどうするんだよー? というか、あいつ。同じ部活メンバーの女の子に慕われているから……あ。これは奪われるかも?」

「なんでそれを早く言わないのよ!! あぁもう。渡してくるわよ!」

「応、がんばれよーん」


 彼女は顔を紅くしながら、教室から出ていった。まあ、さっきの話はデマだ。

 後輩には慕われているけど、恋慕ってわけではない。むしろ、陽一もまた美紀のことが気になるって言ってたし。


「……失恋、か」


 なんで早く告白しなかったのだろうか。

 なんで早くこの想いを伝えなかったのか。


 なんで、俺は臆病に……。


「あれ……。涙が止まらねぇ……」


 流れる目の雫は止まらず、夕陽の光で赤く輝いていた。











「なんじゃい。辛気くさい顔をして」

「……ほっとけ」


 失恋してから数日後、美紀は陽一と恋仲になった。陽一も美紀のことが好きだったため、両想いとなってめでたく学校一のカップル化。

 俺との交流も少なくなり、陽一の話題が多くなった。


 ……それを聞く度に、陽一に対してドロドロとした黒いモノが渦巻く。

 そして同時に親友に対してなんていうことを……という自己嫌悪に陥る。


 そんな悪循環を繰り返していくうちに元気がなくなるのは当然だって。


「失恋した程度でウジウジするな」

「あれ、なんでわかったの? じいちゃんってエスパー?」

「たわけ。ワシがエスパーだったら世界中のジジイがエスパーじゃわい」


 相良正彦こと俺のじいちゃんはここの病院で入院している。風を拗らせて、なんでも肺炎になりかけたから入院したらしい。


「ワシの初恋もこんな感じじゃったわい」

「そうなの? じいちゃんも」

「ばあさんに出会う前のワシは幼馴染みが初恋じゃった。けれど、アヤツは良家の許嫁がおったし、結婚したという報告が届いたとき、ワシはお前のようになったわい」


 けど、とじいちゃんは続けていった。


「アヤツがある日を境にして、自殺したじゃ」

「え……」

「好きな人がギャンブル好きでろくでなしじゃったからのぅ。心労で病んで自殺にはしったということじゃな」


 重いってじいちゃん……。でも初恋の人がこんな形で奪われるなんて、失恋どころか悲恋じゃん……。


「もし、あのときワシが告白していたら……と何度も思ったわい。後悔して、後悔して、やっとワシは前を向こうと思ったのじゃよ」

「それは……なんで?」

「アヤツの手紙じゃよ。『あたしのようにならないで』と書かれた手紙をな。じゃから、ワシはやって後悔した方がいいと思うようになったんじゃ」


 初恋の人はじいちゃんのことが好きだったらしい。

 その人とじいちゃんはお互い勇気を出せず、臆病のまま流されて、結局、あんな結末になったんだ。


「宗助、お前はどうしたい?」

「どうしたいって……」

「その想いを告げず、ずっと抑え込んだまま生きて後悔していくか、はたまた……。まあ、全てはお前次第じゃな」


 全ては俺、次第……か。

 「カカカカッ」と笑うじいちゃんの言葉が俺はいつまでも頭の中に残った。


 ――――そして、その三日後。じいちゃんが亡くなった。

 肺炎が原因らしく、穏やかな顔で逝った。そのとき、俺はあのとき、じいちゃんにお別れの言葉と決意を言えばよかったと思った。


 じいちゃん……俺は決めたよ。











 じいちゃんが亡くなってから三日後。俺は美紀と陽一を屋上に呼び出した。


「急にどうしたのよ」

「美紀だけじゃなく、なんでも僕も……?」

「んー、まあすぐに終わることだからちょっと待っててくれ」


 二人が目を見合って怪訝な顔をしている。まあ、このカップルを屋上に呼び出した理由がわからないわけだ。

 さて、俺の心臓がとてもうるさい。


 緊張、不安、そして恐怖。

 今からすること――――いや、言うことはたぶん一世一代にして前へ進むための儀式。

 そして、これは――――



 俺は息を吸って吐いてを繰り返して、天に向かって叫んだ。











「俺は、川上美紀のことが!

好きでしたぁぁぁぁぁ!!」


 大音量で叫んだ内容に、二人はギョッとして、それから沈黙が流れた。そんな二人に俺は俯いてから、パンッと手を叩いて言う。


「よし! 俺の初恋終わり!

あー、スッキリしたー」

「えぇ!?」

「ちょ、いきなり何を言い出すのよアンタ!?」


 あまりの急展開に二人は戸惑っていた。まあ、恋仲になった二人に略奪愛するぜをしたものだし、無理ないか。

 陽一はあわあわしているし、美紀も困惑しているし、仕方ないので俺はわけを説明する。


「いやさぁ、俺って美紀のことが好きだったんだよねぇー。でも、陽一にとられたし、美紀も陽一のこと好きだし、モヤモヤしていたんだよね」

「いやだからってどうしてここで告白したの!? しかも陽一の前で!」

「どうしてってモヤモヤを晴らすため。あと、俺の初恋を終わらせるため」


 サムアップして答えると美紀は呆れたと言わんばかりに頭を手を当てる。


「……私のことが好きなの?」

「うーん、まあ友達として、かな?」

「いや、告白したじゃない。どうして友達なのよ。好きじゃないの?」

「好き『でした』、だろ。もうこの恋は過去形なんだよ。現在進行形じゃなくて、もうこの初恋は過去の思い出なんだよ」


 『好き』と『好きでした』。この二つの違いは現在進行と過去だ。

 俺の初恋は、俺の告白で終わりを告げた。そう、俺は俺の手で終わらせたかったんだ……この恋物語を。


「というわけで、美紀と陽一はこれまで通りにしてちょうだいな」

「いや、気まずいでしょ。だって……」

「あっそ。二人が気まずいなら別にいいよ。俺は気にせず話しかけるから」

「いやなんでアンタはそう平然としていられるのよ!」


 ヘラヘラと笑うと、美紀が怒鳴ってきた。なぜ自分は普通でいられるのかわからないだろう。

 愚問だな。なぜなら、


「俺と二人は友達。それ以外ないでしょ」

「友達だからこそ気まずいでしょ!」

「まあ、確かに普通は気まずいよねぇー。でもさ、そんな些細なことで気まずくなって、険悪になる友情なんて所詮その程度ってことだろ?」

「些細なことって……」

「些細なことさ。二人にとって俺の失恋なんて関係ない。告白なんて、最初から成功しない。だって、二人は好き同士だろ? なら、気にする必要はないさ。美紀は『ごめなさい』って言えばいいし、陽一は『人の彼女に手を出そうとするなよ』って言えばいいさ」


 「アンタ……」と美紀は何か言いたそうに。

 「宗助……君は……」と陽一は申し訳なさそうに。


 俺は失恋した。だけど、惨めで後悔するような失恋じゃない――――胸を張ってフラれた!と言える失恋をしたんだ。

 結局、俺は二人のことが大好きってことなんだよなぁ……。


「さーてと、俺は帰るわ。あ、そうだ。二人とも、お幸せに。二人が不幸になったら俺は許さないから」


 俺は手を振って背中を向ける。告白してフラれて、そして前に進む。

 俺は後悔せずに、前を進んでいくことができた。


「天国で見てるかじいちゃん。俺、スゲーだろ?」


 馬鹿者、とじいちゃんがいつものように笑ってる声が聞こえた気がした。


いかがでしたか?

宗助くんは報われない――――なんてことはなかったと思われます。なぜなら彼は最後まで胸を張って、フラれたからです。


失恋って何気に起きると誰だって落ち込みますよね。

極端な話をすれば失恋したら前へ進むか、いつまでも引っ張るかの二択です。

宗助くんは前へ進むためにあえて告白して、そしてその想いに決別しました。


これはできそうでできないことです。親友の恋人に告白するなんて、今後のことを考えたら気まずい関係になるか、はたまた絶交する危機もあります。なので、宗助くんのしたことはとても危ない橋でもあります。


けれど、こんな失恋は理想的ではないでしょうか。告白を言えないままで終わる恋物語は誰だって辛いと思います。だから、宗助くんの失恋は自分としては理想的で誇らしいことじゃないかなと思います。こんなふうな失恋はできたらいいなぁと思います。


……まあ、あくまでも自分の価値観ですけどね(笑)


長文な後書きでしたがありがとうございました。また何かを書こうとしたら投稿したいと思います。


では失礼!!



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