第4話:リフレイン
――Side Ayaka Tatibana
どういう関係なんだろう…
あの後、私と和人は無言のまま帰宅した。
その間、私はずっと和人の様子がおかしくなった原因を考えていた…いや、考えるまでもない…
春日琴乃。三年という珍しい時期に転校してきた…
彼女と和人の反応からして二人は知り合い…しかも何か分けありのようだ…
自室のベットに仰向けで寝転びながら、お気に入りの熊のぬいぐるみ『ミル』に話しかける
「ねぇミル…大丈夫だよね?」
返事があるわけでは無いが不安を打ち消すように話し続ける
「やっと…笑えるようになったんだし、もう昔みたいにはならないよね?」
中学時代に荒れていた理由の一つが彼女の様な気がしたのだ。
また…昔のようになってしまったら、どうしようという恐怖心があった…
時間は少し遡り、和人達が去った後の教室
――Side Kotono Kasuga
私は何をやっているんだ…
去り行く彼をただ見送るだけだった…なんの為に…私は此処にいる!?
全てを詫びるんじゃなかったのか!?
その為に転校し、彼に会いに来たんじゃないのか!?
自分に問掛ける。だが彼を前にしたら…何も言えなかった…
彼の名前を呼ぶ事さえ出来なかった…。今更、何て彼を呼べばいいのか分からなかったから…
昔のように和くんとは呼べる訳がない…。だからといって、氷室くんと他人行儀で呼ぶのも…拒絶してるみたいになってしまう…
「大丈夫だった?春日さん」
これからどうしようかと思案していると、クラスの男子が話しかけてきた。正直うっとうしいが邪険にする訳にもいかない…
「大丈夫です…」
「ついてないよな〜氷室の隣なんて」
「気を付けろよ…あいつ、根っからの不良だから…」
「不良?」
「ああ。最近は大人しいけど、中学の時は荒れに荒れててな。誰ともつるまずに一人で喧嘩に明け暮れて、病院送りにした人数は図りしれないっていう噂があるんだ。あの、銀の髪と誰ともつるまないスタイルからついたあだ名が『銀狼』だ。今でもその名を聞くと多くの不良が逃げたすんだぜ」
得意げに語る一人の男子生徒。
信じられない…。私が知っている彼は、強く、優しい…。不良なんてイメージじゃない…
「ったく、同じクラスかよ…ついてねーな」
「でも、彼、ちょっとカッコいいじゃない」
「やめときなって、今でこそ大人しいけどキレたら何するかわからねーんだぞ?」
私に何か忠告をしているが、頭の中に入ってこない…
彼が荒れた理由はひとつしかない…
私のせいだ…私が和人を…和くんを追い詰めたから…
思い出すのはあの雨の日の公園…
『和くんなんて大っ嫌い!!』
「----っ!」
どれほど、後悔したかわからない。この心にも無い一言で決別してしまった…
本当は大好きなのに…。もし、できるならあの頃に戻って私を止めたい。
過ぎた時間はもう戻らない…。
「春日さん気分でも悪いの?」
「顔色が悪いよ」
「転校初日で疲れたみたい…ごめんなさい。もう帰ります」
鞄を持ち、教室を出て岐路に着く。帰りながら私は何回後悔したか分からない。あの日の事を考えていた。
小学校5年の紅葉が始まりつつあった季節。その日が私と和くんの決別の日だった。
その頃、和くんはクラスの女の子に人気があった。ただでさえ人目を惹くオッドアイに銀髪。整った容姿に、運動はできるし、頭もいいし、優しい。人気が出ない訳がない…
家庭科の授業で作ったクッキーを渡してる子も居たし、バレンタインでチョコをあげてる子も居た。
そんな場面を見る度に、胸が締め付けられる様な痛みを感じた…。
そんな時、私は勇気を振り絞って映画に誘った…
「映画?」
「うん♪今、人気のラブロマンス!」
「ら、ラブ!?なぁ、せめてアクションとかにしない?」
「……嫌ならいいよ。一人で行くから…」
「別に、 嫌じゃないけど…」
「ホント!?じゃ、明日の十時公園に集合!」
「公園?駅じゃなくて?」
「駅は混むから見付けにくいの…だから公園」
「分かった…」
約束をして家に帰り、私は早速準備を始める。私と和くんとの初デート…。
「映画見て、ご飯食べて…ふふ…明日は二人っきり…」
「あら♪デート?いいわね〜」
明日の事を考えていると何時の間にか部屋にはお母さんが居た。
「お、お母さん!い、いつからいたの!?」
「ご飯できたから呼びに来たのよ…ノックもしたわ。返事が無かったから入ってみたんだけど、琴ちゃんがベットで悶えてるから…」
「も、悶!?へ、変な事言わないで!!」
「自覚してないのね…」
呆れたように言うとお母さんは冷めないうちに降りてきなさいとだけ告げ部屋から出て行った。
「で、明日の目標は?」
ご飯を食べていると、お母さんが楽しそうに聞いてくる
「目標?」
「ちゅーまでは行くんでしょ?」
その言葉に、私は飲みかけていた水を吹いてしまった。
「……行儀悪いわね」
「け、ケホ…ゴホ…お、お母さんが変な事を言うからでしょ!?」
「そんなに変な事は言ってないでしょ…ね♪それよりどうなの?告白とかは?」
「こ、告白!?」
「あら、しないの?もう、ぐずぐずしてると和人君取られちゃうわよ」
ふふふと笑うお母さん。その後も、散々からかわれ、今日の夕食は拷問のように感じた…
「まったく!お母さんたら…」
準備を済ませ、後は明日に備えて寝るだけだ。でも、お母さんの告白だのちゅーだの言ってたのが頭から離れない。
でも、楽しみ。だって、初のデートで映画だもん。もしかしたら…
ドキドキとわくわくでその日は寝つくのに時間がかかった…。
「最悪…」
デート当日、天気は雨だった…。予報だと一時止むらしいが、昼頃にまた降りだすらしい。計画が台無しだ…
「ベンチに座って、待ってようと思ってたのに…」
待ち合わせに公園を指定したのは、公園のベンチで彼を待ちたかったからだ…。でも…これじゃ座れない。
「まぁ…仕方ないよね」
気をとり直し、身だしなみをチェックをして、傘を持ち、家を出た。
「遅いな…和くん」
公園で待つが和くんは来ない。時間は既に十時を過ぎていた
「映画始まっちゃう…」
時計と公園の入り口を交互に見ながら、イライラは募る。
「琴乃!!」
待ち人が来たのは、また雨が降り始めたお昼頃だった…。傘も指さずに濡れている彼に気が付かず、私は何度後悔したか分からない台詞を言う。
「和くんなんて大っ嫌い!」
そう言って、私は呆然と立ち尽くす和くんの脇を走ら抜け家に帰った。
本当は大好きな癖に…。
「ただいま…」
家に帰ると、真剣な表情で電話をしているお母さんがいた。
「どうしたの?」
電話を終えたお母さんの様子が変だったので、私は聞いた。お母さんは暗い表情で…
「……和人君のお父さんとお母さんが事故で………」
私はこの時、初めて、和くんが遅れた理由を知った…
部屋に戻り私は泣いた。
悲しかったこともあるが、それよりも自分が許せなかった…
傷付いている和くんにあんな言葉をぶつけてしまった…
「少し考えれば分かるじゃない!あの、和くんが遅刻するなんて理由があるって!」
お葬式には和くんの姿は無く、学校にも来なかった。
それから暫くして和くんが引っ越し、転校したと聞いた…
更新!
和人「……コメデイだよな?」
あ、あはは…今回から数話はシリアスですな〜
和人「俺が出ていないな…」
ちょっとね、書き方とか変えてみた。そしたら巧く書けなくて…
和人「更新が遅れたわけか…」
…そうです
和人「読んでくれてる人がそこそこは居るみたいだから、期待を裏切るような事はするなよ…」
ど、努力します。
和人「それで次回はどうなる?」
そうだね〜次回辺りで話を進展させないと…四話なのにまだ学校は初日のままだし…
和人「そうだな…。では読者の皆様、次話でお会いしましょう」
感想を書いてくれてありがとうございます〜頑張りますので引き続きよろしくお願いします。




