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Rumble  作者: 久遠
37/38

第36話:それぞれの希望…今この瞬間を大切に

――Side Misuzu Kariya


面接を終え、正式に霞さんが我が光琳高校に転入される事が決まった以上。色々と手回しが必要だった。


「それじゃ、マスコミのほうはお願いね♪」


そのため、私は電話をしている。相手は愛娘


『OK♪でも、面白そうで良いなぁ…ねぇ、こっちも若い子とデートしたいなぁ』


「旦那いるでしょうに…ま、いいわ。じゃ、後で和坊を一日貸して上げる」


『やた♪絶対だからね!』


「はいはい」


ふぅ…まったく誰に似たのかしらねぇ…


『で、学校の方は大丈夫なの?生徒さん騒ぐでしょう?』


「そうね。でも何とか成るんじゃない?優秀な教師陣が居るし、苦労するのは私じゃないわ♪」


『うっわー。無責任〜。あ、ごめん。まだ仕事が残ってるからまたね。言われたことは早速やっておくからね〜』


「ええ、偶には食事でもしましょう」


最後にそう言って電話を切る。


「これでよしっと…ふふ、お膳立ては整ったわ。さて、どんなドラマを見せてくれるのかしらね…」




――Side Kasumi Misora


時間は少し遡る。


ボクの一世一代の告白…そして先輩の返事は…


「すまんな…」


「っ!?」


ふられた!?


泣きそうになる……その場を走り去りたい……


立ち上がろうとしたところで先輩が言葉を続ける。


「だが…俺は知っての通り、人に注目されるのは好きじゃないんだ。だから、お前の希望は叶えてやれない…」


………へ?


「そもそも、俺はそんなに上手くないぞ」


あれ?なんか話がおかしい方向に行っている


「せ、先輩?ぼ、ボクの希望って?」


「? 俺にギターのギターが必要で一緒に芸能界に入れって言う話じゃないのか?前にもそんな話があったじゃないか」


……ようするに


ボクは先輩自身が必要。つまり、告白のつもりで言ったのだが、先輩はギターとしての自分が必要だと勘違いしたらしい。



――Side Kazuto Himuro


霞の様子がおかしい…


俺の返答に泣きそうな顔をしたかと思うと、途端に俯き、肩を震わせている。


「霞?具合でも悪いのか?」


そんな俺の心配からの気遣いは…


「先輩の…鈍感!!馬鹿!!朴念仁!!アホおお!!」


霞の叫ぶような罵倒で返された。


しかし、声が大きい。流石歌手…腹式呼吸バッチリだね…




それから、妙に不機嫌になった霞の機嫌を取るため、霞の荷物を運んぶ。


部屋は俺の部屋の隣の空き部屋。掃除は時々やってるので綺麗なのだが…


せめて部屋は離した方がいいといったのだが、霞はそっぽを向き、まったく聞き入れず…

仕方が無いので仰せのままにした。


それが終わると夕飯の支度をする。


和風オムライスだ。正直、時間が掛かるのであまり作りたくなかったのだが、何時もより気合を入れて作る。


その甲斐もあってか、夕飯時にオムライスを一口食べた霞は笑みを浮かべている。


ほっとした…


食後のお茶を啜りつつ、俺は霞に問いかけた。


「んで、お前はこれからどうするんだ?」


はっきりと断った以上、霞は此処にいる理由は無いのだが、荷物を運び込んだことから本人は帰るつもりは毛頭無いらしい。


「ボクは諦めないよ。先輩を篭絡する…」


ろ、篭絡って…


「ま、まぁ。それは置いといて」


ジェスチャーをしながら…


「具体的にはどうするんだ?」


との、俺の問いに霞は含み笑いをするだけで教えてくれなかった。


まぁ、霞ももうガキじゃないし…あれこれ言うのもどうかと思ったのでとりあえずほっといた。


そして、残っていた美術の課題。色塗りをすることにした。霞先生が居るならよりよい絵が書けるだろう。


だが、それが誤算だった…


絵を見せると…


「わぁ♪ボクだぁ」


と嬉しそうにし…


「でも、なんで昔のなの?」


「それしか、まともにに書けないから」


その返答に霞は暫し考えて…


―ビリッ


「お、おい!」


絵を破いてしまった…


「駄目だよ。昔のままで満足しちゃ。ほ、ほら今のボクを書いてみて…前より上手に」


む、むぅ…嫌な予感がするぞ?


しかし、先生と生徒という立場になった場合、生徒である俺に逆らう術は無く、渋々、絵を書くことになったのだが…


「…何これ?先輩」


笑顔が怖いです…霞先生


「…………霞」


小声でそうもらすと、霞が持っていた筆が悲鳴を上げて圧し折れる。


「ごめん…聞こえなかったなぁ。で、何?」


「………腕鳴らしに宇宙人を書いてみた」


咄嗟にそう誤魔化す。


「お茶目だねぇ…先輩は」


微笑を浮かべそう言うが、目は笑っていない。


「先輩、今夜は寝かせないからね」


普通なら色々いい妄想を掻きたてられそうな、一度は言われてみたい言葉だがこのシチュエーションでは嫌な汗しか浮かんでこなかった…





翌日…


「やれば出来るもんだなぁ」


徹夜して書き上げた絵を見て、しみじみ頷く。


人間、集中すれば限界を超えた力が出せるようだ。


絵の中の霞は今の霞で、昔より笑みが魅力的。そして、アクセントとして翼を書いた。


昔の霞には無かったものだ…自分でもかなり綺麗な絵にしやがったと思うし、霞も嬉しそうにしていた。


だが、角は駄目で翼は良いのだろうか?霞の判断基準はよくわからない……


つか、徹夜なんて快挙をやってのけた自分が信じられない。


俺に付き合ったまま、リビングで寝こけてしまった霞を出来たばかりの霞の部屋のベットに寝かせて、片づけをし…俺も寝ようと自分の部屋に戻ろうとしたところで…


「かーずーとー!起きなさーい!」


元気良く、彩花さんが来てしまいました…あはは、ねみぃ


そしてそのまま登校する。


霞が居るとはいえ念のため鍵を掛ける。にしても羨ましい…


俺もねてぇ…



彩花との自転車二人乗り(運転手は俺)で登校したのだが、途中で何度か意識が飛び、居眠り運転となり、彩花に怒られ殴られた…


――Side Maki Midou


今日、私は一日中機嫌が悪かった…


朝のSHRから帰りまで一日中、氷室の野郎は寝こけていた。


あたしの投擲も寝たままで回避、または拳で迎撃し、恋や麗の授業でも起きる事無く死んだように眠っていた。


誰も…あの橘ですら氷室を起こすのを躊躇い、とうとう触らないようにという事で一日が終わってしまったのだ。


そして、寝ている状態でも攻撃が効かなかった事もあり、かなりの屈辱を感じていた。


そのまま進路診断が始まり、不機嫌だが職務はちゃんとこなして行き…


「あはは、ちっす」


ウチのクラスナンバー2問題児である常盤琢磨の番になった。


そして、希望調査には…


第一希望 ハーレム 俺様王国、野郎は知らん!


第二希望 ホスト  女の子といちゃいちゃ。


第三希望 進学   できれば女子大学。合コンしたい



とりあえず、チョークをお見舞いした。ダース単位で


「進学つぅ事にしとくぞ。だから、勉強しろ。正直、今のままじゃどこもうかんねーぞ」


復活した常盤にそう言って、家に帰した。



そして、本日の最後。都合が悪く、日程を変更した北條の番となった。


問題と言う問題は無かった。


成績も良く、北條財閥の跡取り娘は明確な未来のビジョンを持っていたから…


なのだが、本人の表情が優れない。納得していないのだと分かる…


「なぁ、北條。何を悩んでいるんだ?話してはくれないか?あたしじゃ力になれないかもしれないけど…楽になると思うぜ?」


その言葉に、俯いて暫く考えていたが北條はポツリポツリと語り始めた。



――Side Sayaka Houjou


進路…私の進む道は決まっていました…


用意された道…舗装され綺麗な道……


分かっていた。私は北條を継ぐのだから。お父様が選んだ優秀な方を婿として共に北條を支えていくのだと…


その事に不満は無かった。むしろ誇りに思っていた。だから、私は何事においても一番になることを目差した……


勉強でもスポーツでも…生徒会長となったのも人の上に立つという経験が欲しかったから…


でも…あの方に……和人さんに出会ってしまった。


最初は不快にしか思っていませんでした…


大した努力もせず、いつも私の上にたつ。


勝つために…彼に勝つために私は努力して……そのうち、彼を意識するようになって…



可愛い寝顔に、何者にも縛られずに…のんびりと気ままな所…


彼を例えるのに狼という話を聞いたことがありますが、私には猫を思わせます。


どうしようもなく優しい所…


時折見せる憂いを秘めた瞳…


そんなところに…どうしようもなく惹かれ、気がつくと彼を見ている…


一緒のクラスになって…私の知らない彼の部分を知っていくうちに…次第に好きになってしまいました…


必死に、否定しようとしました……実らないと…お父様の選んだ方と結ばれるしかない…そういう運命なのだと…


「でも…でも……諦められないんです!!どうしようもなく…私の中で彼の存在が大きくなっているのです!!」


恋という感情を知ってしまった以上、よく知らない人となんて結婚したくない。


だけど…


「…私は……お父様に立ち向かう勇気がありません……それに……」



――Side Maki Midou


あたしは驚いていた。


北條がこんなに感情を見せるところを見たことが無かったから…


そして、そこまであいつを…好きだったという事もだ…


さらに、次の言葉が尚、私を驚愕させた。


「今月の終わり…7月29日。私の18の誕生日に私はお見合いをしなくてはいけないんです」


苦しそうに…そう言った。


「そのお見合いは私の夫となる人を選ぶための誕生日パーティーなんです……。そこでお父様が結婚相手を決める……」


正直、もうあたしの手には終えない話だ……


なので、最強の助っ人を呼ぶことにした……愛の伝道師を…




――Side Misuzu Kariya


面談中の筈の御堂先生から内線が入り、教室に言って話しを聞いてみると…私の心は燃え上がった。


「あなたは…嫌なのよね?」


「……はい…」


「なら、そんなお見合い…ぶっ壊しなさい!!」


まったく、今年の三年生は…どこまで私を熱くさせるの!?いい話しを見せてくれるの!?


「いい!愛無き結婚!?糞喰らえよ!!愛こそ全て!愛なくして幸福はありえない!」


テンションがどんどん上がっていく。


「あなたはそれでいいの!?誰のための人生なの!?家なんて出るくらいの覚悟で!自分の幸せのためだけに生きなさい!」


「私の…幸せ?」


「えぇ。とりあえず、お見合いの件は協力してあげるわ。愛の名の下にそんな暴挙を許すわけには行かないもの!」


日にちを聞き、詳しい作戦はおって連絡すると言って面接は終了。これをなんとかしなきゃ、進路どころじゃないものね!


そして私はその場を後にする。


萌え…コホン!燃えてきたわ!!こんなテンション久しぶり!



――Side Kazuto Himuro


「―っ!?」


寒気がした……どうしようもない悪寒が…嫌だなぁ


「先輩、どうしたの?そんな暗い表情をして…」


「いや…なんでもない」


諦めよう。受け入れよう…


もう、不安になるのもばかばかしい。どうせ、回避できないのさ……アハハ……




夕食後、のんびりギターで適当なメロディーを弾き、霞が適当な詩で歌って遊んでいると…


メールが届く……差出人は冬至だ。


「先輩?」


「……ちょっと出てくる」


霞に一言言って家を出た。



「悪いな呼び出して…」


「まったくだ」


冬至にメールで呼び出されたのは人気の無い学校のグランド。


そりゃ、もう夜の9時を過ぎているし学校には人は居ない。


そこに、仕舞いわすれたのか、冬至が持ってきたのか?分からないが、サッカーボールでリフティングしている冬至が居た。


「………」


「………」


無言でリフティングする冬至とそのボールを眺める俺。


そして…ゆっくりと冬至が用件を切り出した。


「……俺、高校卒業したらイタリアに…セリエAに行く」


「そうか…」


互いに沈黙。いつしか冬至はリフティングを止めている。


「お前には感謝してる……お前が居なかったら俺はサッカーを辞めていたかもしれない」


「大げさだなぁ…」


肩をすくめて返事をするも、冬至はまっすぐに俺の目を見て…


「だから、お前には一番最初に言いたかったんだ…」


「泣いてんじゃねーよ。ばーか」


そう言って、俺は笑う。まったく、イタリアに勝負しに行くのに泣いててどうするんだ


「いいだろ!俺にとってお前はかけがえのない親友なんだ!!イタリアに行ったらもう会えないかもしれないんだぞ!」


「んなことない。生きてりゃまた会えるさ」


それに…


「多少離れたところで、俺とお前の縁は切れないぞ。お前と同様、俺も冬至は最高の親友だと思ってるからな」


「和人……」


だから……


「胸を張って行って来い。そして…活躍するまで帰ってくるな。俺に自慢させてくれよ。俺の親友は時雨冬至なんだぜってな」


その言葉に一層泣き出す冬至。まったく、見かけによらず泣き虫な奴だ。それに卒業までまだ半年も残ってるのに……


「和人…俺、残った学生時代を大事に過ごすよ。悔いが綯いように…クラスは別になったけどさ、お前と…いや、お前や橘達と今のうちに遊ぶんだ」


「……それはいいけど、彼女を蔑ろにするなよ」


こいつには年上の彼女が居るのだ。見てるだけで暑苦しいラブラブの……男としてちょっとムカついてきた


「あぁ。だけど、綺羅は…い、一緒にイタリアに来てくれるって言うし、今は友達と遊べって…」


むぅ…尻に敷かれてるのか……


恥ずかしそうに語る冬至。


「まぁ、それならいいけどさ。ふられても俺は責任とらねーからな」


そう言って笑い会う。


そして、共に学校を後にして帰り道…


「とりあえずインターハイだ…」


「あぁ。応援には行かないぞ。めんどいからな……」


つか、いけないの方が正しいな


彩花の応援に行かないと後が怖い…


「薄情な親友だな」


「知るか!彼女だけで十分だろうが!」


言いながら軽く小突く。


冬至が旅立つ前に…俺に出来る精一杯の応援をして送り出そう…そう思った。



「にしても…」


「?」


「綺羅ねぇ……いつから前園先輩を呼び捨てに出来るようになったんだ?」


「――っ!?そ、それは…」


冬至を散々からかいつつ、歩きながら…


今、一緒に居られるこの瞬間を…大事にしたい……そう思った。









こ、更新完了……


涼香「やるじゃない」


自分でも驚きの…三日連続更新…燃えたよ…燃え尽きた。


涼香「あー、死んでるわねぇ。それじゃ、今回はこの辺りで。感想ありがとうねー」



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