第32話:剣舞!激闘球技大会 第三幕 銀の騎士現る
――Side Hajime Itimonji
「はぁ…」
この惨状。どうしたものかな…
「和人!?和人は!?」
「何処にいちゃったの!?」
「うぅ…約束を護るわけには…ですけど、人前でなんて…ふしだらな…」
「カズちゃ…カズ!?カーズ!」
挨拶の前に、怪我をしたカズ君を黒羽先生のところに行かせたんだけど…
目の前の…橘さん達が怖い……我先にとカズ君を探している。
「みんなーー!!勝った…「「「「「邪魔(しないで)(ですわ)!!!」」」」ぐへぇ!?」
サムスアップしていた琢に橘さんがハイキック!口々に邪魔扱いされている…う〜ん、形振り構ってないね…
「ど、どして…こうな……る?」
ガックリと琢がお空に旅立つ。琢…それが、キミのキャラって奴なんだよ。
さて、それはそうと…
「大丈夫かな、カズ君」
黒羽先生なら治療の心配はないけど…その後の剣球に出たらどうなるかが、心配だ…
Side Kazuto Himuro
残っている競技が、剣球だけということもあってか、救護テントには他にけが人の姿はない…ないのだが…
「あの……なんで怒ってるんですか?」
「……怪我……したから……」
きつめにテーピングをまく奈緒先生。いや、いちいちぺちぺちと叩く必要はないでしょ?
「…おしおき……」
うぅ…不条理じゃ……
だが、腕は確かだ。シップとテーピングで大分痛みを感じなくなった。これで、剣球は…
「…駄目……」
「…いえ、だいじょ…「駄目!!」……ですから、本当にだい…「…駄目!!…」…」
睨まれる。少女みたいに可愛らしい容姿のくせに、この迫力。やっぱり、年上なんだなと…そう思った。だけど…
「奈緒先生、やりますよ。俺は…」
嵌められた…。そんなきっかけで出場が決まったが、やると決まったからには全力を出す。
「…だけど……その足じゃ……」
「でも、やります」
奈緒先生の目をまっすぐ見つめて、自分の意思を伝える。
「それに…いざとなったら、奈緒先生がいますしね」
Side Nao Kurobane
「っ!?」
ずるい……そんな微笑を見せられたら……
「奈緒先生、顔赤いですよ?……って、痛!?足、叩かないで下さいよ!」
「……知らない!……」
でも…
「…無理だけは…しちゃ…駄目だから……」
「ええ。ありがとうございます」
Side Kazuto Himuro
『え〜剣球に出場される生徒は更衣室に集まってください!!』
治療を終え、テントを出るとアナウンスが聞こえた……更衣室?あ〜面とか防具つけんのかな……嫌だなぁ……重いし動きづらそうなんだもんなぁ……
実は、俺は剣球のルールを良く知らない。去年、一昨年と見学をサボったから…剣球という競技があるのは知っているだけだ……
確か、球を剣で割るとかなんとか…だから立派な球技!みたいな屁理屈を狩谷校長が言っていたのは知っている。
そんなことを考えながら俺は体育館にある男子更衣室に向かった…
Side Kotono Kasuga
体育館中が生徒で埋め尽くされ、盛り上がりに盛り上がってる…しかもこの競技には…
『お待たせしましたあああ!!放送部部長。実況のお姉さんこと!三谷千里!!三谷千里が剣球の実況をさせていただきまーーす!!』
実況が居るし……
でも、実況はありがたいかも…私はこの学校に転校してきたから、この競技を良く知らない。当然、前の学校にはこんなのなかったし…
その疑問には実況のお姉さんこと三谷さんが答えてくれた
『さて!!剣球なんですが!一年生をはじめ、何人かはどんな競技かは良くわかっていないと思います!!簡単に説明しましょう!!ずばり!剣球とは剣で球を割ること!これが勝利条件です。使っていいのは剣のみ!打撃、投げ!その他一切の攻撃をした場合、反則となります!!』
え?剣?って竹刀とか?危ないんじゃ…
『剣といってもショック吸収のゴム繊維で出来ている子供向けのおもちゃ…しかし、剣道の授業で取り入れられているという優れもの!スポーツSAMURAIソードを使用しますので安全です!!いいですか!?侍でも、サムライでもありません!!SAMURAI!!アルファベットですからお間違えのないように!!』
…変なところですごいお金かけてる……
『次に使用する球です。これは、水風船のようなものを想像してください。中には血液に似せた塗料が入っており、割られたらアウト!!着ている服が、真っ赤に染まります。ですがご安心あれ!気化と同時に色は落ちますので漂白剤がいりません!!これも、子供向けのおもちゃです!!』
……最近の子供はすごいハイテクな遊びをしてるなぁ…
『そして、ルールです。上半身に球をつけて、割れば勝利です。ただし、球は背中につけてはいけません!それと、球以外の所に打ち込むのもありですが、明らかに卑劣な行為。スポーツマンシップにのっとっていない行為を行った場合は、御堂先生の投擲チョークで断罪!!即座に失格となります!!男女混合のトーナメント方式!戦うのに男も女も関係あるかぁあ!!まさに、死闘。最後に残った一人がチャンピオンとなります!』
和ちゃん…大丈夫かなぁ……
『さらに!!剣球の出場選手は…なんと!専用コスチューム…所謂、コスプレで決戦に挑みます!戦闘にTシャツ!?あまりに味気ない!!』
……は?ちょ、ちょっと、予算かけすぎでしょ!?
『衣装は過去に演劇などで使われた演劇部、衣裳部屋からの提供です!!様々な衣装で、舞台を飾ってくれることでしょう!!』
……なるほど、それなら大丈夫だ
『ここで、解説と、特別ゲストを紹介しましょう!!解説は、格闘技に詳しく、しかも自身も人外レベルの戦闘能力者。御堂真希教諭!!そして、漆黒の衣を纏い、あらゆる怪我を治療し、人体に詳しい黒羽奈緒養護教諭と発案者でこの学校のボス。狩谷美鈴校長を特別ゲストとして、放送席に迎えております!!お三方よろしくお願いします!!』
『ああ、よろしくな!』
『……しく……』
『ふふ、よろしくね♪さぁて、どんな青春物語が生まれるんでしょうねぇ〜〜♪』
放送席には超個性的な三人が座っている……すごい事になりそう…
『よいよ、始まるわけですが…注目選手などはいますか?』
『んなもん、あたしの天敵。氷室の奴に決まってんだろ!ガキどものへなちょこ攻撃があいつに当たるかよ!』
『……ヒム君……』
『ふふ、彼には私直々にとびっきりの衣装を着せたわ!あれを着こなせるのは彼以外に考えられないわね』
『おっと!!お三方から絶大な支持だぁ〜。氷室選手の活躍に期待しましょう!では、こっちで勝手に決めたトーナメント表の発表です!!』
パッと体育館の巨大スクリーンに映し出されるトーナメント表。知っている人の名前を目で追うと…
Aブロックに和ちゃん。Bブロックに彩花ちゃんと、紅桜先生の名前があった……決勝までこの二人と当たらないんだ……
『では、早速試合といきましょう。まずはAブロック第一試合。三年A組、滝川俊吾選手VS一年B組伊藤正人選手です!』
そして、試合が始まった。
Side Hikari Mizuno
和人君の試合はAブロックの第五試合……第一試合から着実に剣道部などが勝ち上がっていく。
皆、武士、忍者、くの一など、華やかな衣装で登場し、白熱した試合などを見せ場を盛り上げていく。
そして、よいよ第五試合……
「…っ!?」
登場した彼の姿に誰もが目を奪われた。
輝くような銀と透きとおるよう青が織り成すコントラスト。そんな甲冑で身を包み、漆黒のマントに銀の髪、整った容姿に左右の異なる色の瞳。
まるでファンタジーの世界から飛び出たような騎士がそこに居た……
Side Kazuto Himuro
「はぁ〜〜〜」
最近、加速度的に多くなったため息を吐く。
よく、ため息を吐くと幸せが逃げると言うが、それは逆だ。幸せが逃げているからため息を吐くんだ。幸せな奴がため息なんて吐くか!!
周囲の視線がいたい……だから、こんなの似合ねぇって行ったのに…あの校長
しかも、これ幾らかけてんだよ。
鎧の癖に何で出来ているのか軽く、それに動きを邪魔しない。しかも…
「剣までこれかよ…」
そう、通常のスポーツSAMURAIソードはむき出しだ。にもかかわらず、わざわざ日本刀仕様にしたり、忍刀仕様にしたりと、改造を施してある。まぁ、演劇の都合上で必要なんだろ受けどさ…
で、俺のは西洋剣仕様の片手剣。金などの様々な装飾がされた剣と鞘付き……派手だ……
まぁ、大剣じゃないのは不幸中の幸いだ。んなもん、持ったことねぇし、爺ちゃんとの鍛錬はもっぱら木刀だったからな……
『…はっ!?わ、私としたことが一瞬目を奪われてしまいました!!しかし、これはすごい!!騎士ですか!?』
『ええ♪ね、彼しか似合わないでしょ?あの髪、あの目……あぁ…今度の文化祭の主役は彼で決まりね♪』
……なにやら、すんごい嫌な単語を聞いた気がする。き、気のせいだ…あ、あははは……
『…ヒム君……カッコいい///』
そして、対戦相手を見て、ますます憂鬱になる……
女の子かよ……しかも一年生。
野郎なら気兼ねなく戦えるんだけどなぁ…しかも彩花みたいな戦闘民族種じゃなくて、小柄な小動物を思わせる子だし……
衣装は何故か獣耳をつけた格好で短刀を握ってるし……って、おい!武器の差があったらフェアじゃねぇだろ!?
あぁもう、最悪だ!!足は痛てーし
「あ、あの!」
とか思っていると、相手の子が審判に声をかけ
「……この試合……棄権します……」
なんもしてないのに、試合が決まった。
「え?えっと……いいの?」
「は、ハイ!!そ、その代わり、あ、握手してください!!」
お、おいおい。なんでそうなるよ。
でも、戦うよりはマシだ。そう思って、結局握手した。しっかし、小さい手だ……こんな子を剣球に出すなんて、何考えてるんだ?一年共は…
『し、試合終了!!労せず勝ちましたぁあ!!しっかし、どういう事なんでしょうね?』
『ふふふ、ラヴよ!!何も強い者だけが、剣球に生き残る訳じゃないわ。自分の魅力を精一杯使って戦うものも居る。過去、何度か色仕掛けで女子生徒が勝ち進んだっていうこともあったしね!』
なるほど…これで合点がいった。
恐らく、この子は容姿で選別されたのだろう。こんな小さな女の子に切りかかれるはずが無いという、人の良心に訴えた作戦だ。事実、俺もどうしようか悩んでたし……よかった、棄権してくれて……
さて、そろそろ引っ込むか…この視線がきついしな……
続く二回戦…
相手は…二年の体格がいい男。衣装は…
「なんじゃワレェ!?」
黒いスーツにサングラス。武器は長ドス。ヤがつく職業の人だった……しかし、似合ってんな〜〜
『銀の騎士VS街のヤクザ。このような構図がかつてあったでしょうか!?』
『んなもん、あるわきゃねーだろ!!』
皆を代表して御堂先生が突っ込んだ。
『では、試合開始!!』
「おんどりゃぁあああ!」
開始と同時に長ドス片手に突っ込んでくる…
―パァン!
それを、左に重心を移動させて避け、そのまま右に持った剣を薙ぎ、相手の腹部にあった風船を割る……
「ぐふ…お、おやっさん……すいやせん…」
そんな棄て台詞と吐き、倒れる相手……すげぇ!役になりきってる!!
『試合終了!!強い!まさに電光石火!!まさに、守護騎士!姫を守る騎士は伊達じゃない!!』
え!?そういう設定があるの!?
まぁ、何がともあれ二回戦突破だ……
そして、第三試合準々決勝。相手は……
「わっはっは!!よくぞ此処まで勝ち上がってきた!!」
着物を着た侍スタイルの……
「御麟廼螺?」
「な、なんだねその珍妙な名前は!!そのような字、一体何人の読者が読めるというのだね!?もっと考えたまえ!!あぁ!!論点がずれてしまったではないか!!」
しるか…
「滝川!!滝川俊吾だ!!」
「おっけー。タッ○ーだな」
「おい!!その呼び方はやめたまえ!なれなれしい上に、色々とまずい!!」
このやかましぃ声……あ、思い出した。
「いつぞやのバスケの時の奴だ」
「いつぞやとは何だ!!まだ、数時間も経っていないぞ!!」
「ワリィな…人の名前覚えるの苦手なんだよ」
動物なら得意なんだがな。ポチだのタマだの……
『はやくも、火花を散らす両者!!片や剣豪、方や騎士。まさに、和と洋の対決!!いや〜解説の御堂先生。どう見ますか?』
『滝川の野郎は仮にも男子剣道部部長でインハイの常連だ…普通なら滝川が十中八九勝つだろうが…』
『…ヒム君は…負けない……』
『…まぁ、そういうこった』
『では、お二方は氷室選手が優勢という事で…狩谷校長はどうですか?』
『そうねぇ…どっちも美形だけど。銀髪、オッドアイに白い肌…希少度から考えると和坊の方が上ね…』
『はっ!?あ、あの…突っ込みどころが多すぎるんですが……と、とりあえず、氷室選手と面識があるんですか?』
『まぁね♪』
……何を話してるんだろうあの人は…
自分から公私混同はやめようとか言ってたくせに……
「ぐっ、き、貴様…先生方に好感を持たれていると、調子に乗るなよぉ!!」
こっちは、こっちで睨んでるし……はぁ……もぅ、帰りてぇ
そんなドタバタがありつつ…
『始め!!』
試合が始まった。
『試合が始まりましたが…両者動きませんね……』
『滝川はな動きたくても動けねぇんだよ…氷室の方は動く気がねぇだけだ』
『と、言いますと?』
『氷室の球の位置を見てみろ。右肩についてるだろ?って事はだ、一番友好的な攻撃は右の袈裟切り…その他に右からの攻撃だ。んでもって、左からの攻撃は不可能』
『なるほど!!それによって、右からと攻撃を絞り込んでいるのですね!?』
『そうだ。さらに言えば、滝川は生粋の剣道部部長。生粋の剣道野郎だ。剣道の有効打はなんだ?』
『面と、左右の胴と籠手……それと突き……そうか!!剣道では右肩を狙うような攻撃はしない!!』
『その通りだ。そのため、滝川は打ち込む位置を変えるしかない。だが、慣れていないため、剣速は鈍る……対して、氷室はカウンタータイプ。攻撃を避け、相手に隙が出来たところをつく。その忌々しい回避能力は周知の通り。つまり、仕掛けたくても仕掛けられねぇんだよ』
どうすっかな…
相手が仕掛けてこない。でもなぁ、こっちから仕掛けるにしても踏み込むと右足が痛むんだよなぁ……
理想は、攻撃に来たところを、左足への重心移動で攻撃を交わして、腕の力だけで剣をふるって球を破壊……右足を極力使わないこれがベストなんだが……
よし!
「…おい、早く来いよ。それでも剣道部部長か?」
「だ、黙れ!!」
「でかい口叩いてたくせに。大体、バスケでも何もできなかったじゃねぇか…ほら、いいとこ見せろよ」
「だ、黙れと言っているんだぁあああ!!」
おっ、挑発に乗ってきた。単純な奴。
後は、二回戦のリプレイ。剣道部部長とはいえ、剣速は御堂先生のチョークの弾丸よりも遥かに遅い。避けるのは比較的簡単だ…
―パァン
攻撃を避け、胸にあった球を割る…
『し、試合終了!!あっさり、実にあっけなく終わってしまいましたぁ。この騎士を阻むものはもはや誰もいないのか!!』
「し、しまった!!僕としたことが…あ、あんな安っぽい挑発に…お、おのれぇえええ、お、覚えてろよーーー!」
見事な棄て台詞と共に、去っていく。分かった、お前の名は忘れないぞ、小笠原……
さて、なんだかんだで準決勝か……
『いや〜ベスト4が出揃いましたが、レベルが高いですねぇ…』
『ふふ、皆素敵よ♪』
『…レイレイ…張り切ってた……』
『あぁ、あの野郎。相手が気の毒だぜ…』
『では、改めて。ベスト4の選手を紹介しましょう。まずは三年A組の西島京選手。露出が多い、くの一衣装と、フェロモンたっぷりの大人びた容姿から繰り出される色っぽい視線と笑み。豊満なボディーで男達を悩殺。ここまで悠々と勝ち進んで参りました〜!同じ女として言わせて貰います!!死ねばいいのに!!』
『あら、あなたも魅力的よ♪』
『校長先生大好きです!!さてさて、気を取り直して…続いては優勝候補の一角である。滝川選手を破った、三年D組、氷室和人選手…現代に舞い降りた騎士。準決勝はこの二名が争います』
うわ…相手女かよ…
『続きまして、もう一方…Bブロック。まずは着々と突き進む、ミスアマゾネス。こちらも三年D組、橘彩花選手。しかしながら、本人は物凄く衣装を嫌っているようですが?』
『あらあら…困ったちゃんね♪』
「困ったちゃんじゃないわよ!!何よこれは!!どうせなら…ど、ドレスとか…そ、そういうのにさ…」
離れたところから彩花の視線を感じる。なんだ?
『……ぷっ』
「わ、笑ったわねぇ!!」
ギャーギャーと校長先生に文句を言うが、流石に大人だ…逆にからかわれてる
『最後の一人、昨年度のチャンプの貫禄を見せ付けます。クイーンオブソード、紅の舞姫。三年C組担任、紅桜麗先生、圧倒的強さでここまで勝ち上がってきました。』
和服に身を包み、静に眼を閉じ、正座をしている紅桜先生……ちょっと、楽しみになってきた。
どのくらい強いのだろうか?とか、爺ちゃんと比べてどうかとか?そんなことを考えてしまう……あぁ、俺のキャラじゃないのに…
『いずれも、総合得点上位のクラス。剣球で優勝した者が、総合優勝を決めます!さぁ、熱くなってまいりました!!では、準決勝、第一試合。西島京選手VS氷室和人選手の試合を行います』
中央で西島と向かい合う……西島の姿を見て、一言…
「痴女?」
だってさ、無駄に胸元は開いてるし、しかもそこを強調するかのように風船が谷間のところに置いてあるし、ミニスカート?っていうのかなあれ?ま、ともかく、その丈が短いし……
「坊や?いいのよテレなくても…」
同い年か?年上のようにしか見えないんだが……まぁ、いいやどうでも…
『さて、試合が始まっていますが、またもや両者動きません。いや、西島選手はしきりにアプローチしてます』
『あらあら♪女の武器を心得ているわね』
『けけけ、無駄無駄。あの鈍感朴念仁の枯れ木野郎にんな戦法通じるかよ。見ろよ、あいつの目を…』
『……冷ややか……』
『な、なんと!?数多の男子生徒を魅了してきた西島フェロモンがまったく、通じていません。一体どういう事なのか!?男色の趣味でもあるのか氷室…ひっ!?』
無礼な実行に腰に差して居た鞘を投げつける。まったく、なんと失礼な事を…俺はノーマルだ…
鞘は当てないように投げたので、威嚇程度だが…効果は十分だったみたいだな
と、そこで…
―ギリッ
「ん?」
「……あんた…この私を無視……無視したわね……」
こ、怖ぇ……なんでだろう。背後に蛇が見える……
「これでどう!?」
『はぁ、はぁ…こ、怖かった……あ、き、気を取り直して!!に、西島選手がジャンプ、その場でジャンプを始めました、一体何の意味が……あ!?揺れて…豊満な胸が上下に揺れております!!』
【おぉ〜!!】
『男どもからの歓声!!私は再度、女性として…いや、胸が小さい女性の代表として言わせて貰います!!死ねばいいのに!!』
突如ジャンプを始めた西島。何がしたいんだコイツは?
でもま、隙だらけなんで…遠慮なく
―パァン
距離を詰め、球を叩き割った。
「……あんた、何者?」
球を割られて、唖然としていた西島さんが口を開くが…はて?
「三年D組の氷室和人だけど?」
「そうじゃないわよ!!私ってそんなに魅力無い!?あんたにとってさぁ!!」
…何が言いたいんだろ?ま、それはともかく…
「……ほら」
纏っていたマントを西島にかける
「は?」
「んな、格好してたら風邪引く上に、御両親が泣くぞ?」
まったく、年頃の娘が……眼のやり場に困るっての!
「……遅いわよ…今更顔を赤くするなんて……」
「? 意味が分からんが……」
「さっきまでは普通に私を見てたじゃない!」
「色香に惑わされて負けるなんていう愚行は俺は絶対に侵すつもりは無い。近くに反面教師が居たんでな…何度か醜態を見たことがある…」
言わずもがなうちの爺だ。
「まぁ、そんな訳で…相手が悪かったな……ま、どっちみち女にはきかないんだから、優勝は無理だったろうさ…」
さて、次の相手は彩花か紅桜先生か……
――Side Ayaka Tatibana
やっぱ、勝ったわね…
まぁ、負けたら承知しなかったんだけど…うん、あの女の色香になんて…
基本的にあいつは紳士と言うか……なんというか…時に、女に興味が無いんじゃないかとさえ思う時がある。
だってよ!私がお風呂に入っても覗きに来ないし、薄着で出てきてもなんのリアクションも見せないし……風呂上りに思い切って耳かきしてあげた時なんて、グースカ寝やがったし…
あの時は、女としての自身を本気で失うと共に、大暴れしたんだった……
っと、いけない。今、そんな事を考えてる場合じゃない。
チラッと先生を見る。うわ〜本気だ…そりゃ、麗先生が剣で手を抜くなんてありえないんだけどさ…
しっかし、どうしよ……
正直、勝ち目が無い。剣道部の顧問という事もあり、先生とは月に何度か打ち合うが…勝ったことがない……
でも…
「やれるだけやるしかないか…」
どっちみち、全力を尽くす以外できることはない。
『では、準決勝第二試合。橘選手VS紅桜選手…試合開始です!!』
先生の球は胸の中央やや左、心臓の辺り…。私はお腹、多分胴がくる…って!?
―ヒュッ
あ、危なかった…
開始早々先生が放ったのは突き。身をよじってなんとか避けたけど…ヤバ、完全に読み外れた…
駄目だ…実力で劣ってるのに後手に回ったら、勝機なんて無い。
「やぁあああ!!」
此処は打って出る!!それに、何の策も無いわけじゃない。
――Side Rei Benizakura
流石だな橘…見事な剣戟だ…
鋭く、そして重い。今年のインターハイの間違いなく上位に食い込むだろう
だが…まだ甘い。
橘の剣は真っ直ぐすぎる…虚実が無い。
サッカーやバスケットを始めとするスポーツなどでも虚実は使われる。それは、フェイント
相手を翻弄し、騙し、裏をつく。
だが、橘の剣は全てが実のみ。フェイントが無い。ゆえに読みやすい
剣で受け、捌いていく。しかし…
「なっ!?」
「貰った!!」
Side Ayaka Tatibana
「貰った!」
私は片手面を放ち、先生がそれを受けたところで空いている左手を伸ばし、着物の袖を掴み…
グィッと先生を引き寄せて…
剣の柄で球を狙う。
ルールは打撃、投げなどの攻撃行為の禁止、袖を掴んで引っ張るのは攻撃じゃない。
さらに、剣で球を割るのが勝利条件。柄は剣の一部だ!!
けど…
『紅桜流歩法術『桜花』
「きゃ!?」
あの、袖を捕まれたままの崩れた体勢からするりと、抜け出し…
「見事だ橘。褒美に我が流派の秘剣を見せよう」
『紅桜流奥義桜花乱舞』
振るわれる鋭い剣戟。
一撃目…剣を持っている手に当たり、剣を持つ手が緩む
二撃目…返しで剣を叩き落されて…
そして、三撃目…
―パァン
見事球を捕らえる。
『決まった!!不思議な歩法からの高速の三連撃!!一体、あれはなんなのか!』
『あの歩法はあいつの家の流派独特の歩法。剣道のすり足ってのは前後の移動に爆発的な効果を発揮する。それを左右への移動へと応用したのがあの歩法だ…その動きは空を舞う桜の花の如く…』
『な、なるほど!そして、あの攻撃は?』
『あれはあの歩法から繰り出す高速の三連撃。最初の二発は力をセーブして、ピンポイントに相手の獲物を無力化し、最後の三撃目で決める』
『……筋肉の収縮を……利用してる……』
『…また、人外指定人物が登場してしまいました……お二方解説ありがとうございます。狩谷校長からは何かありますか?』
『ふふ、いいわ〜♪美しいわね……あぁ、早く和坊とのツーショットが見たいわねぇ……異国の戦姫と姫を守る守護騎士……あぁ♪』
『……えー、校長先生がトリップしてしまいました…しかし!決勝戦。確かに見ものです!!互いに圧倒的な強さで勝ち上がってきた二名。果たして、どちらが勝つのか!!』
Side Kazuto Himuro
「ごめん……負けちゃった……」
俺のところにやってきた彩花が笑みを浮かべてそう言う…だが……
「あっ…」
「無理すんなよ…」
そう、無理してるのは見え見えだ。悔しくて…泣きたいくせに……
髪を撫でるように触り、そのまま胸に掻き抱いて…
「悔しかったら、素直に泣けよ…」
「…くっ…ひっく……わ、私…負けちゃった……」
「……あぁ」
「……じ、実力の差は分かってたの…でも…」
「……」
「悔しい…悔しいよ……」
「……その気持ちがあれば、次は勝てるさ…」
泣いている彩花の頭を撫でながら…痛む足を踏みしめて…
決勝戦……マジで勝ちに行く!
更新完了!
霞「ツーン」
霞ちゃん?
霞「フン!」
かっすっみ!かっすっみ!
霞「………」
……ツンデレ?
霞「誰が!!キミなんかにそんなことしないよ!」
おっ、反応あった!
霞「……ツーン」
…そんなにボクのこと嫌い?
霞「……ツンツン…ツーン」
あ、そうなんだぁ。へぇ〜そっかぁ……残念だなぁ
霞「………」
そろそろ霞ちゃんの時代が来る予感がしたんだけどなぁ…
霞「!?」
そういう態度取っちゃうんだぁ……
霞「て、テイクツー!お願いします!!」
うん。じゃ、改めて、更新完了!!
霞「毎度おなじみ霞です!今回のお話は引き続き球技大会!よいよ剣球に突入!」
霞ちゃんは運動はあまり得意じゃないんだよね?
霞「うぅ…ボクはインテリ派なんだよ」
頭はよくないのに?
霞「げ、芸術に秀でてるんだよ!!もうお金だって稼いでるんだ!立派な社会人なんだよ!勉強なんていらないもん!!」
それもそうか…
霞「そうそう。ところで、剣球ってユニークだよね」
まぁねぇ…こういう学園モノに球技大会は王道だし、なんか違うことを取り入れたかったんだ。
霞「スポーツSAMURAIソードかぁ…あれね、最近時代劇にも使われるんだよ!確か…作ってる会社はMISUZUだったね…ん?MISUZUって…あれ?」
…では、次号決着。乞うご期待
霞「ま、いっか。いつも感想ありがとう。またね〜」
やればできるじゃん。って、どったの?
霞「……ボクも…先輩の騎士。見たかったな……」
……ごめん……ごめんよ
霞「いいんだよ…どうせ、僕なんかさ…」