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Rumble  作者: 久遠
28/38

第27話:孤狼と歌姫とお隣さん 後編

――Side Kazuto Himuro



俺は、静かな雰囲気が好きだが、賑やかなのも嫌いじゃない。


ましてや、それが親しい者同士ならなおさらだ。一人で居ることが多かったから余計にそう思う…


だが…賑やかなのと騒がしいのは違う。そして、今の状況はどちらに分類するかというと…


「だから!和人は和食が好きなの!だから此処は和食を選ぶべきでしょ!!」


「確かにそうだよ。でもね!和食は先輩が作った方が美味しいんだ。だから、家で作れないピザとかを頼んだ方がいいよ!先輩はイタリアンも好きだもん!」


復活した彩花と風呂に入って戻ってきた霞が言い争っている…出前を頼むので和食などの丼や蕎麦にするか宅配ピザ&スパゲティーのイタリアンにするかだ。うん、騒がしいことこの上ない…


ちなみに、俺は特に好き嫌いは無い。ある程度の食べられる料理という条件付きだが…


ともかく、俺は、ますます夕食が遅くなると思ったので…


「よし、じゃ間を取って中華にしようぜ。爺ちゃん御用達の店があるから味は保障する。多分、電話のトコに番号とメニューがあったはずだ、持ってくるから待ってろ」


仲裁に入ることにし、この提案に二人は渋々頷いて、事なきを得た。はぁ…疲れる…


とまぁ…こんな調子でドタバタした夕食がなんとか終了し…


「ふぅ…」


食後のお茶を啜る。生憎と、二人が居るので日課となっている武術の鍛錬は出来ない。まぁ、最近オーバーワークだって奈緒先生に釘を刺されてるので、休むいい機会だ。


けどなぁ…日課となってることを一日でもやらないと気持ち悪いんだよな…寝つきも良くないし。


鍛錬をした場合、布団に入ってから3秒以内に寝られるが、やらない場合10秒近くを要する……7秒の差はかなりでかい…


と、そんな事を考えていると…


「和人、はい、おせんべい!」


「…いや、今、飯食ったばっかだろ」


台所に行っていた彩花が、せんべいなどのお茶菓子を用意し、戻ってきて、俺に差し出す。何時もなら、こんなことしないのだが…何処か今日の彩花はおかしい…


だが、生憎と夕食を食べたばかりなので食べる気にならない…。そんな様子を見て、ふふんと不敵に微笑む霞…


「そうだよ。まったく、配慮が足らないよ。あ、先輩。お茶注ぎ足すよ」


「…いや、まだ十分入ってるし」


急須を持ってお茶を継ぎ足そうとするが、まだ一口しか飲んでいないので、当然のごとく茶碗の中には茶が残っている。彩花がお返しとばかりにふふんと嘲笑する。


「そうよ。まったく、配慮が足らないわね」


…なんかバチバチと火花の音が聞こえる。


「た、橘さんに言われたくない!」


「あたしだって、あんたに言われる筋合い無いわよ!!」


……休む機会だと思ったが、どうやら平穏は瞬く間に過ぎ去ってしまったらしい。


ギャーギャーと言い合う二人。


「で、結局。あんたと和人の関係って何!?あたしとの事は話したんだから聞く権利はあるはずよ!」


「いいよ。聞かせてあげる。ボクと先輩の甘く、せつないお話を!!」


「……風呂入ってこよ」


ちっとも休めず、いい加減、疲れてきたので、まだ熱かったが我慢してお茶を飲み干し、俺は風呂に向かうことにした…




で、風呂から出てきたら……


「…あんたも苦労したのね…」


「分かるの?」


「分かるわ…良く分かる。あの超絶鈍感男のせいで私もどれだけ苦労したか…」


「だよね!?それとなくアプローチしても全然気がつかないんだよね!」


「そうそう…それに、天然の女殺しだし。あの笑みで優しくされたら…落ちるに決まってるじゃない!!」


「…ねぇ、学校でライバルって居るの?」


「…私の把握してる限りでは三、四人ってトコかしら。あんたを含めてだけど、みんな強敵よ」


なにやら、雰囲気は一変し、互いの手を取り、意気投合している。女ってのは…理解できないな。あんなに仲が悪かったくせに…


「ふぅ…いや、仲良くなったようで良かった」


「………」

「………」


「な、何だ?」


声を掛けると二人揃って睨みつけてくる。そして、おもむろにため息を吐くと…


「…まぁ、仕方が無いよね」


「ええ、和人だしね」


「負けないよ。橘さん」


「…彩花。彩花でいいわよ。私も霞って呼ばせてもらうから」


「じゃ…彩花先輩って呼ばせてもらうよ。では、改めて彩花先輩、私は負けないから」


「ええ、恨みっこ無しよ」


ガシッと握手をし、笑みを浮かべる二人。


何がなんだか、良く分からないが…仲がいい事はいいことだ。うん、そう思うことにしよう。


俺の生存本能が細かいことを突っ込むなと訴えかけてくるので、強引にそう納得することにした。



「とりあえず、今日は休戦って事にして…ね、よかったら何か歌ってよ」


「いいけど…って、あぁ!そうだ。忘れてた。ボク、これを先輩に渡しに来たんだった!」


ゴソゴソとバックの中を漁り、取り出したのは数枚のルーズリーフ


「これって…」


「うん、この前の曲の詩。タイトルは『Meet again』」


「よし、じゃギター持ってくっから合わせてみよう。あの時はピアノだったからイメージと少しずれてくるけど、ま、そこは俺がなんとかアレンジして出来るだけカバーするから」



ギターを持ってきて、チューニングをし、準備完了だ。


「ちょっと恥ずかしいな。霞と爺ちゃん以外の前で弾いたこと無いから…霞は散々大勢の前で歌ってるけど、俺にとって彩花が初めての観客だな……ミスはご愛嬌だからな、許せよ」


それだけ言って、霞に目で合図を送り、曲を弾き始めた…





――Side Ayaka Tatibana


霞から話は聞いたのだが、正直、半信半疑だった。


和人がギターを弾いているところなんて、今ままで見たこと無かったし…


けど…ギターを持ってきて、音を奏ではじめた和人と、その音に霞の歌声が合わさった時…そんな考えは吹っ飛んだ。


いや、吹っ飛んだという表現は正しくないかもしれない。しいて言うなら…上書きされた…かな?


この歌を聴いてると、嬉しさとか喜びとか…そんな暖かいもので心が満たされていく。


「ふぅ…いい歌が出来たね♪」


「あぁ、いい仕事するぜ。流石プロ」


「アマチュアでこれだけの曲作ったくせに…そんな事言われても嬉しくないよ」


歌が終わると、二人は楽しそうに会話する。私は、暫く余韻に浸り……考える。


凄かった…歌っているのはあの人気歌手Soraだから上手いのは当たり前だし、すごいのも納得できる。でも…


「ねぇ…これ、本当に和人が作った曲?」


「うわ!?最初の感想がそれかよ!」


確かに、自分でも感想としてはどうかとは思うけど…


「だって…いい曲だったから。CDで出てたら絶対に買っちゃうような…」


「…いや、そこまで持ち上げられると、逆に困るんだが…」


別に、持上げた訳じゃない…本当にそう思ったから……これを和人が作ったなんて…やっぱり信じにくい


「ねね、先輩。こうなったらユニット組んでデビューしちゃおうか?」


「絶対に嫌だ」


「な、なんで!?実力あるのに…」


「そんな事無いだろ?まぁ、仮にあったとしてもだ。大勢の人に注目されるの嫌だし、二度寝が出来なくなる生活も嫌だし、家に帰れなくなるのも嫌だしな」


霞がそこまで言うからにはやっぱり、相当に実力があるんだろう…


「ね、霞とさ初めて作ったっていう曲があるんでしょ?」


「ん?聞きたいのか?」


「聞きたい!!」


あ、思わず声が大きくなっちゃった…。


「リクエストも入ったし…霞、もう一曲行くか?」


「うん♪ボクも歌いたかったしね!」



その日、私は素晴らしい歌を聞けて…強敵だけど素敵な友達が出来て…


大好きなあいつの意外な一面を知ることが出来た。




追記


時刻は深夜…皆、それぞれ割り当てられた部屋で眠っている筈なのだが…


「ねぇ、休戦しようって言って、あんたは呑んだのよね?」


「も、もう…12時過ぎてるもん。今日じゃないもん」


「そんないいわけが通用するかーーー!!」


「なっ、そういう彩花先輩こそ!その手に持っているものは何!?」


「こ、これは…ま、枕よ。わ、私、枕変わると寝られないから…」


「……で、なんでその枕を持って先輩の部屋の前に来たの?」


「………。そ、そういうあんただって!何よ。その格好は!下着の上にYシャツを羽織っただけじゃない!」


「ぼ、ボクは寝るときはいつも薄着なの!こんな感じの!」


「……で、その格好でどうして和人の部屋のドアノブを握っているのよ?」


「………」

「………」


「ふっ、やはり私達は相容れないようね…」


「そうみたいだね。残念だよ…きっと出会い方が違ってたら仲良く出来たと思うのに…」


ドタバタという騒音と怒鳴り声が深夜の静寂を破る。こんな状況の中…部屋の中では…


「すぅ…すぅ…Zzz…」


まったく起きる気配も無く、幸せそうに和人は眠りについていた…。





更新完了!


琴乃「………」


な、なんで睨んでるんですか琴乃の姉さん


琴乃「いやな…私は幼馴染……なのに、何故あの場にいないのかと…遺憾を感じているんだ…」


うっ…


琴乃「枕?下着にワイシャツ?くっくっく…小娘ども…いい度胸をしておる…」


せ、性格が変わってる!?い、医者ーー!!奈緒先生ーーーー!


琴乃「討ち入りじゃーーー!」


奈緒「…おー……」


って、奈緒先生。そっちサイドっすか!?


あ、もういないし…くそ、急いで止めに行かないと…話が無茶苦茶に…。


と、という訳なんで今回は此の辺で…感想よろしくおねがいします。ではでは!


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