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Rumble  作者: 久遠
26/38

第25話:孤狼と歌姫とお隣さん 中編

――Side Kazuto Himuro


「た、ただいま…」


最悪だ…


買い物をして時間が立てば少しはほとぼりは冷め、美味しい料理でご機嫌を取ろうとしたのだが…



「まさか、財布を忘れるなんてな……」


歩いてる間に、その事実に気づき、とぼとぼと帰ってきた。


くそ…こうなったら、やってやろうじゃないか。


彩花の拳でも、蹴りでも、机投げ…は、勘弁して欲しいけど、と、とになく受けて立ってやる!


さぁ、来るなら来い!!


そう思ったのもつかの間…


――ドタドタ


「!?」


来た…奴が来た……


グッと身構え、攻撃に備える。下手に避けると収拾がつかなくなり、余計酷い目に合うのは過去の経験から分かっている。だから、甘んじて受けよう。こ、怖くなんかないぞ!


「和人ーーー!」


叫びながら駆けてきたのはやはり彩花。そして、そのまま…


「…え!??」


殴られると思いきや、ドンと体当たりをされた。


いや…違うな…体当たりのわりに痛くない……。


「彩花?」


「よかった…ちゃんと帰ってきた……グス…よかったよぉ…」


ドアを背にした俺の腕の中で、胸に顔を押し付ける彩花……それに…泣いてるし……


彩花のこの症状に思いあたる節が一つだける……


「……大丈夫…大丈夫だから。もう、あんな事にはならないから」


優しく彩花を抱きしめてやる。


「うん…うん……護るから……私が護るからね……護る…から…」


何時も、強気で活発で元気な彩花がこんな風になってしまう原因を作ったのは、あの日の俺の弱さだ


本当にごめんな彩花…


心の中で詫びながら俺は、彩花が落ち着くまでずっと抱きしめるのだった…




あの後、落ち着いた彩花を連れてリビングに戻ると…


「先輩…」


「あ〜。悪いな、お前にも迷惑かけたろ?」


「……和人が黙っていなくなるから悪いんだもん…」


「ちゃんと、買い物に行くって言ったぞ?」


「…許さないもん」


駄目だこりゃ…。今の幼児退行化している彩花には、何を言っても無駄だ。


拗ねたりすると時々こうなる…まぁ、これはこれで滅茶苦茶可愛いんだけど。普段どのギャップが余計そう見させるのだろう…


そんな事を考えながら、彩花を落ち着かせるため頭を撫でていると…


「…先輩、何があったの?橘さんとの間に…」


「……別に何も…」



「嘘だよ!!何かあったんでしょ!?それにボクも少しは関係してるんでしょ!?橘さんボクの名前が出てそうなっちゃったんだもん!!」


…そうか……それが原因か……霞の名前を聞いて、当時の事を思い出しちゃったのか……


あ〜、自分が嫌になる。こうなることは少し考えれば分かったじゃないか。


「……ねぇ…話してよ……」


ふぅ〜…霞にこう言われたら話すしかない…元々霞には話しておくのが筋ってものだったのだ…


けど、これを話したら霞がきっと傷つく……いや…違うな。そんな綺麗な理由じゃない。ただ、おれ自身が語るのを嫌だっただけだ…



「わかったよ……けど、一つ言っておく、これはあくまでも過去の出来事。もう終わったことだから。その辺を踏まえて聞いてくれよ」


俺の言葉に霞が頷いたのを見て、俺は語りはじめた。



〜〜回想〜〜



爺ちゃん…


三年前の梅雨の始まり。その日は雨が降っていた……


「…なんでだよ……なんで、皆…俺の前から居なくなるんだよ…」


前から病気を患っていた爺ちゃん。あんなに恐ろしく強く、元気だった爺ちゃんが…信じられないが、それは真実で、今年に入って床に伏せる事が多くなり、俺は学校を休み、必死で看病したのだが…結局…爺ちゃんは父さんと母さんの所にいってしまった。


親類と縁を切っており、本人の希望もあって葬儀はほぼ密葬。俺と爺ちゃんの親友の武術のライバルである寺の和尚の三人で行った。


そして、仏間の壁に寄りかかりながら、何も言わない仏壇の三人の写真に語りかけた。


もう…何もする気が起きなかった。


何も考えられなかった……


ただただ、俺は座って虚空を眺めていた…




何日過ぎただろうか…時間の感覚が希薄にになっていた


全身に力が入らない……あの日から寝てもいないし、食事も取ってない。漠然と、虚空を眺めていただけだ。


死のうと思った訳じゃない。でも、生きたいとも思わなかった。何もする気が起きないのだ…その結果、どうなろうとどうでもよかった。……


意識が薄れる…現実か夢なのかも曖昧だ…ただ、昔の事を思い出す……中でも以前霞に言った言葉…


『生きたくても生きられない人間も居るんだ!死ぬなんて絶対に許さない!』


よくも、あんな偉そうなことがいえたもんだ…


あんなことを言った自分が、まさに許せない行動をしているのが笑えた…


でも、俺には家族なんて居ないから…。悲しんでくれる人、待っていてくれる人はもう居ないから…


あ、でも…



霞、約束護れそうにないや…ごめんな……


世界が傾く、いや、自分が傾いているのか……


ゆっくり目を閉じる。もう目を開ける力も残ってない…


父さん、母さん、爺ちゃん…


目を瞑ったら、きっとまた会えるよね?


薄れゆく意識の中で、俺は遠い昔に聞いたような…懐かしい人の声を聞いた…







目が覚めると、視界には見知らぬ天井が見えた。


「……ここは?」


明らかに自分の家じゃない。それに、視線を横に向けると腕には点滴の管が繋がれており…


「…すぅ……すぅ…ばか…」


同じ中学の制服を着た女の子が椅子に座って寝ていた。


そして、俺はそいつに見覚えがあった。


ここに越してきたときに何かと話しかけてきたお隣さんの一人娘だ。もっとも、無視した挙句、険悪なムードになりそれ以来話した事はないが…


そいつの名は橘彩花。当時、俺と同じクラスで学級委員長を努めている活発な女子生徒であった…






「そ、そんな…」


此処まで話し終えると、そんな声が聞こえてくる。唖然としているのは霞…


「先輩が……まさか…」


「いや〜あの時は死にかけたよ」


暗いその場の雰囲気を明るくしようとそう言ってみたが…


「何言ってるのよ馬鹿!!」

「ふざけてる場合じゃないよ!!」


「…ご、ごめんなさい」


二人に怒られた…


彩花は怒鳴りながら目元には涙が浮かんでいる。幼児退行からは戻ったものの、今度は泣きむし彩花モードに突入してしまったようだ…


「わ、私が来なかったら…本当に危なかったんだから!冗談じゃ済まなかったんだからね!!」


「…その事には感謝してるよ…」


これは本当。彩花は正真正銘俺の命の恩人だ…


「……私がいればこうはならなかったんだよね?」


「霞?」


声を震わせ、俯いてそんな事を言う霞。


「だって!先輩をそこまで孤独に追い込んだのはボクだよね!?ボクさえ残ってれば、きっと先輩を励ませた!慰めることも出来た!!それなのにボクはアメリカでのうのうと…」


「……それは違うぞ、最初に言っただろ、もう過去の話だからって。俺は生きてるし、お前の腕は治ってプロデビューした、丸く収まってるんだからそれでいいだろ」


それに、のうのうととは言うけど、どれだけ必死にリハビリを頑張ったのかは俺にだってある程度の想像はできる。


「お前はな怒っていいんだよ。約束破るつもりだったのかーー!ってな」


「で、でも…橘さんは…」


「だ、だから、謝ってるじゃない。あれは八つ当たりだったのよ!だって、むかつくじゃない。私がこいつを病院に連れて行ったときさ、ずっと『霞…ごめん…ごめんな』ってうわ言を言ってるんだもん!」


彩花は一体、霞に何をしたのだろう……


「…でも、橘さんに迷惑をかけた……あの事件がきっかけで橘さんは、えっと…取り乱しちゃうようになっちゃったんだよね?」


「そ、そんなに取り乱してないわよ!!」


「…知らぬは本人ばかりなりってね…。まぁ、それは置いといて、違うんだよ。彩花がああなった原因はこの後なんだ…」


当時、ひねくれていた悔やんでも悔やみきれない行動。


その行動があったからこそ、今の俺達の関係がある。でも、彩花を酷く傷つけてしまった…


「…全部聞かせてくれる?」


霞の言葉に頷いて、俺は続きを語り始めた。



〜〜回想〜〜


こんなところ一秒だって居たくない…


俺は病院が嫌いだ、父さんも母さんも助けてくれなかったし、爺ちゃんの病気も治してはくれなかった…


繋がれていた点滴の管を乱暴に引き抜き、ベットから降りる…


「…くっ……」


ベットから降り、地面に立ったが、体がふらつく……力が入らない…


「…はぁ…はぁ……」


壁に手を置きながら、一歩一歩外に向かって歩く。時刻はもう深夜ということもあり、幸い誰にも会う事無く病院の外に出来ることができた。


外は梅雨という時期ということもあってか、土砂降りだった。そんな中を、傘も差さず家に向かって歩きすが…


「…はぁ…はぁ…くそ…体が重い…」


服が雨の水を吸って余計に重くなる…


視界が歪む……視界が傾く……


―ドシャ…


結局、俺は家に辿り着く前に倒れてしまった…


駄目だ…もう動く力も残ってない……


雨水で体がどんどん冷えていく……


「は、はぁ、はぁ…あ、あんた!!何してんのよ!!!」


そう叫びながら、俺を抱き起こそうとする…


「お前は……橘」


「あ、あんた馬鹿じゃないの!自分が今、どんな状態か分かってないの!?何考えてんのよ!!」


力の入らない俺を担ぐように背負うと、橘は病院に向かってゆっくりと歩き出す


「降ろせ…俺のことはほっといてくれ」


「はぁ…はぁ…嫌…よ、ほっとけるわけないじゃない!…はぁ…はぁ…あんた本当に死んじゃうわよ!!」


「別に、それならそれで構わない……」


どうせ、生きていても仕方が無い。


「っ!?どうして…?どうしてそんな事言うの!?ふざけないでよ!!そんな事して誰が喜ぶって言うのよ!!悲しいだけじゃない!!」


「…居ない…」


「えっ!?」


そう、もう居ないんだ…


「喜んでくれる人はもう誰も居ない…悲しんでくれる人にももう居ないんだ……なぁ、もういいだろ?」


もう…疲れた……


俺は力の限りを尽くし、立場なの背中から降りそのまま地面に座り込む…


一人で居ることに慣れていたつもりだった。けど、実際は爺ちゃんが傍にいてくれた。だから、俺は今日までやってこれたんだ……けど、爺ちゃんももう居ない…


「辛いんだよ……一人で居ることが……。怖いんだよ……人と接することが、また、俺の前から居なくなってしまう気がして…」


「っ!?だから死ぬって言うの!?そんなの絶対におかしい!!死んじゃったりしたら何もならないじゃない!!」


座り込んだ俺に対し、橘も屈んで俺の肩を掴みながらそう告げた。


どうして…そんなに怒っているだろうか?俺には分からない…わからなかった…


「…死にたいわけじゃない……けど…生きたいとも思わない」


そう、死にたい訳じゃない、死にたいなら手首を切るなり、首を吊るなりすればいいのだから。けど、生きたいとも思えない。もう…何もしたくない…


「…同情は要らない。お前の自己満足に付き合うつもりもない。ここで、俺を見捨てるのが心苦しいならこのまま病院に連れて行った後で家に帰ればいい。その後で俺がどうなろうが、お前の責任にはならない」


「……ふざけるな……」


俺の言葉に答えた橘の声は、涙と怒りの入り混じった声で、小さくとも心に響くように聞こえた。


そして…


「同情なんかじゃないわよ!自己満足でもない!あんたさっき言ったわよね!死んでも悲しんでくれる人が居ないって、生きてて喜んでてくれる人が居ないって」


そこまで捲くし立てると、涙と優しさを含む声色に変わり、包み込むように両手を広げて俺の顔を自分の胸に抱き寄せながら…


「私は悲しいよ?私は生きててくれたら嬉しい……一人で辛いって言うのなら…私が一緒に居てあげるから」


「っ!?」


もう…誰の言葉も届かないと思っていた…。けど、その言葉は…紛れもなく俺が一番求めていた言葉で…スッと心の中に入ってきて…


「う…、うぁ…あ…」


「…私が孤独という魔物からあなたを護ってあげる…。いつか、あなたが一人じゃなくなるその時まで…私が護ってあげる…」


何時以来だろう…


父さん達や爺ちゃんが死んだときも泣けなかったのに…


雨に濡れお互いに冷え切っている筈なのに、何故か暖かくて……


その温もりを感じながら、俺は橘の胸の中で声を上げて泣いた…。






更新完了…したのはいいんだけど…あれれ?


奈緒「……どうした…の?…」


う、うん。あまりにへヴィな話しだから所々にコメディー要素を混ぜたんだけど…なにやらゴチャゴチャしたことに…


麗「ふむ…けど、友人の合格は貰ったのだろう?」


うん、リテイクはとりあえずされなかった。だから更新したんだけどね。


麗「なら、問題ない。そもそも、更新してから言い出したのでは手遅れだしな」


そ、そうだよね。今回頑張ったしね、熱にうなされ、メスに脅され、面接の準備に追われながら…


奈緒「……注射の方が…よかった?……」


え、遠慮しますです


奈緒「……そう……すぐ治るのに……」


麗「ま、まあ。いいじゃないですか。と、それよりも、友人からの質問があるのだが…」


あぁ、はいはい。先生達の年齢はどうなっているのかだね?その辺は気になっている人もいるから、此処で言うね。ま、年を言うのはメスとかチョークとか刀が怖いから伏せるけど。序列は…


奈緒>恋=真希>麗


という感じ。なんと、奈緒先生が年下に見えて一番の先輩なのです。


麗「私が敬語を使っていたから気づいた人も居ただろうけどな」


奈緒「……それよりも……お話について……」


あ、そうだね。えっと、今回はとりあえず過去編の一部ってか、一番の暗い部分〜


奈緒「……ヒム君…撫で撫でして…あげたい…」


麗「まだ若いのに…なんて強い人……」


先生両名から支持率アップ!そして、彩花ちゃんの人気は果たして上がるのか!?確認しとくが彼女がメインの中のメインヒロイン!(当初の予定)です!


さてさて、では、今回は此の辺でさようなら。感想本当にありがとうござます。


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