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Rumble  作者: 久遠
23/38

第22話:映画を見に行ったつもりです

「ど、どどど、どうしよ〜〜」


撫子寮にある琴乃の部屋のベットの上で、少女は悩んでいた…


悩んでいるのは当然、この部屋に住んでいる。琴乃である。


学校で見るような無愛想で無機質な表情とは正反対で、オタオタと動揺し、幼い頃の…地の姿になっている。


さて、琴乃を此処まで動揺させた出来事とは何か?時間を少しだけ遡ることにしよう…



〜回想〜


夕食を終え、自室で恋愛物の小説を読んでいると、携帯電話が鳴った。


「誰だろ?」


視線を小説から携帯電話に移し、着信画面を確認するとそこには、氷室和人と出ており


「か、かかかか、和くん!?どどど、どうしよ!?お、落ち着け〜、ひっ、ひっ、ふ〜。ひっ、ひっ、ふ〜。あー!えー!いー!おー!うー!ん、んん!テステステス…和、和…よし…」


偉く動揺するも、そんな経緯を経てどうにか落ち着き、やっと電話を取る琴乃


「も、もしもし…和か?」


『もしもし?和人だけど…今、時間大丈夫か?』


「あ、あぁ。すまんな早く出られなくて…それでどうしたんだ?」


『あぁ〜えっと…その…なんだ……。明日さ…暇?』


「? 特に予定は無いが…」


『そっか、良かった。じゃさ…一緒に映画見にいかないか?』



〜回想終了〜


要は和人から映画のお誘いが来たのだ。


そして、琴乃がその誘いを断るはずが無く…即了承したものの……着る服に迷っているのだ……


「やっぱりスカートは…キャラが崩れちゃうよね。でも、初デートにズボンっていうのも……初デート……ふふ♪って、あぁ!やはく服決めないと!」


そう言いつつも、結局、何度かトリップし、服を選ぶのに数時間を要した…



翌日…、晴天の空の下で待ち合わせの定番となりつつある駅前では…


「ね?だれ、あの子」


「ふふ…美味しそう……じゅるり…」


「声かけてみなよ…」


「………はぁ〜」


多くの視線…(主に女性)に晒された一人の青年が疲れたようにため息を吐いていた。


太陽光が反射し、輝く銀の髪に、幻想的な異なる両目の瞳を持つ、整った容姿。身長は標準程度なのだが、モデルのように洗練された綺麗な姿勢で立っているため一目を引いていた…


ジーパンに黒いシャツというラフな格好が、一層魅力を引き立て、第二ボタンまで開かれたその胸元には、シルバーのアクセサリーが付けられている。


彼の名は、氷室和人。いま、駅前で大衆の視線を釘付けにし、居心地悪そうに待ち人を待っていた。


(はぁ…これだから、人前に立つのは嫌なんだよな…)


愚鈍な彼は、その視線の意味に気がつかない。ただ、見惚れ、どうやって話しかけようか、接点を持とうかという感じの視線なのだが、和人は…奇異の視線に晒されていると解釈しているのだ。昔、そのような視線と言葉を受けた彼にとってはそれが当たり前の事で、そんな経緯が、彼を鈍感に至らしめた全ての原因である。


つまり、銀の髪はおかしい。異なる色の瞳は気持ち悪い。そんな自分が好かれる筈が無い。


そんな考えから、自分を卑下する思考が身につき、声を掛けてくる女性の事もナンパとかじゃなく、ただ、珍しいんだろうくらいにしか思っていない。


彩花や華蓮がこれまで、さりげないアタックなど、並みの人間なら好意を持っていると気がつく行動さえも、こんな自分に気を使ってくれるなんて、いい奴だな。とか思っちゃっているのだ。


ある意味、天然の女殺し…。始末が悪いことこの上ない……。


「ね、ねぇ、キミ?暇かな?お姉さんとお茶でもしない?」


「……すいません。人を待っているんです」


そして…また、一人、犠牲者が増えていく…



「はぁ、はぁ…す、すまん…待った……か?」


「いんや、全然。って、どうしたそんなボケーとして」


暫くして、琴乃がやってくる。迷ったものの結局スカートではなく、ジーンズを履いていた…だが、髪は何時ものように結んではおらず、ストレートに後ろに流している…


そんな琴乃は和人の格好を見て、固まっていた…


基本的に和人は学生服か、家ではジャージなどの動きやすい格好で居ることが多く、着飾ることは少ない。そんな、彼の私服を見て、硬直してしまったのだ…


「? おーい?琴乃さ〜ん!?」


「…ハッ!?す、すまんね!?少しばっか考え事してたとよ!?」


「……いや、俺に問われても……ま、とにかく、とっとと行こうぜ、目立っちゃってるし……」


和人の言うとおり、周囲の視線が集中している。本人はただ、騒がしいからだと思っているが、実際のところは…


「ほら、だから言ったじゃん。フリーの分けないって…」


「なによ〜。あんただって、声かけ様としてたでしょ?」


「うわ〜あの子、可愛かったのに…男付きかよ〜」


「お前に勝ち目ねぇって、まさに美男、美女って感じ。お似合いだし」


二人の容姿が視線の原因である。


そして、二人が歩き出す頃には、興味がなくなったのか視線は減りつつあった。



駅前から談笑をしながら歩き、映画館に着く頃には。若干、緊張していた琴乃の緊張も解けたようである。


「今日は何の映画なんだ?」


「…ラブストーリーだ。『某国のお姫様』ってやつ。女子の間で話題なんだろ?」


「……確かにそうだが…以外だな、和がラブストーリーを選ぶなんて…」


「ま、俺が選んだわけじゃない。チケット貰ったからな。それに……昔、お前と見るって言ってた映画もラブストーリーだしな…結局見れなかったから、リベンジってことで」


「…和……ありがとう……」


「ほ、ほら!早く行かないと始るぞ!!」


お礼を言われて照れくさくなったのか、足早に和人は中に入っていってしまい、琴乃は感激の余韻に浸るまもなく、和人を追うように中に入った。



――Side Kotono Kasuga



和くんとの初デート…彼のほうから誘ってきてくれたのが凄く嬉しい……


「飲み物とかはどうする?」


「私は要らない。映画に集中したら飲んでる暇はないだろうから…和は?」


「俺もいらない。途中で絶対に寝るし」


…何も宣言しなくても……そりゃ、寝るって事は分かってたけどさ……


そんな話をしているうちに館内は暗くなり、よいよ映画が始った…



「Zzz……すぅ…」


早!?


隣から寝息が聞こえてくる。宣言どおり、和くんが寝たのだろう…だけど……


「…いくらなんでも…早過ぎるよ……」


本編が始る前、他映画などの予告の段階で寝てしまったのである。


ちなみに、暗くなってからまだ一分たったかどうかといったところ…


彼は、映画を見る気が少しでもあったのだろうか…


(ごめんなさい。いい映画を作ってくれたのに……)


和くんに変わって、心の中で映画の製作スタッフに謝り倒した…



『シャルロットーーー!』


『エヴィンーーー!』


スクリーン上では俳優さんが迫真の演技を見せる…。けど…私は……


―チラ


「…すぅ……すぅ」


映画にまったく集中できない。だって、寝顔が可愛いんだもん。


スースーと規則正しい寝息が聞こえてきて、思わず彼の寝顔を見てしまう。映画の内容は当然、頭に入っていない。


(ごめんなさい、スタッフの皆さん。あとでDVDを買いますから…)


再度、心の中でお詫びを申しあげつつ、彼を見つめる


あぁ…こんなに近くに居る……


忘れようとした…でも、出来なかった。私の初恋の人が…


手を伸ばせば届く距離に居る。


(……寝てるよね?だったら…)


そっと、彼の顔に近づいていく。


私のファーストキス。本当なら、あの時…一緒に映画を見にってするつもりだったのに……出来なかった。


だから、今


彼との距離がどんどん縮まり…彼の唇にわたしのが触れる瞬間…


『この、卑怯者がーーー!!寝首を掻こうとするとは…騎士としての誇りを忘れたか!!』


―ビクゥ!!


バッとすごい勢いで離れる。


まだ、心臓がバクバクいってる。


映画の台詞がまるで私に向けられて言われたかのようなタイミングだったため、私が怒られたような気がした。


結局、未遂に終わり、その途端に物凄い罪悪感に苛まれた…


(うわ〜。寝てる人に不意打ちは駄目でしょ。いくらなんでも…でも、チャンスだし…)


『…貴様!一度ならず二度までも!!人間の屑がーーー!!』


「………」


いや、だって、チャンス…


『言い訳とは見苦しいぞ!!正々堂々正面からかかって来い!!』


「………」


すっごい理不尽で恐縮だけど…


私はこの俳優さんが大嫌いになった……



「あ〜、面白かったな!」


「……そうだな…」


あの後、あの俳優さんに邪魔され、なんとなくやる気をそがれ、私まで眠ってしまい、瞬く間に映画は終わった。


伸びをしながら白々しく和くんがそんな事を言う。本編一瞬たりとも見てなかったくせに…


「ほら、あれが、その…こうして、ああするところが名シーンだったよな?」


「ああ、あれが、こうして、ああするところは確かにいいシーンだった」


まぁ、私も殆ど見てなかったんけど…


でも、あのエヴィンとかいうやつの顔は忘れない…ふふ、忘れてなるものか……


「こ、琴乃?ど、どした?なんか禍々しいオーラが出てるんだけど…」


「…なんでもない。気にしないで」


いけない、いけない。初デートなんだ…もっと楽しく行かないと…


――Side Himuro Kazuto



怒ってるよな…琴乃の奴


映画が始まる前、ちょっと目を閉じてただけなのに、目を開けた時にはエンドロールが流れていた…う〜ん。ミステリアス…


とはいえ、自分から映画に誘っといて、見てませんでしたじゃ、怒るだろうな…。当然、気が付かれているだろうし…


「な、まだ時間あるよな。お前、来たばっかで此の辺の店には詳しくないだろ。ま、俺もそんなに詳しくは無いだけど…。美味しいケーキがある喫茶店があるんだ、行かないか?奢るぜ」


「喫茶店か…」


「ああ、お前ケーキ好きだったし、味は保証するから」


「分かった。行く、案内頼む」


「OK。じゃ、行くか」


「あ…」


「え?あ、ごめん。癖で」


癖で琴乃の手を握ってしまった…。迷子にならないように昔は琴乃の手を引いていたから…


慌てて離そうとするも…


「………」


ギュッと握り返された…


なんか、急激に恥ずかしくなり、俺達は無言のままで喫茶店に向かった…




仲睦まじく、手をつなぎ二人は歩いていく…


和人達が向かう喫茶店…洋風喫茶『ブロッサム』。


そこでは、一種の修羅場が待ち受けていることを、今のこの二人には知る由も無かった。





更新完了。それと同時に沢山の感想ありがとう!


霞「うんうん。紅桜先生と黒羽先生が人気あるね〜。さりげなくボクも話題に出てたし。そろそろ出番が…」


出番っていってもね〜。てか、キミは何気にヒロインの中で出演してる方だよ


霞「えーーー!何処が!?」


だって、ほら、あとがきに毎回出てくるじゃないか


霞「でも、本編には出てきてないじゃない」


……さてさて、次回ですが


霞「都合が悪くなったらいつもこれだ…大人ってのは卑怯だ!ぶーぶー」


ブロッサムに行っちゃいます。待ち受けるのは当然、あの二方!


霞「琴乃さん、いいな〜デートいいな〜〜」


果たして…無事、修羅場という戦場を潜り抜けることが出来るのでしょうか。和人君ガンバれー


霞「……最後まで無視ですか!?」


では、今回は此の辺で…では、今回も感想をよろしくお願いします。

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