表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rumble  作者: 久遠
22/38

第21話:光琳の教師達

個性豊かな生徒が集う光琳高校…


だが、個性豊かなのは生徒だけではない。教師陣も普通とはいえない、個性の強い面々が揃っている。


校長の狩谷美鈴の『愛の伝道師』。3−D担任の現国教諭、御堂真希の『魔弾の射手』というような、個性の強い教師には得てして称号が与えられる。


誰が与えているかは謎で、何時の間にか、生徒達に認知されているのだが、とにかく、称号が与えられるのだ。


そしてこの二人の他にも、称号を持つ。個性の強い先生達が居る…




「御堂先輩!授業中に騒がないようにきちんと勉強させてください!」


「へーへー…ったく、小姑みてぇに。ガミガミガミガミ言いやがって…」


その日の放課後。職員室では、先程の騒ぎの件で、真希は説教をされていた…


「き、聞いてるんですか!?大体!先輩は毎回毎回…」


「聞いてるって…だから、そう怒鳴るなよ。紅桜」


紅桜べにざくら れい同じ大学の後輩で、教師としても後輩に当たる人物で、担当科目は数学。3−Cの担任で剣道部の顧問、いつも着物を着ているのが特徴的だ。そしてもう一つの特徴が彼女の称号…『紅の舞姫』の所以になっている。


もう一つの特徴…それは、紅色の木刀を常に持ち歩いていると言う事である。


その木刀で行われる剣舞は、剣筋に赤い軌跡が残る…その姿からそう呼ばれるようになった。


授業中でもその木刀は時に断罪、時に教鞭として使用されている…


凛とした顔立ちに長く艶やかな黒髪を半ばで一本に束ねており、着物と木刀が合間って。日本的な美を感じさせる。


そのため、初見で生徒達は驚くものの、二度目から誰もが突っ込まなくなる。それがデフォルト化してしまうのだ…


「生徒を導くはずの教師が何をやってるんですか!?って!?こっちを向いて真剣に聞いてください!」


「今忙しんだよ!チョークを補充してんだからよ!邪魔すんな!」


しっしっと追い払うような仕草をし、拳銃の弾丸を磨くような仕草をし、チョークを一本、一本、ケースと、ベルトに装着していく真希


「…あなたって人は…言葉で言っても分からないようですね…」


「やろってのか?学生時代からの戦績はあたしの圧勝だ…やるだけ無駄だが…売られた喧嘩は買うぜ……」


互いに木刀とチョークという得物を構え、ビリビリと殺気をぶつけ合う。巻き添えを恐れ、周りの教師陣は既に退避を完了している。


そんな、一触即発といった二人の間に…


「もう〜。真希ちゃんも麗ちゃん〜。めっ!!」


一人の女性教師が割ってはいる


「うげっ!?恋!?」


「よ、よよよ…羊ヶ崎先輩!?」


動揺し、慌てて距離をとり、体裁を取り繕う二人。そんな二人をニコニコと笑みを浮かべて眺めている一人の女性


羊ヶようがさき れん。高校時代からの真希の親友で、大学の同期。光琳でも同僚。担当科目は英語で3−Bの担任。愛の手料理クラブの顧問である。


ふわふわのウェーブがかかったブロンドの髪と見るもの全てを癒し、男性を虜にする微笑を浮かべ、その抜群のスタイルはスーツの下からでも自己主張を忘れていない…


そんな、およそ争いごとには似合わない彼女だが、真希と麗はだらだらと汗を流している上に、顔色が悪い…それもそうである。彼女の称号は


『罪悪の女神』である。


その称号は罪悪を司る女神という意味である。恋の微笑みはまさに天使…だが、その笑みが悲しみに染まるとき、人はその罪悪感で押しつぶされそうになるのだ…


本人は自覚しているわけでも、謀っているわけでもない。まさに、純真そのもの。今の世には絶滅危惧種に指定された大人の一人である。


かの氷室和人ですら遅刻をした際に、土下座で謝罪し、以降、恋の授業の際に遅刻をしなくなったことからその力の凄さが伺え…


『いや〜、羊ヶ崎先生が担任じゃ無くて良かった。本当に助かった!御堂先生ありがとう!!』と和人が述べていたという証言もある。


「喧嘩しちゃ駄目ぇ〜」


「い、嫌だな〜あたしと麗が喧嘩なんて…な、なぁ?」


「そ、そうですよ。御堂先輩と私は、な、仲良しです!」


「よかったぁ〜〜。それとぉ〜、ひーたんは頑張り屋だよねぇ〜。恋、いっぱぁ〜い。褒めちゃうよぉ〜」


独特の口調と、唐突に話題を変えられ、完全に毒気が抜かれた二人は疲れたような顔で、話を聞いていた。


「ひーたん?誰の事だそりゃ?」


「ひーたんは〜、ひーたん。氷室くんのことぉ〜。すごぉいよね〜満点なんてぇ〜」


「あぁ、氷室和人君ですね。確かに、数学でも満点でしたし…」


「元々出来る奴だからな〜真面目にやりさえすれば。おまけに、あたしの人生で最大の宿敵!ふふふ、ぜってぇ、氷室に一発当ててやる」


「あん。駄目よぉ〜意地悪しちゃ〜いい子なんだしぃ〜」


「そうですよ。幾ら何でも問題がない生徒にチョーク投げは…」


メラメラと燃えている真希を二人が嗜める…


「………待て…今、なんつった?」


「だからぁ〜、いい子なんだから虐めちゃ駄目よぉ〜」


「そうです。優等生じゃないですか。彼は、確かに外見は銀髪ですが、あれは、生まれつきで、染めたわけではありませんし…」


「………はあ!?お、お前ら何言ってんだ!?あいつは遅刻の常習犯で!授業のサボりの常習犯で!居眠りの常習犯なんだぞ!!」


真希の言葉に、二人は顔を見合わせる。何言ってんだこいつ?的な反応である。


「ひーたんは〜、めっ!ってしたら、ごめんなさいしたよぉ〜。それから、一回も遅刻なんてしてないしぃ〜。居眠りもしないよぉ〜」


「私もです。指されたらきちんと答えますし、宿題もやってきますし、遅刻もしません」


「ば、馬鹿な!!あ、ありえねぇーーー!!」


そう叫ぶ真希。


(いや待て、待て、考えろ。考えるんだ。あいつの寝起きの悪さは橘から聞く限りは相当なもんだ。あたしの授業だけ狙って遅刻するとはおもえねぇ…ん?まてよ…となると…)


「なぁ、お前ら。うちのクラスの授業は何限目にある?」


「? えっとぉ〜。確かぁ、殆どが3限目とか4限目だよぉ〜」


「私は6限が多いですね。後は、4限と3限に一コマずつ…」


「麗、曜日とか詳しく教えろ!!」


「え、えぇ、構いませんよ」


真希の気迫に若干戸惑いながら、麗は説明をする。


「なんなのぉ〜?」


不思議そうに首を傾げる恋。


そして、説明を聞き終わった真希は…


「…あんにゃろ……なるほど、全て合点がいった…」


ボキボキと手に持っていたチョークを握り砕きながら、そう告げた。



大方、真希の推理は当たりだ。真相はこうだ。


まず、和人が遅刻してきた場合の時間は2限目の半というのが大半を占めており、英語と数学はそれ以降。当然、遅刻はしない。


居眠りについても、遅刻してまで寝るのだから眠気もあまり無いと思える。食後の満腹感と春の陽気で5限目も寝ていることが多い居のだが、6限目には起床し、授業を受けている。

そのことから、この二人は和人の素行がいい部分しか見ていないのだ。いや、恋の場合、一回遅刻して、痛い目を見た経験から意図的に注意しているという点があるのだが…


「仮に、御堂先輩の言うとおりの生徒だとしても、私の『紅月』の錆にするだけです」


刀身が赤い木刀…『紅月』の柄の部分をさわり、不敵に微笑む麗


「いんや、テメーの剣じゃあいつは捕らえられねぇよ。あいつを殺るのは…あたしだ」


「……聞き捨てなりませんね…私が遅れを取るとでも?」


「あぁ、止めとくのが無難だぜ?プライドが傷つけられたくなきゃな……」


「……表に出ましょう。…先程の決着をつけてあげますよ」


「……上等だ。氷室の前に、あたしが……」


再び、殺気の篭った視線が交差する。木刀とチョークを構え、臨戦態勢…


「だからぁ、めっ!!喧嘩しないのぉ〜。け、けんかしちゃ…」


恋の声が次第に涙声に変わっていく。途端に、罪悪感に包まれ、慌てて二人が宥め始めた。


「う、うぁああ。な、泣くな。ほら、あたしたちは、じ、じゃれ合ってただけだ!な!そ、そうだよな?麗!」


「も、もちろんですよ」


「……ホント?」


「「本当、本当」」


「……よかったぁ〜。皆、仲良しぃ〜」


ニコニコと笑みを浮かべる恋と疲れたようにぐったりとする真希と麗は実に対照的であった。


「実際さ、あたしとお前が戦う必要は無いんだよな」


「そうですね…要は私が氷室君に一撃入れればいいんですし…とは言ったものの、理由無く教師が生徒に攻撃するのも…」


二人は恋に聞こえないようにぼそぼそと内緒話をする。恋といえば、二人の仲良しぶりに満足したのか、自分の机に移動し、板チョコを頬張りつつ、二人の姿を眺めて微笑んでいる。


そして、麗の言葉に真希はにやりと不敵に笑い…


「大丈夫だ。戦いの舞台はある…あとは待つだけだ…」


「まさか…あれですか?確かに、あれなら合法的に氷室君と戦うことが出来ますが…」


「あぁ、これは機密情報なんだが、既に氷室はエントリー済みだ。強制的にな。お前も出るんだろ?」


「えぇ、もちろんです。確か、D組には橘も居ましたね…。ふふ、楽しみです」


何やら画策する二人……。なんだかんだで、二人はいいコンビなのである…



――Side Kazuto Himuro


「…くしゅん……」


「……風邪?」


「…どうでしょう?寒気もするし…今晩は念のため早めに寝ます」


「…可愛いね…」


「何がです?」


「……くしゃみ…」


うっ、なんか嬉しくない…


放課後、何時もなら速攻で帰るのだが、放課後まで倒れたままだった琢磨をようやく保健室に連れて来てやった。


そんな経緯から現在、保健室で先生にからかわれている。


「どうですか?黒羽先生」


「……大丈夫…ちょっと…幽体離脱してるだけ…」


いや、それって駄目なんじゃ…


けど、黒羽先生なら何とかしてくれるだろう。


光琳学園のNO1.ミステリースポットである保健室。そこの主がこの人。黒羽くろはね 奈緒なお先生である。


保健室の中は暗幕で覆われた闇が支配しており、明かりといえば蝋燭だけ。そんな奇妙な保健室に近寄る生徒は稀であり、それがゆえにミステリースポットとなっている。


黒羽先生も『黒衣の堕天使』なんて称号が付けられており、その名の通り、保険医の象徴たる白衣の変わりに黒衣を纏っている。


外見はまるで中学生といった感じだ。背は低く、顔立ち幼く、クリーム色の短い髪も子供っぽく見えるのだろう。性格は内気…というのだろうか。あまり人と話すタイプじゃないのが、保健室の異次元空間と合間って人は寄り付かなくなっている原因だ。


皆は怖がっているが、俺はこの先生が好きである。あ、loveじゃなくて、likeの方でだ。


分かりにくいけど、この人は優しいし、なんか気が合うって言うか…落ち着く。それに、此処は絶好の昼寝スポットだし。暗いし眠りやすい。まぁ、明るくても寝れるけど…


「…ヒム君…これ……」


「なんです?」


「…風邪薬……。一人暮らしなんだから…風邪引いたら…致命傷になる……予防」


ほらね。かなり優しい。まったく、何処が怖いんだか…。


「ありがとうございます」


「ん……お茶…飲んでくといい…」


「あ、はい。琢磨は?大丈夫ですか?」


お茶の用意をしながら、黒羽先生が言う


「……注射した……そのうち起きる……」


いつの間に…


「さっき…ヒム君が…loveじゃなくて……likeって…言った時…」


いや、言ってないから


「そう?」


黒羽先生は不思議だ…。何故か、考えていることが伝わってしまう。はっ、これがシンパシーというヤツなのか!?


「…ちょっと…残念……」


「…何がですか?」


お茶の用意を終えた先生が戻ってきて、開口一番にそう切り出した。


「…loveがよかった……」


な、なんか、トンデモナイコトヲ言われましたYO!


「え!?あ、えっと…その〜。せ、先生と生徒ですし…問題が…いや、あの校長なら問題は無いんでしょうが、倫理的に…」


「…くす…冗談…」


くっ、やられた。


何気にお茶目なこの人はこうやって俺をからかう。にしても、演技力すげぇな…女優になれるかも…


「ならない、カメラ嫌い」


「さいですか」


もう、喋る必要が無いんじゃないかと思い始めつつも、やっぱり、口を開く。うん、やっぱり、伝えたいことは言葉にしないとね


「幽体離脱って、注射で治るんですか?」


「…特別製……肉体にショックを与えて…戻す………」


ズズズとお茶を啜りながら語る。先生が淹れてくれたのは緑茶。日本人の心だなぁ〜。細かいこと突っ込んだところで理解は出来ないのだから、お茶を楽しもう。無駄な、徒労はしたくない…


「……ヒム君、気をつけて…」


「何にですか?」


「今度の球技大会…マッキーとレイレイが何か企んでる……よくないこと……」


マッキーとレイレイとは御堂先生と紅桜先生のことだ。俺の事をヒム君と呼ぶことからも分かるが、この人はちょっと個性的な呼称をする。


「……気をつけたところで、どうにかなるんですか?」


「……無理…だと思う…」


やっぱりな…


「なら、諦めて受け入れます。でも、忠告ありがとうございます」


「ん…それと…ヒム君」


「まだなんかあるんですか?黒羽先生」


「……それ…前から気になってた……」


「どれです?」


「黒羽先生…じゃない…奈緒……もしくは……ナ〜オ…て呼んで…?」


「は?で、ですけど、先生ですし…そんな軽々しく…」


「……呼ぶ!」


珍しく、若干強めの口調の黒羽先生。あ、あの…キラリと光る。手に持っているメスはなんなんでしょ


「……メス…だけど?」


「いや、それは見れば分かります。今現在手に持っている理由を聞いて…はいないですけど…聞こうとしたんです」


「…保険医の…必需品……肌身離さず…」


いや、要らないだろ。明らかに…。あぁ、でもこの人は確か、医師免許持ってるんだよな…


なんで保険医やってるんだろ?


「…そんなことは…いい……呼ぶ…」


「……ふぅ〜分かりました。奈緒……さん…。奈緒さんでお願いします。呼び捨ては流石に勘弁してください。ナ〜オはもっと勘弁してください」


「……分かった……それで…いい」


ふぅ〜よかった。不満そうに言うが、少し喜んでいるみたいだ。


「…じゃ…これ……あげる…ご褒美」


「? チケットですか?」


黒羽…な、奈緒さんの黒衣のポケットからは二枚の映画のチケットが出てきて、手渡された。


「…貰ったんだけど……興味ないから…ヒム君にあげる……」


いや、俺も貰ってもな…


渡されたチケットをマジマジと見る。この映画は…確か…今、女子の間で有名な恋愛映画だったような気がする。けどな〜正直、俺も映画なんぞ殆ど見にいった事がないから興味なんぞ……


「あっ…」


いや、見にいこうとしたんだ。あの日……琴乃と……


「……奈緒さん。これ、ありがたく頂きます」


「ん……デート……頑張る」


奈緒さんがそう言ってお茶を啜る。


さて…今週……琴乃の奴は空いてるかな……


あの時のリベンジじゃないけど…今度こそ。


出来なかった…一緒に映画を見にいきたいという約束を


少し遅くなったけど、果たそうと思った……













更新完了。っと、同時にごめんなさい!


霞「ど、どうしたのいきなり…」


いや、勢いで書いたら長々となった挙句、まとまってないような気がしてねぇ〜。修正してまとめようにも、実力不足でして…インポッシブル!!


霞「それで、そのまま更新?」


うわ〜ん…ごめんよぉ〜。最近スランプ気味だしさぁ〜。


霞「はぁ…ボクを出さないからこうなるんだよ。どう?次回からボクも…」


さて、今回のお話ですが…


霞「無視ですか!?」


沢山、新キャラがでましたね。あ、言っておきますが、彼女達は今のところサブキャラでヒロインとかじゃありませ〜ん。


霞「ほっ、また、強力なライバルが増えるかと思った…あの、保健の先生とか可愛いかったし…」


ふふ、甘いね…あくまで現時点での話し…。反響次第で……霞ちゃん喰われちゃうよ?


霞「ぼ、ボクを出さないのにそれはずるいよ!」


いやね、奈緒先生は結構考えたよ。ほら、保健の先生って大体さ、色気がある大人の人で、男子生徒の集会所みたいなイメージがあるじゃん?


霞「ま、まぁ、それが王道なんだろうけど…」


でしょ?だから、あえて子供+不思議ちゃんでいって見た。当初は科学の担当ってのも考えたんだけどね。


霞「ふ〜ん」


さてさて、今回はこんなところですかね。あ、よろしかったら感想に教師陣の感想などもお聞かせください。


みんなでヒロインを蹴落そう!


霞「へ、変な先導しないでよ!あ、上の一文は忘れてください。あくまで、純粋な感想をお願いします」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ