第1話:新学期 前編
季節は春…一年でもっとも俺を眠りの世界に誘う季節。
しかし…
「こら、起きろ!!」
「Zzz……」
「起きろって言ってるでしょ!この!」
「ぐっ…!?」
惰眠を満喫していたら、鳩尾に肘を落とされました…い、痛い…
「ゴホ…あ…彩花…俺を殺す気か!?」
「やっと起きたわね。おはよ和人♪」
「ふざけんな!!永久の眠りにつくとこだったわ!」
「あんたならあれくらいやっても大丈夫よ」
「…釈然としないけど。とりあえず。おはよう彩花」
「のんびり挨拶してないで、さっさと着替える!まったく…今日から三年なのよ」
挨拶は重要だぞ。人として…ま、それはいいとして
「あのさ…」
「何よ?」
「そこにいられると着替えられないんだが…俺の裸体がそんなに見たいのか?」
その言葉に彩花の顔が真っ赤に染まる
「そ、そんな分けないでしょ!馬鹿!スケベ!痴漢!」
「待てや!痴漢はどう考えてもおかしいだろ!って、居ねぇし…」
あのアマ…言うだけ言っといて逃げやがった…
とりあえず、待たせるのもなんなので制服に着替え、洗面所で身だしなみをチェックし、リビングに向かった。
「和人、朝ごはんはトーストでいいよね?嫌だって言ってももう焼いてあるんだけど…」
「ごほ、ごほ、いつもすまんな…お前には迷惑ばかりかけて…」
「いいのよおじいちゃん。って、何やらせんのよ!!」
ナイスなノリツッコミですね〜
そんなことを思いつつ、ソファーに座り、俺はテレビをつけ、それを見ながら彩花が用意したトーストを食べ始めた。彩花も隣に座ってコーヒーを飲みつつ、テレビを見ている。
「時間はまだかなりの余裕があるな」
「感謝しなさい。余裕があるように起こしてあげたんだから」
「遅刻なら遅刻で別に…いえ、なんでもありません」
途中で彩花が睨んだので語尾を変える…だって怖いんだもん…
だが、やられっぱなしは悔しいな…ふっふっふ、ここは反撃に出ねば…
「にしてもさ…」
「ん?」
コーヒーを口に含んだところを見計らって俺は告げる。
「この状況、新婚夫婦みたいだよな」
「――――っ!?ケホ、ケホ…」
咽とる、咽とる。ちょっとやり過ぎたかな
「大丈夫か?」
背中をさすってやる
「あ、ありがと。もう大丈夫って、あ、あんたが変なこと言うからじゃないの!」
「少しからかっただけだよ」
「何よ…一瞬本気にしちゃったじゃない…」
小声で何かを呟く彩花
「何か言った?」
「な、なんでもないわよ!ほ、ほら食べ終ったんなら食器貸しなさいよ!」
まだ半分近くコーヒーが残っているカップを強引に奪うと彩花は台所に行ってしまった。訳がわからん…
「そろそろ行きましょうか」
洗い物を済ませた彩花が戻って来てそう告げる
「そうだな」
俺達は鞄を持ち、閉じまりをして外に出た
「じゃ、頑張ってね和人♪」
彩花愛用の水色の自転車の後ろに座り、そんな事をのたまう
「俺にこげと?」
「何よ、女の子にこがせる気?」
「俺的価値基準で言うと、お前は女の子のカテゴリーに……さて、じゃしっかり捕まってろよ!」
属していないと言おうとしたところで彩花の殺気が強まったのを感じて慌てて誤魔化し、自転車をこぎはじめた。
朝の心地よい空気の中、平坦な道をかっ飛ばす。彩花は俺の腰に若干強めに抱きついており…何やら柔らかい感触が背中に…こ、こいつ、結構スタイルが…って、なに考えてんだ俺は…
そんな考えを振り払うために俺は口を開く
「にしても…お前、太った?去年よりも重いような……痛!こ、こら暴れるな!危ないって!」
「ガルルル、ガウッ!」
「痛い!って、噛みつくな獸!」
肩を噛みつかれた。あ、あまりの怒りに獣化してやがる
「グルゥゥゥ」
「怖!どっから声だしてんだよお前…」
そもそも人間が出せるような声じゃないような…このままでは彩花は人の道からコースアウトしてしまう…
「じ、冗談だよ。剣道やってるし、十分スリムだって…さっきのは、俺に自転車こがしてる腹いせだって」
その言葉に唸り声と攻撃が収まる
「そうよね〜まったく変なこと言わないでよ…今度、言ったら…」
そこで黙られると滅茶苦茶怖い…さらに殺気を感じる。今後、女性に体重の話題を避けようと心に誓った
そんな事をしているうちに学校前の急な登り坂に差し掛かろうとしていた。
あの攻撃の中でこぎ続けていた俺の根性とバランス感覚を誉め称えたいと思う。
「ふぅ〜じゃラスト気合いいれますか」
「頑張れ和人♪」
気安く言うがこの坂は自転車通学者の三人に一人しか立ちこぎで登り、残りは押して登る。そんな急な坂を二人乗りで登ろうというのだから無謀に近い。だが…
「はぁ、はぁ…ぜはー…ど、どうだ…」
登りきった。汗だくだ〜
「流石、和人!」
ったく、途中で何度落としてやろうかと思ったことだろうか…
「はぁ、はぁ。と、とりあえず、じ、自転車を、置きに…行こう…ぜ」
息を整えつつ自転車置き場に向かう
「お疲れ和人。大丈夫?」
「しんどい…」
「ご褒美にジュース奢ってあげる」
彩花は機嫌がいいようだ。だが、褒美がジュースだけっていうのはあまりにも、つりあわない気がそこはかとなくする
「何よ…いらないの?」
「え、エスパー!?」
「声に出てたわよ。さ、馬鹿やってないで早く行きましょ」
自転車を置いて、俺達は玄関に向かった
玄関前にある掲示板には人だかりが出来ていた。クラスの発表がされているのだ。
「これじゃ、見えないわね…」
「だな…」
しかし、此処でこうしている訳にも行かず、どうしようか考えていると…
「おーい、二人とも〜」
人混みから冬至が抜け出てやってきた
「おはよう。冬至」
「おはよ」
「二人ともおはよう。橘さんご苦労様。大方こいつを起こしに行ってたんでしょう?」
「ええ、もう大変だったわよ…」
いや待て、俺の方がはるかに大変だったと記憶しているが、気のせいなのでしょうか…
「あはは、クラス発表見てきたけど、二人とも同じクラスでD組。俺と白樺さんは残念ながらC組だ」
「な、何ですと!」
「そ、そんなに驚くような事じゃないじゃない」
彩花が呆れたように言うが、俺にとっては一大事だ
「お前らが居なかったら…誰が彩花の暴走を止めるんだ…」
「な、なんですってーー!!」
「さらに、冬至!お前以外が委員長になったら気分よく遅刻が出来ないじゃないか!」
「遅刻をしないという選択肢はないのか…」
「はっはっは、何を馬鹿な…そんなことが出来るならとっくにやっている!」
「威張るようなことか!!」
彩花のツッコミが冴えてるな
「ま、冗談はともかく、そろそろ教室に行くか。違うクラスなのは決定事項だしな」
「そうね」
「だな」
クラスも分かったので俺達は三年の教室に向うことにした
「俺はここだから。和人、あんまり橘さんに迷惑をかけるなよ。橘さんもほどほどにね」
「そうだぞ彩花、ほどほどにしとけよ」
「あんたが言うな!!」
そんなやりとりをし、冬至と別れ、D組の教室に到着し、中に入る
俺を見た瞬間、クラスの雰囲気が変わったのは気のせいではないだろう
「和人…」
心配そうに俺の名を呼ぶ、彩花
「…気にしないで、適当に座ろうぜ」
とりあえず窓際の前から三番目辺りの席に彩花と座った。すると、後ろから声をかけられた
「あら、ごきげんよう氷室さん。私と同じクラスになれてさぞ光栄でしょう」
金髪のセミロングのお嬢様オーラを出している美人がそんな事を言ってくる
「???」
誰だっけ…まったく記憶にない。こんな存在感がある人間を忘れる訳はないと思うのだが…
「あら、あまりの嬉しさに声も出ないのかしら?お気持ちは分かりますけど、無反応は失礼ですわよ」
話せば話すほど接点が分からない。彩花なら知ってるかも…。そう考え、小声で彩花に聞く
「なぁ、この人誰だっけ」
「な!?」
小声で話したつもりが聞こえてしまったらしい…地獄耳だな
「誰って、北條さんでしょ、北條紗耶香さん。うちの生徒会長で、あの有名な北條財閥の令嬢で、成績優秀、スポーツ万能で学園でも有名人。あの水野ひかりと並んで学園のタブルプリンセスって呼ばれてるのよ?」
「北條紗耶香………やっぱり知らないな〜 」
評判はどうあれ、会った記憶が皆無である
「ふふふ、忘れたとは言わせませんわよ。去年の夏、模試であなたは前回からトップだった私を抜いて、全国トップを取った男…私はその屈辱を胸に再びトップにかり咲いた私の名を忘れたとは言わせませんわ!」
そんな北條さんの話を聞いた彩花が驚愕の表情を浮かべる
「あ、あんた模試でトップ取ったことあるの?」
「みたいだな」
「みたいだなって、自分の事でしょ!?」
確かに去年の夏に冬至に付き合わされ模試を受けたけど…
「面倒くさいから結果を貰ってなかったからな〜。あと北條さん。悪いけど、会った事ない人の名前まで覚えてられない」
俺の言葉を聞くと北條さんは俯く
「……ふふふ…氷室和人…私を此処まで狼席を働いた人類はあなたが初めてですわ……これから私の名前を脳裏に刻みつけて差し上げますわ!」
はぁ〜なんか変な人に目をつけられた…
更新完了〜
彩花「うっさい!最初の投稿からどれだけ経ってるとおもってるの!」
だって俺の執筆時間って大学の講義中がほとんどなんだもん…ほら、夏休みに入っちゃったから…でもまた大学が始まったから執筆再開!
彩花「はぁ〜…ま、今回は私と和人の絡みが多かったから勘弁してあげる」
サンクス!さて、今回の話には新キャラが登場!まずはお嬢様。次回はあの人が登場するよ!
彩花「プロローグに少し出てたあの子ね」
うん。だから次回も頑張りますので感想お願いします
彩花「よろしくね〜」