第18話:中間テストの期間に入ります
――Side Kazuto Himuro
「Soraちゃん最高!!」
「……朝から何度目だよ。まったく飯くらい大人しく食え」
GWも明け、いつも通りの学校生活。
俺はといえば、合宿で気合十分。妙に、テンションが高い彩花にたたき起こされて今日は遅刻せずに登校。
まぁ、二限目まで机に突っ伏して爆睡してたが…
そんなこんなで昼休み。今日は、お馴染みの男子メンバーだけで屋上に集まり、昼食を取っているのだが、これまた妙にテンションが高い琢磨がウザいことこの上ない…
「だってさ〜凄かったんだぜライブ。Soraちゃんも何時もより笑顔だしさ…それに!俺に向かって微笑んだんだぜ!?」
朝からこんな調子だし…はぁ〜
「…妄想も此処までくると大したもんだな」
「もう病気だな…」
「僕の情報網でももう琢磨を治せる医者はみつからなかったよ」
冬至とハジも疲れたようにため息を吐いている。
「お前ら!人をそんな哀れむような目で見るな!!」
「はいはい。それは分かったけど。琢磨、もうそろそろ中間テストだけどいいの?」
「うぐっ!大丈夫さ…多分、補習は免れると思…いたいぜ…」
「たとえ、補習を免れたとしても、クラスの皆からフクロにされなきゃいいがな…」
俺の言葉にビクッと震え上がる。
光琳高校の一学期しょっぱなの中間テストは一筋縄ではいかない。
というのも、この中間テストで今年一年の高校生活がどうなるかを大きく左右するからだ。
この中間テストではクラス平均ごとに順位が決められ、上位者の点数と共に廊下に張り出される。そして、一位のクラスから200p、150、100、というようなポイントが貰える。
このポイントは来月に行われる球技大会のポイントに加算される。これは文武両道の光琳が球技大会で文の部分を考慮したシステムになっている。
さて…ここで重要なのが球技大会についてである。
この球技大会は順位によって賞金が出るのだ
だが、賞金といってもこれはクラスごとに貰えるもので、まぁ言ってしまえばクラス予算である。
必要最低限の予算は各クラスごとに用意してあるのだが、+aとしてこの賞金が入ることにより、文化祭で他クラスよりも凝った出し物や派手な打ち上げが可能となるのだ。
さらに、今後の行事の際に特別優遇権が手に入る。
特別優遇権とは文化祭の特別教室が優先的に利用できるという権利である。
その一方で、最下位のクラスは行事などの雑用が義務付けられてしまう…
このシステムは三年になればなるほど、皆、必死になる。最後の学校生活を派手に彩るためだろう…だが、可哀想なのは一年生である。
何も知らない一年生はここで初めて洗礼を受け、来年から必死で勝ちにくるようになるのだ。まぁ、皆通った道だから、我慢してくれ。
長々と語ったが、これで中間テストの重要性が分かって貰えたと思う。
「今年は彩花も居るからな〜暴走したら手をつけられねーぞ…」
「御堂先生が担任でもあるからな…ご愁傷様、琢磨」
「ま、まだ決まった訳じゃねーー」
そうそう…言い忘れていたが、実は優勝したクラスの担任にはボーナスUPという特典があるのだ。だからこそ、先生とクラス一丸となれる。
俺としては動機がすげぇ不順だと感じるが…まぁ、盛り上がるからいいか
「でもお前のクラス、北條さん居るんだろ?和人も居るし、かなり有利だよな」
「沙耶香はともかく、俺は別にな…普通だろ」
「模試で全国トップとった人間を普通とは呼ばないよ…」
「な、なにぃいいい!?マジかそれ!だって、こいつテスト結果だと上位には居ないじゃないか!」
過剰なまでに琢磨が反応する。遅刻仲間だから俺も危険区域人物だと思っていたのだろう…ちょっと心外だ
「僕のデータによるとね。和君の3学期の期末テスト結果の一部なんだけど英語、数学、科学は100点満点なんだ。でも他の教科の平均が65点」
な、なんで、ハジが俺の答案を知っているんだ?彩花にすら見せないようにしてるってのに…
だって、見せたら確実に怒られるし…
「俺も、それは疑問に思ってたんだ…。その3教科が得意って訳じゃないよな?」
「うん、二学期の結果だと、英語が50点、数学が65点、科学が74点だから、それは違うんだ。で、詳しく調べたんだけど…」
「な、なんだよ!もったいぶるなよハジ!」
琢磨がハジに続きをほだす。ハジは俺に言ってもいい?と目で訴えてくる。
「彩花の耳に入らなきゃ構わない」
「うん、じゃあ、言うよ。和君は…テスト中に寝ちゃうんだよ…」
「「………は?」」
ハジの突拍子もないことに二人の目が点になる。
「ね、寝てるって…テストなのにか?」
「ま、マジかよ氷室」
「あっはっは、解いてるうちにこてんと意識が落ちるんだ。あのみんなのカリカリっていう筆音と文字、数字の羅列が俺を眠りにいざなう。でも頑張って半分くらいは解いてるんだぞ」
彩花に知られたら『アホかーーーー!!』って殴られるだろうな。あぁ、怖い…
「じ、じゃ、模試の時はどうだったんだ?朝早かったし眠かったんじゃ…」
「あぁ、あの日は前日惰眠を貪りまくってだいたい20時間くらい寝てたからな。流石に眠くはならなかったから」
大体、眠かったら模試なんぞ受けに行かないしな…
「お、お前…成績とか気にしないのか?」
「そんなに気にはしないな。俺の場合、成績が云々と言うより、素行が悪いので有名だからな。成績が多少良くてもそんなに良いイメージに働かないと思うし、そもそも、あんな紙切れで人の価値を図られてたまるか」
「…言ってることは最もみたいな感じだが、それだと、現在の教育全てを否定してるぞ」
「別に、否定してるわけじゃない。ただ、俺とは合わないという意見を自分なりに述べただけだ。感受性は人それぞれ違うからな…。そういう教育システムが受け入れられているということはそれが普通なんだろうな。俺の考え方が人とは違うってだけだ」
良い成績を取るのは、将来のため、自分の力を誇示したいがためとか色々あるだろう…だが、俺には特に理由が無い…
自分の力を誇示したいとは思わないし、将来とかは別に考えない…
今日、一日一日を楽しく生きられればそれでいい。未来のこととか考えても人間なんて何時死ぬか分からない。
だったら、極端な話しだが、何時死んでもいいように、楽しく生きるだけさ。
人それぞれ考え方は違う。これが俺の考え方。
「でもよ…そうは言ってもお前、頭いいじゃん。言ってること矛盾しているだろ!」
納得いかないという風に琢磨が聞いてきた
「俺は昔からは物覚えは良くてな…集中している状態で見たり、聞いたりした事は一回で覚えられるんだ。中学のときに、学校がつまらなくてすることが無かったから、ずっと授業中とか参考書とか教科書読んでたから…その時に覚えたことがテストに役に立ってるんだ」
中学の範囲はすぐに読んでしまったから、高校の範囲まで完全に覚えた。けど、今、一番役にたっているのは、料理のレシピだ。
三分クッキングとかでも一回で覚えられるし、料理番組でもプロの技を記憶するようにしてるから、レシピは豊富だ。
生きる上で食事は大切だ。より安く、美味く、量が多い物を作る事を目標としてる。
「んなのってありかよ…」
「…秀才と天才の違いか……」
「一文字?」
琢磨が憮然と言い捨てると、ハジがそう呟く。それに関して冬至が問いかける
「ねぇ、時雨君、秀才と天才って何が違うか分かるかい?」
「? 秀才より優れているのが天才なんじゃないのか?」
「間違ってないけど…じゃさ、秀才と天才の線引きって何処からすると思う?」
「え?う〜ん…すまん。分からない」
「これは、僕の持論なんだけど。秀才っていうの、は物事の理解度が早く、努力して普通の人より高い位置に居る人だと思うんだ。でも、天才は物事を理解する力がそれ以上で、努力しなくても同じ高みに到達できる人だと思うんだ。だから、世間一般で天才って呼ばれてるのは実は秀才で、天才って言うのはその中でもほんの一握りの人間だと思うんだ」
「つまり…和人は天才って事か?」
「うん、僕の考え方ならならね」
「よ、よせやい!照れるじゃねーか!!んな大層なもんじゃねーって!あ、もうすぐ昼休み終わるし、俺は先に戻ってるからな!」
俺は逃げるように、屋上を後にする。体が何かムズ痒かった…
「さて、第何回目か忘れたけど…とにかく、お馬鹿な彩花救済のお勉強会を開始しまーす」
「ば、馬鹿とは何よ!ちょっと成績悪いだけじゃない!!」
「はいはい、無駄口叩かずやったやった。それにさ、馬鹿っていうのは成績が悪いからじゃなくて、成績悪いのに勉強とか一人じゃやろうとしないから馬鹿って言ってるんだよ」
「うぅ〜勉強嫌いなんだもん」
「そりゃ、好きな奴は沙耶香くらいだろ」
軽口を叩きつつ、数学の教科書に向かっていく彩花。
テストが近くなり、恒例の『彩花を救済するための勉強会IN氷室家』を開いている。
剣道一直線のこの子は勉強嫌いという事もあいまって、成績があんまりよろしくない。そんな彩花に勉強を教えて、半ば強制に勉強させ赤点を避けさせてあげているのだ。
あぁ、なんて優しいんだろ俺ってば…
「はい、そこ間違いね〜。一回目は許すけど、解説した直後に間違えたから夕飯一品減らすからな。さ〜て、ご飯を食べられるかな〜?」
「お、鬼!鬼畜!!悪魔!!」
「はっはっは、ちなみに制限時間も設けたから無駄口叩く前にやんなさい」
日ごろの惰眠を邪魔され、たたき起こされている恨みを此処で一挙に発散している感はいなめないのだが…結果的に補習を避けられるのだから問題ナッシング!
――Side Ayaka Tatibana
和人との勉強会。
勉強は嫌いだ、それに和人は意地悪をする…。だけど、この勉強会は嫌いじゃなかった…
本質的に優しい和人は丁寧に教えてくれるし。この意地悪は私にやる気を促すために言ってること…
「そこの公式間違ってるぞ。まったく…デザートも半分に減らそうかな…」
……だと思いたいわね…
だけど…
「うん、此処は正解だね。よくやりました〜」
「子供じゃないんだから!頭撫でないでよ!!馬鹿にしてるでしょ!?」
「そんなことありまちぇんよ〜」
「こ、殺す!終わったら覚えてなさいよ!!」
この、なでなでが凄く嬉しく癖になる…
口では文句を言うが、実際は撫でてもらいたくて頑張っているようなものだ……
これが、俗に言うアメと鞭なのだろうか…だとしたら、効果絶大だと身を持って知った…
今後の剣道部の指導で使ってみようかと考え始る…あ、いけない、集中しなきゃ…
「ん、一通り教えたし、あとは反復で同じやり方で出来る問題をやってなさい。俺は夕食を作るからな。出来上がるまでには余裕で終わるだろうから、早く終わったら休んでていいぞ」
「あ…和人……」
それだけ、告げて和人は台所に行ってしまった。うぅ〜もっと撫でられたかったかな…
「でも、やるしかないか…」
折角教えてくれてるんだし、終わらなかったなんていったら、夕飯が食べられなくなるから
私は夕飯ができるまでに、計算式との格闘に没頭していった。
更新完了!
霞「今回の話しはちょっと説明ばっかりだったね。退屈〜」
うぅ〜ごめんよ〜〜
霞「べっつに〜私に謝れてもね〜出番ないしね…当分!!」
…怒ってる、怒ってるよ
霞「で、その分、あとがきに出してくれるんだから感謝しなきゃだよね…」
…ネガティブ…暗いよ霞ちゃん……
霞「先輩はライブ見に来てくれないしさ…そりゃ、人ごみは嫌いだっていうのは分かってるよ。だけどさ……それに、最近になってモテモテみたいだしさ。昔は……」
なんか、ぶつぶつ言い出しちゃったし…。ま、まぁ、今回は此の辺で、ではまた次回にお会いいたしましょう
霞「…なによ。昔はさ、みんなして冷たい目で見てたくせに、掌返してさ…」
あ、あはは…感想いつもありがとうございます。