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Rumble  作者: 久遠
17/38

第16話:ただいま

――Side Kazuto Himuro


「ふぅ…こんなとこかな」


テーブルを拭き終え、部屋を見回す。


5月4日


特に用事も無いので、昼間で惰眠を貪ったのち、ようやく起床


今は、昼食を食べて、ちょっと汚れが気になったので掃除を始め、先程終わらせたところだ。


潔癖症という訳でもないが、掃除は定期的にやっている。じゃないと、おせっかいなお隣さんが文句を言いながら、掃除をしだすからだ…


そのことには感謝なのだが、その前のお説教が堪える


「手と口が同時にでるんだもんな〜」


流石に、掃除機で殴られそうになった時は死を直感した…。まぁ、からかったり、反抗したからなんだけどさ…



「余計なお世話だよ。ったく、彼女でもねぇのに」


「…ふふふ…許さない………殺す!殺してやる!!Guuu!!」


その時に言った事が、何やら、逆鱗に触れたらしく、その日の荒れようは凄いものだった…




「…さてっと…風呂でも入ろうかな」


当時の事を思い出したら寒気がしてきた…ので、忘却の彼方へと追いやり、風呂に入る事にした。


掃除で埃っぽくなることを想定し、あらかじめ風呂を沸かしておいた…準備万端である。




「ふぅ〜昼間から風呂…。最高の贅沢ですな〜」


家の風呂は檜の結構広い風呂で、自慢の一品だ。爺ちゃんが風呂好きだったからな…


そんな至福の時を満喫していると…


―ピンポーン!


来客を告げる音が鳴った


「ったく、誰だよ」


一人暮らしはこういう時に困る。


至福の時を邪魔され、セールスとかだったら鳩尾に一発入れてやろうかと思いながら、身体を拭き、ズボンを履いて、シャツを羽織る


濡れた頭をタオルで拭きながら、玄関に向かい、扉を開け…


「…コホー…コホー…」


「………」


―バタン!


速攻で閉めた。


「な、なんなんだ?あれは…」


玄関の前にいたのは、帽子を被り、サングラスをし、この陽気な春の気温の中、トレンチコートを着て、極め付けにはマスクをし、顔が一切伺えない…


絵に書いた様な怪しい人…。結構希少な生物だとは思うが、好んで見たいとは思わない生き物である…


見なかったことにしようと心に誓うが…


―ピピピピピピピ、ピンポーン!!


向こうは帰ってくれる気は無いらしい。それ何処か…


―ガチャ


入ってきやがった。やべ!鍵掛け忘れた!


こうなったら交戦するしかない!


そう思った矢先に…


「ひっどいな〜閉めるなんて…感動のシーンが台無しだよ!」


「お、女の声!?」


変質者はどうやら女性らしい…。ん?どっかで聞いたことある声だ……


「あぁ!ちょっと待って、ボクこれ脱ぐの忘れてた!今の無し!撮り直し!」


カメラなんぞ何処にもないぞ


意味不明に、一方的に捲くし立てると不審者Aはそのまま出て行った。いや、Aって…BとかCまでいたら困るぞ。


自分で思ったことに突っ込んでいると…


―ガチャ


「先輩!」


「ん?」


不審者Aは可愛い女の子に羽化して返って来た。


マジマジと様子を見る…


「お、お前…まさか」


身長はやや低め、可愛らしく整った顔立ちには満面の笑顔を浮かべており、男ならナンパしたくなるほどの容姿だ。だが、一番の特徴は…


イルカの髪飾りがついた、白く長い髪…


「か、霞?…」


「うん♪ただいま先輩!」


美空霞が成長した姿で、笑顔を浮かべて目の前に立っていた。


「おかえり!まったく、待たせすぎだ。腕は治ったのか?治ってなかったらすぐ叩き出すからな!」


「わぷ!?せ、先輩、ちょ!?ち、近すぎるぅぅ…」


嬉しさと懐かしさで思わず抱きしめる


俺の腕の中でもがいていた霞は、やがてくた〜っと動かなくなる。そんなに強く抱きしめたつもりは無いんだが…


「霞?お〜い、霞ちゃ〜ん?」


風呂上りで若干火照っている和人。さらに、シャツを羽織っただけの上半身は肌が露になっており…


「…裸が…先輩で…」


そんな格好で抱きしめられ、あまりの刺激に霞はオーバーヒートしてしまった。




「先輩…大胆すぎるよ。あんな格好で抱きつくなんて…」


イヤン、イヤンと首を振る霞。


あの後、居間のソファーに霞を寝かせ、ひとまず服を着替えてコーヒーをセットし、戻ってきてみると霞は目を覚ましていた。


「左手…治ったんだな」


「うん、おかげ様でね」


先程から当たり前のように動く霞の左腕を見ながら、微笑む和人。


「よかったな…本当に…」


「先輩…」


その微笑に霞は見惚れる。


(先輩の微笑なんて…初めて見たけど……ポッ)


「? 顔真っ赤だぞ?具合でも悪いのか?」


「な、なんでんなか!」


「そ、そうか…」


明らかにおかしいが、ここは流しておこう。



「ねぇ、先輩。一つ聞いてもいい?」


「ん?」


コーヒーを渡して、霞の対面に座ると霞が切り出した


「ボクを見て、何か感じない?」


「大きくなったな?」


「そりゃそうだよ…。って、違うよ。もっとこう…驚かないの?」


「驚いたよ。あんな格好で唐突に尋ねてきてさ。いつからあんな変質者になったんだ?」


「………ねぇ、もう一つ別の事を聞くけど…Soraって知ってる?」


「あぁ、クラスメートがライブがどうこうって騒いでたな…最も俺は興味無いけど…」


な、なんだ?若干、部屋の温度が下がったような…


「ふ〜ん、興味無いの…」


「ま、まぁな。Soraって人の事よく知らないし、人ごみ嫌いだし。お前も知ってるだろ」


「それは知ってるよ。でさ、SoraをTVとか雑誌とかで見たこと無いの?」


「? やけにこだわるな…」


「いいから教えて」


「聞いた話だとデビューしたのが一年前らしいけど…Soraの存在自体、つい最近知った。TVとか見ないから俺」


何故だろう…殺気を感じるのは…


彩花のようにストレートに来るんじゃなくて、なんつうかこう…じわりじわりと…


「ふ、ふふふ…あはははは…」


「か、霞?」


唐突に霞は狂ったように笑い出し…コーヒーを持ったまま立ち上がると俺の方に歩いてきて…


「…ボクの努力を…想いを…あの気持ちを…返せぇぇ!!」


「な、何キレてんだよ!?」


突如暴れだし、ポカポカと俺を殴りはじめた。


しかし、普段喰らっている彩花の攻撃に比べたら、雲泥の差だ。


下手に避けて刺激することも無いな…


攻撃を受け続け、耐えることにした。


「はぁ、はぁ…」


ひとしきり殴り、若干冷静になった霞は、おもむろにテーブルの上にあったTVのリモコンを手に取り、TVをつけた。


「先輩、TV見て…」


「こんどはなんだ?」


情緒不安定な霞の行動に首を傾げつつも、言われたとおりにTVを見てみる。


「………は?」


ナンデスト?


霞を見て、TVの画面を見る。うん、間違いない


TVには見知った…というか、今、目の前にいる少女がステージで衣装を纏い、歌を歌っている。



「知らなかった…」


「遅いよ!でもこれで分かってくれ…「お前にそっくりだな…。知り合いか?」…って!違うよ!これボクだよ!!」


「………」


「………」


互いに沈黙…今、凄いこと言ったよな?


「待て待て…なんだって?」


「だからこれはボク!ボクがSoraなんだよ!!」


霞がSora?芸能人?アイドル?いや、おかしいだろ!だって、霞が帰ってきたのは今日…とは言わないけど、今年に入ってからのはず…


で、Soraがデビューしたのが…確か、琢磨が去年だって言ってたよな…


どういうことだ?霞がSoraって事は、一年前に帰ってきてたって事か?


だったら、なんで今、会いに来たんだ?そもそも、なんでデビューなんて…


「訳が分からん…。ちゃんと説明してくれ」


「うん…あのね…」


考えても答えはでないので、本人に問う。そして、霞はポツポツと何があったのかを話しだした。


春ヶ丘に帰ってきたのは実は一年前で、彩花と話していた俺に疎外感を感じて話しかけられなかったこと…


俺に気づいてもらいたくて歌手としてデビューしたこと


連絡がまったく無くてもう忘れようとしたこと…


そんなときに、弁護士から爺ちゃんの手紙を渡され、勇気を出して俺に会いに来たこと…


一部始終を聞いて、俺は…


「痛ぃ…」


霞に近寄り、頭を軽く小突いた。


「馬鹿…俺がお前の事を忘れるはず無いだろう…ずっと待ってたんだぞ」


「ホント?本当に忘れてなかったの?」


「あたりまえだろ!それに、彩花はお隣さんだ。お前とである前からの知り合いだな。まぁ、あの頃は仲が悪かったからな…お前が知らなくても無理は無いか…」


隣同士にも関わらず殆ど話した事が無かった。霞と面識が無いのも無理は無い…


「本当なら一年前に会えたのに…回り道しやがって…おまけにデビュー?お前は一体何様のつもりだ?」


「なっ!?それを言うなら、先輩だって!人格が変わってるじゃない!ボクの前では鉄面皮で殆ど笑わなかったくせに!」


俺たちは互いに睨みあうが…


「ふ…ふふふ…」


「ふ…ふはは…」


やがて笑みに変わった。


久しぶりに会ったにも拘らず、心地よく、ずっと一緒にいたような言葉の応酬がとても楽しい…



俺を先輩と慕ってくれる妹の様な女の子。


美空霞が春ヶ丘に帰って来た。









更新〜


毎度どうもです。久遠です。


霞「最近、忙しいみたいだね〜」


まぁね〜就職活動シーズンですからね。もう、イヤダ…


和人「でも、小説はきっちり書いてもらうぞ」


彩花「そうね、きりきり書いてもらうわ」


鬼!悪魔!


霞「まぁ、その辺にして…次回はどうなるの?」


予定では霞ちゃんパートラストだね。そろそろ終わらせないと


彩花「それと、いつもこのヘタレ作者に感想ありがと!」


和人「そうだな、感謝してもしきれないな。こんなのに感想書いてくれるなんてな…」


そこまで言いますかキミ達…


霞「次回もお楽しみに!」


無視かよ…







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