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Rumble  作者: 久遠
15/38

第14話:怒涛のGW 始まり

「ふぁ〜…よく寝た…」


ボーっと天井を見つめつつ、そう呟いてみる。


時計の短針はてっぺんを指している。



「彩花が居ないから、ゆっくり寝られた♪」


今日は彩花は居ない。それどころか学校も休み。何故なら…


「GW最高!!」


五月三日。GW初日…さらに彩花は剣道部の合宿に行ってしまったので、起こしにはこれないのだ。


「さてっと…」


ちゃちゃっと着替えて、一階に降りてくる。


「あら♪おはよう和人ちゃん。いいえ、もうこんにちはね」


「はは、こんにちは。涼香お姉さん」


リビングに入ると見知ったお隣さんに挨拶をされた。


橘涼香たちばな すずか。彩花のお母さんである。外見は彩花のお姉さんにしか見えないほど若いが、正真正銘の彩花の産みの親である。


この人と会話するときの注意事項は一つ。おばさんや歳を連想させることを決して言わないこと。以前にそう呼んだときの記憶は硬く封印してある。


「ねぇ、何か失礼な事考えなかった?」


「いいえ、滅相もありません」


「そう?ならいいけど…あ、洗濯物。ちゃんとアイロンがけしといたわよ♪」


綺麗にたたまれたYシャツなど、俺の服をテーブルの上に置いてくれる。


「いつもすいません」


「いいのよ♪私はキミの保護者なんだしね♪」


爺ちゃんが死んでから、俺の保護者は彩花の両親という事になっている。


最初は一緒に住む事を進められたが、彩花という年頃の娘が居る以上、それはよろしくないので丁寧に断った。


そして、掃除や炊事などの家事は自分で行い、洗濯だけは涼香お姉さんがやってくれるという今の体制ができた。


その理由は、学校など、普段家に居ないので洗濯物が安心して干せない…


それを聞いた専業主婦の涼香お姉さんが、一緒に洗うついでだとかでお姉さんがやってあげるという事になった。まぁ、彩花は複雑な顔をしてたけど…


「じゃ、私は帰るけど…折角のGWだし、和人ちゃんはデートとか行かないの?」


「あはは、行きたいのは山々なんですが…相手がいませんよ」


「あらあら…最近の子は見る目ないわね。なら、彩ちゃんなんてどう?」


「彩花に俺なんて釣り合いませんよ。あいつはあれで学校では結構モテるようですし…」


主に下級生の女子性徒にだが…


「ふふ、まぁいいわ。じゃあね和人ちゃん。折角の休みなんだし、家でゴロゴロしないようにね」


微笑を浮かべ、涼香お姉さんは帰っていく…


「ふぅ…涼香お姉さんにも言われたし…腹も減ったし、今日の飯は外食にするかな」


一人で外食ってのも寂しいものであるが…


そう思いつつ、俺は青いロングTシャツにジーンズ。黒い薄手のジャケットを羽織って家を出た。



「ここか…」


ランチを食うべく、彷徨い歩き、一軒の喫茶店に辿り着いた。


洋風喫茶『ブロッサム』


料理も美味く、ケーキも美味しい。そして店もいい雰囲気で人気の喫茶店…


だが、琢磨が言うにはバイトの女の子が可愛いいらしい。


まぁ、最後のは置いといて…。


料理を作る身としては、美味い料理には興味がある。


―カラン


小奇麗なカウベルの音が客の来店を告げ…


「いらっしゃいま…えぇーー!?」


それとは対照的に、素っ頓狂なウエイトレスが応対した。


って…


「かかか、和人くん!」


そのウエイトレスは俺の目の前に座り、今年仲良くなり、名前で呼び合うまでの仲になった学園のアイドル。水野ひかり嬢だった。


えっと…


つっこんだ方がいいのだろうか…


「あはは、い、いらっしゃいませ」


苦笑いを浮かべるひかり。うん、これはいい。問題は着ているユニホームである。


上半身は浴衣のような和服だが、したはフリフリのスカート。おまけにサイズがやや小さめの割烹着。


「………恥ずかしくない?その格好?」


はっ!じ、地雷踏んだ…


「………お客様、こちらにどうぞ」


営業スマイル。だが、内心絶対に笑っていない。なぜなら…


案内する際に足をさりげなく踏みやがった。


「……ご注文がお決まりになしましたら御呼び下さい」


そういうとひかりは去っていってしまった。その際にユニフォームのスカートが翻る。変だけど…似合ってるとは思うし可愛いとは思う。言い過ぎたかな?



仕方が無い。軽い冗談で機嫌取りを図るか…


「すいませーん…」


「はい、ただいま」


呼んだらすぐさまひかりがオーダーを聞きにやってきた


「えっと、塩焼きそばとアイスコーヒー…」


「申し訳ございません。当店は洋風喫茶なので塩焼きそばはございません」


笑顔だが…つ、冷たい…仮面を被っているように表情に変化無く笑顔で応対するひかり、知り合いのよしみでツッコミを期待したんだが…くそ、意地でもその仮面を剥ぎ取ってやる


「そうなの?じゃ、アイスコーヒーとナポリタンでいいや。あと、水野ひかりをテイクアウトで」


「―――っ!?」


ボンっという感じで顔を赤くし俯くひかり。やりすぎた…慌ててフォローを入れる


「い、いや…バイト終わるまで待っててやろうと思ってな…。今の時間にいるんなら、夕方くらいには終わるんだろ?そしたら、ケーキでも奢るよ」


「……和人くん…うん。三時には終わるから待ってて!」


嬉しそうに戻っていくひかり


ふぅ、ようやく学園のアイドルが帰ってきたな…


「いらっしゃいませ♪何名様ですか?」


活き活きと働くひかりを見ながら運ばれてきたパスタを啜る。男性陣が見惚れている。贔屓目無しで可愛いと思うからまぁ仕方が無いな。


だが、なんであんなに嬉しそうなんだ?ああ、ケーキを奢ってもらえるからか…



そしてきっちり時間まで働いたひかりが着替えてバックヤードから出てきた


「お待たせ〜ごめんね。待たせちゃって」


「お疲れさん。じゃ、好きなもん頼んでいいぜ」


俺の対面に座り、嬉々としてメニューと睨めっこをはじめるひかり。ようやく空しい一人の空間に花が咲いた


暫くして注文を決めたひかりが同僚を呼ぶ


「なんだ、ひかりじゃない…って、へぇ〜バイトが終わったら彼氏とデートってわけ?良いわね〜」


「ち、違うよ、へ、変な子といわないで友達、まだ友達なんだからね!」


「ほぉ〜まだ、ねぇ?」


「もう、いいから注文とってよ翠!」


からかわれてる…この人なら…


「えっと、イチゴショートとレモンティー。和人くんは何か頼む?」


「俺はラーメンセットと…」


「駅前の満腹ラーメンでの出前でいい?って、喫茶店の注文をしてってば!」


「グッジョブ!!」


ナイスな応対。素晴らしい…ひかりの時に期待したツッコミが今、返って来た。


「お主、なかなかやりますな…」


「あはは、あんたもね…で、注文は?」


「モンブランとコーヒーおかわり」


「毎度あり〜」


マニュアルをほぼ無視した応対。なかなかの猛者だ。



「…ねぇ、みどりと仲良いいね」


ジト目で睨むひかり。


「そうか?別に普通だろ」


「どうだか〜」


何故睨む?どう対応すればいいんだ?


そう思案していると…


「お待たせ〜って、ひかり、なに剥れてんのよ」


「し、知らない!!」


助けが入った。よし、これで和ませよう


「おぉ〜待ってました。ほら、ひかりあ〜んして」


「へ?…えぇ!?」


「あら、見せ付けてくれるじゃない」


俺は目の前に置かれた自分のモンブランをフォークで一口分に切ってひかりに差し出す。だが、困惑しているひかり


ちらちらと他の客の視線を感じる。正直、このまま食べてもらえなきゃ…俺だけ馬鹿みたいじゃん。


仕方ない…


「……ふぅ…じゃ、お姉さん食べる?」


「食べる♪食べる♪あ〜ん」


「あっ!?」


口を開かないので俺はウエイトレスのお姉さんにケーキを食べさせた。流石にノリがいいこの人は躊躇なく口を開く。って、


自分でやっといてなんだが仕事中なのにいいのだろうか。ひかりはなんか叫んでるし


「美味しい〜さすがうちのケーキね♪」


「どら…うん、美味い…」


「でしょ、あ、コーヒーもちょっと頂戴」


「ブラックでいい?」


「ええ」


俺のコーヒーを手に取り、飲むお姉さん。というか客のコーヒーを飲むウエイトレスって奇妙な光景…今までで初めて見た


「ふぅ〜ありがとう。あんた、面白いね。名前は?」


「氷室和人」


「私は瀬名翠せな みどり。みどりちゃんで良いわよ。私はカズッちって呼ぶね」


「いいよ。よろしくねみどりちゃん」


「じゃ、サボってたら店長に怒られちゃうからまたね」


そういうと颯爽とみどりちゃんは去っていった。さわやかな人だな。親友になれそうだ


「……あーん…」


「?」


「だから、あーん!!」


気づけば睨みながらそんな事をいい、口を開いているひかり…


「ほ、ほら…」


「美味しいね〜じゃ、和人くんもはい♪あーん…」


「いや、俺は恥ずかしいから…「あーん!!」…あ、あーん」


有無を言わさずひかりは自分のケーキを俺の口に突っ込む


「美味しい?」


「あ、ああ」


機嫌が直ったようで笑顔に戻るひかり。そして自分のケーキをぱくつき始めた


なので俺も残り少なくなった自分のケーキを食べ始めた。


暫くして、またみどりちゃんがやってきた。


「カズッち、はい、これ」


「なにこれ?」


渡されたのは紙切れで何か書いてある



「私の携帯の番号とメアド。暇だったら遊ぼうよ」


「いいよ。じゃ俺のも…」


俺は自分の携帯に電話番号を登録して、電話を掛ける


「とりあえず電話番号だけ。アドレスは後で送るから」


「オッケー。じゃね、カズッち」


ひらひらと仕事に戻っていくみどりちゃん。ちなみに登録名もみどりちゃんだ。そこで俺はあることに気がついた


「そういえば…ひかりの携帯番号知らないんだけど。教えてくれない?」


なんか睨んでいるひかりにそういう。新しいクラスになってから誰とも電話番号を交換していなかったのだ


「え、そ、そうだったっけ?」


「ああ、沙耶香とか琴乃のも知らないや…まぁ、後で聞くとして。教えてくれないか?持ってるんだろ?」


「う、うん。これ…」


スッと電話番号とアドレスが書かれた可愛い名刺のようなものを財布から出してきたひかり。それを見ながら俺はアドレスと電話番号を登録し、リターンする


「それが俺のアドレスと電話番号だから。用が無くても遠慮なく掛けて来てくれな」


「うん♪和人くんもどんどんかけてきてね♪」


嬉しそうに紅茶を飲むひかりを俺は可愛いと素直にそう思った



「本当にいいの?」


「ああ、そんな気にしなくても」


会計を済ませる。当初の宣言通り支払いは俺が済ませる…此の辺は男の甲斐性ってヤツだ。爺ちゃんに散々言われたからな…



――Side Hikari Mizuno


会計を済ませている和人くん…それを見ながら、彼の番号が入った携帯を弄ぶ…


「えへへ♪」


「なぁに?嬉しそうじゃない」


「み、翠…」


ニヤリと嫌な笑みを浮かべた翠が近くにやって来て話しかけてきた


「いいわね、カズッち。カッコイイし、面白いし、優しそうだし…私も狙っちゃおっかな〜」


「み、翠!?」


「あはは、冗談だよ。ひかりのお気に入りをとりゃしませんって。ま、たまにちょっと借りるけど、そのくらいは許してね」


ペロッと舌をだす翠。勘弁して欲しいよ…ライバルがこれ以上増えたら困る


「お待たせ。あ、みどりちゃん、またね」


「うん、カズッち。また明日」


「いや、そんなに頻繁には来れないって…」


「………」


―ギュッ


店を出て、すぐ私は和人くんの腕を抓る。


「痛!?ひかり?」


「なあに?」


「いや、なんで腕を抓ってるのかな?」


「べっつに〜」


だって、ムカムカするんだもん…


和人くんが女の子と楽しそうに話してると…


嫌だな…私、相当嫉妬深いよ


でも、私をこんな気持ちにさせた鈍感な彼は…


「…まぁ、いいけどさ。さて、まだ時間があるし、どっか行こうか?」


「うん♪」


私に楽しさ、嬉しさと言う感情も与えてくれる…


今日はめいいっぱい楽しもう。だって…今だけは…


「和人くん♪」


「ひ、ひかり!?」


私は彼の腕を取り、歩き出す。


彩花ちゃんも琴乃ちゃんも居ない…


そう…今だけは…私だけの和人くんなんだから


























更新完了。


さて、今回は霞ちゃんのお話は少しお休みして、あの子を出してみたーーー


ひかり「最近、あまり出てなかったよね。私…」


あ、あはは。だから出したじゃん


ひかり「でも…翠の方が扱いが良かったよね?」


そんな事無いでしょ。和人くんにあーんして貰ったでしょ。憎いね〜ラヴラヴだね〜


ひかり「え?そ、そうかな…」


さて、ひかりちゃんも誤魔化せたし、今回は此の辺で…感想お待ちしております。



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