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Rumble  作者: 久遠
10/38

第9話:お嬢様の目標 中篇

――Side Kazuto Himuro


暫く、頭を撫でていると…


「う…んん…」


ゆっくりと眠りから覚め、目を開ける北條。


「………」


「おはよう!いい朝だな!」


捕まれていた腕を離され、サッと距離を取り、誤魔化すように爽やかな朝を演出しようと、努力したが…


「い、嫌!!ふ、不潔!ケダモノ!」


全ては徒労に終った…



「ま、待て、落ち着けって!」


「来ないでくださいまし!」



手あたり次第に、物を投げつけてくる…って、全部俺の私物。壊れないことを祈ろう…


「もう…お嫁に行けませんわ…」


ピタリと攻撃が止み、今度は泣き出す始末


「ま、まぁ元気出せ!いざとなったら俺が貰って…って、ちゃうわ!そもそもなんもしてねぇ!」


必死で言い訳というか…弁解をする。あぁ…俺も泣きたいよ……




どうにか北條を落ち着かせ、リビングに案内し、座らせる。その間、コーヒーメーカーをセットし、俺は制服に着替た…。今思うと、素肌にワイシャツでは、


まぁ、勘違いしても仕方が無いな…


パジャマ買おうかな…


「ほら、コーヒー」


「あ、ありがとうございますわ…」


コーヒーを渡し、対面に座る。


「んで…何で家にお前が居るんだ?」


「……橘さんに合鍵をお借りして、氷室さんを起こしに来たんですわ。遅刻を防ごうと思いましたの…」


…彩花。貴様が事の発端か!


「……それで、起こしに来たのに、何で隣で寝てたんだ?」


「―――っ!?貴方が引っ張りこんだんですわ!そしたら意識が遠のいて…」


なるほど


「またやっちゃったのか…」


「また?」


「あぁ、前にも彩花に怒鳴たことがあってな…そんときも同じことをしたらしい…」


あの時は、怒れる彩花にしこたま殴られた…。まぁ、ダメージを受けないように流してはいたから痛くはなかったんだが、殴られたらいい気分はしない…


「悪かったな北條。不快な思いさせて…」


「も、もういいですわ…過ぎた事ですし…それ程不快じゃありませんでしたし…」


「は?」


「い、いえ何でもありませんわ!」


変な奴だな


顔を赤くし首を振る北條。


ふと、さっきのお兄様という呟きを思い出したが…



……気軽に聞いていいことじゃないな


そう考え、話題を変える


「ところでさ」


「なんですの?」


「言い難いんだけど……お前、学校行かなくていいのか?」


「…え?」


俺は時計を指差し北條に現実をつきつける。時間は二限目が始まる頃…


「………ち…遅刻ですわ!」


「うむ。遅刻だな」


「何を落ち着いていますの!?」


「いや、俺にとってはいつもの事だし…」


悪いが、今更慌てる程の事でもない…


「〜〜っっ!行きますわよ!」


凄い剣幕で詰め寄られる。


朝飯食ってのんびり行こうかと思ってたのに…


「分かった。鞄持ってくるから暫し待て」



その後、走って登校したが、結局遅刻は変わらなかった。ま、当たり前なんだけど…


だから、ゆっくり行こうって行ったのにさ…



――Side Sayaka Houjou


「はぁ〜…」


学校から帰宅した私は、制服のまま自室のベットに倒れ、ため息を吐く。


「遅刻してしまいましたわ…」


初めて、遅刻してしまった…。橘さんに鍵を返す際に


「気にする事無いわよ…」


そう言ってくれました。遅刻をしたのはショックでしたけど…本当に気にしてるのは


「氷室さん…」


何故?


どうして、彼の名を呟くと胸が熱くなるのでしょう。


目を瞑ると、彼の寝顔が浮かぶ…


「和人さん…」


男性に抱きつかれたのに…不快じゃない。むしろ、彼の温もりをもっと感じていたいと思ってしまう…


「私…どうかしていますわ」


顔が熱い…


悶々とそんな事を考えていると…


携帯電話が鳴り、その音で我に返る。


「も、もしもし…」


多少上擦った声になってしまいました…。


『北條さん?彩花だけど。今、時間大丈夫?』


電話の相手は番号を交換したばかりの橘さんだった。


「平気ですわ。それで、どうしましたの?」



『ねぇ、北條さん。今日のリベンジしたくない?』


「?」


電話なのにひそひそとある提案をする橘さん。


「やりますわ!」


その提案は私にとって、願ってもいない事で、私は乗る事にしました…



翌朝


「じゃ、行くわよ!」


氷室さんの家の前で、私と橘さんは待ち合わせをしていた。


昨日の提案は氷室さんを二人で協力して、学校に連れていくという事でした。


橘さんは剣道部の朝の練習があるので、昨日よりも早い時間帯に、和人さんを連れて行くという話なのですが…


「それなら、私は必要無いんじゃありませんか?」


勢いで引き受けましたが、橘さんが連れていけばいい事だと思うのですが…


「…その方法は前に試したたわ。だけど、あいつは!」


わなわなと怒りに震える彩花


「学校行った後で、私が朝練をしている隙に家に帰ったのよ!信じられる!?それで平然と遅刻してきたのよ!?」


「……」


流石ですわ。一筋縄では行きませんわね…


「だから、あいつが帰らないように捕縛していて欲しいのよ」


そんな話をしなから、氷室さんの部屋の前にやって来ました…



【任務1 難度SS 氷室和人を起こせ!】


前回より、難度が上がっている。


その理由は……


「「……可愛い…」」


二人の口から言葉が漏れる…


ベットでは和人が変わらず熟睡している。だが、着ているものが、昨日のようなワイシャツでは無く、パジャマだった。


カッコいい系統に属する普段の和人とは違い、可愛らしさを演出している。青のチェックのパジャマと、何故か枕元にはプリチーなクマのぬいぐるみ、さらにはあどけない寝顔も合わさり、凶悪なまでの可愛らしさを演出していた。


「くっ!?精神攻撃とは…やってくれるわね!あ、駄目よ!迂濶に近付いたら昨日の二の舞よ!」


「可愛い…可愛いですわ…」


ふらふらと近付こうとする紗耶香を制する彩花。彩花自身も抱きつきたい衝動を懸命に押さえ込む。


「このままじゃ…朝練に遅れる…」



焦る彩花。ゾンビのように手を伸ばす沙耶香。眠れる和人。


その間にも時間は刻々と過ぎていく…



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