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1.末弟子セドル


人との別れは一瞬だ

残るのは、後悔と悲しみだけ

あなたの背中をもう追えないという現実から、

僕はまだ目を逸らしたまま生きている


―――――――


森の奥は不気味な程 静かだった


孤児であった僕を拾ってくれた師匠と共に

魔物(モンスター)退治をして欲しいと依頼があったため

僕たちは、今、探索をしている真っ最中だが

妙に森が静かすぎる


「師匠…」


「何だ」


「なんか おかしくないですか?、この森。普通こんなに魔物って現れないものですか?」


師匠は僕の焦り具合に呆れているのか

しばらくその場に立ち止まり

ゆっくりと口を開く


「あれだ…」


「あれだ?」


「嵌められたな」


「え?」


その言葉と同時に

森の奥から、唸り声が「グルゥルル」と聞こえ

僕ら目掛けて数匹の魔物達が飛び出してきた


「どういう事ですか、師匠!」


「どうもこうもない、ただ事実を言っているだけだ」


「事実って…」


「とりあえず今は目の前の魔物を倒すよ」


「はい!」


僕らに次々と襲いかかる魔物たち。

僕は必死に応戦していた。

だが

師匠は違った。

涼しい顔で、次々と魔物を倒していく。


やっぱり師匠はすごいや

僕も頑張らないといけないなと気分を変えていると


「セドル!」


突然、腕を引かれた。


「師匠?」


「私の後ろにいなさい」


師匠の視線の先で


パチ、パチ、パチ


まるで劇を見ていた観客のように、

森の中から一人の男が姿を現した


「やはり貴様か」


「おやおや、視線が怖いことだ…」


「師匠…、あの人って…」


「あぁ…依頼人だよ」


師匠の言葉に、心臓が跳ねた。

間違いない。数日前、「村を救ってほしい」と僕たちの手を握った、あの穏やかそうな男だ。


「な、……っ! でも、あの人はあんなに必死に助けを求めて……!」


僕の言葉を遮るように


「貴様、魔族だな」


「さすが、魔女リエール。最初から全て 知っていたのでは?」


「魔族……!?」


僕は思わず指先が震え、持っていた武器を落としそうになる。次第に喉がヒリつき始め、呼吸が乱れる感覚が分かる

本能的に身体が危険だと察知しているみたいだ


「師匠!逃げましょう!今すぐに!」


焦っている僕を横目に師匠は


「……駄目だ」


静かに首を振った。


「ここで逃げたら、この先にある村の人たちはどうなる」


「で、でも……!」


確かに…師匠はとても優しく

状況によれば無償で依頼を承諾する人だ

そんな人が村の住人を捨てて逃げ出すはずがない…


師匠は優しい眼差しで


「セドル、この計画だとあんたは邪魔」


「師匠!」


言葉の終わりを待たず、景色が弾け

気がついた時には、騎士団の訓練場に寝転がっていた

さっきまでの緊迫した雰囲気が嘘のような静けさに

状況が掴めていない頭で、僕は自分の体を確かめる。


やっぱり、傷一つない。

師匠が、僕だけを完璧に守って飛ばしたのだ。


「……邪魔なんて、そんな言い方ないじゃないですか、師匠……っ」


込み上げるパニックと悔しさで視界が歪んだその時、背後から一人の男が歩み寄ってきた。


「お、セドルじゃないか。また師匠からお使いでも頼まれたのか?」


師匠の1番弟子のアルヴァン兄さんだった

僕は安堵の涙なのか悔し涙なのか

分からない涙を流しながら

アルヴァン兄さんに飛びつく


「アルヴァン兄さん……!師匠が…師匠が…!」


「大丈夫だ、セドル。まずは落ち着くんだ」


僕はアルヴァン兄さんに

依頼人が人ではなく魔族であった事

村の住人 そして師匠が危険な旨を伝えると


アルヴァン兄さんは、壊れ物を扱うように僕の頭をソッと優しく撫でてくれた

けれどその手は少しだけ震えているように見えた


「……なるほどな。よく頑張ったぞセドル。……本当に師匠って人は、…カッコつけたがりなんだよな。」


独り言のように呟いた兄さんの声は、どこか「最後」を覚悟しているようにも聞こえて、僕はまた怖くなった。


アルヴァン兄さんは僕から手を離すと、腰の剣を静かに鳴らした。その瞬間、いつもの優しい兄さんの空気が消え、鋭い「騎士」の顔に変わる。


「数はあればあるほどいい。他の弟子達にも声をかけてくる。……セドル、お前はここで待ってろ。必ず、師匠を連れ戻してやるからな」


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