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プロローグ

勇者


勇者とは

魔王を討ち果たす事が出来る者にのみ与えられる、特別な称号。

もし勇者が現れなければ、

人間にとって魔族とは、抗うことすら許されない絶対的な存在だ。


だから子供たちは、幼い頃からこう教えられる。


もし魔族に出会ってしまったなら

自らの命を絶て。

それが最も苦しまない方法だと。


たとえ魔力を持つ人間であっても例外ではない。むしろ魔族にとって、魔力を持つ人間は何よりのご馳走だと言われている。


だからこそ、魔力を持つ者は早死にする。

そんな言い伝えさえあるほどだった。


_____


「師匠!逃げましょう!今すぐに!」


焦りきった声で弟子のセドルが叫ぶ。


「……駄目だ」


私は静かに首を振った。


「ここで逃げたら、この先にある村の人たちはどうなる」


「で、でも……!」


迂闊だった。

まさか、人間に化けることができる魔族がいるなんて。魔力持ちの私でも この場で、あの忌々しい魔族を倒すのはほぼ不可能だ。

本当なら、すぐに転移魔法で逃げ出したい。


だが、私が逃げれば。

視界に見える程の近場にある村の住民は 確実に死に滅ぶ。これは………腹を括るしかないみたいだね


「セドル、この計画だとあんたは邪魔」


「し……?」


弟子の足元に魔法陣が浮かび上がり

次の瞬間 セドルの姿は、光と共に消えさった


「転移魔法か」


魔族が低く呟く。


「ご明答だよ、魔族さん」


私を慕い、心配性な優しい弟子だ。そんな子を、今ここで死なせるには惜しいからね。


魔族は鼻で笑う。


「人間の絆とは、くだらんものだな」


「その“くだらない絆”がさ」


私は杖を構える。


「魔族を倒す理由になったりするんだよ」


魔族はしばらく沈黙し——

そして突然、狂ったように笑い出した。


「ふははははは!」


「何がそんなにおかしいのさ」


「貴様の死に様を、あの小僧に見せたかったと思うとな」


「このクソ魔族……!」


私は魔力を一気に練り上げる。


「メゾディアルス!」


巨大な魔力が解き放たれ、爆発のように広がった。


メゾディアルス

自身の魔力を限界まで溜め込み、一気に放つ破壊魔法。


「ぐっ……!」


魔族が初めて苦悶の声を上げる。


「お主……なかなかやるではないか」


「そりゃどうも」


それから、激しい魔法戦が続いた。

炎、雷、衝撃、呪詛。

空気が裂け、大地が砕ける。


どれほどの時間が過ぎただろう。

どちらも1歩も譲らない展開が続いている

もしこの状況が長引けば

先に魔力が尽きるのは、私だ。


魔力切れで死ぬなんて、まっぴらごめんだ。

これは少し無茶するしかないみたいだね。


「エンディーク!」


神聖魔法

本来は聖女にしか扱えないとされる魔法

だが私は、十年という歳月を費やし、

血の滲む努力の末に神聖魔法を手にした


天使に包まれるような眩い光が魔族を包み込む


「グアアアアアア!」


魔族の叫びが森に響いた。

効いた!、そう確かな手応えがあった。


だが、次の瞬間。

魔族の瞳がゆっくりとこちらを見据える。


「……この程度で勝ったつもりか」


禍々しい魔力が一気に膨れ上がる

気づいた時には、もう遅かった。

凄まじい衝撃が私を飲み込み 次の瞬間、

私は地面へ叩きつけられていた。


「っ……!」


視界が揺れ、口の中に血の味が広がる。

正直もう、動ける状態ではない

だが、魔族の状態を見るにお互い、瀕死。

どちらが勝ってもおかしくない。


ならば

最後の一撃に賭けるしかない。

私は残る魔力をすべて集め


「エンディフィカル!」


それは神聖魔法の極致。

神聖書には、扱える者はほぼ存在しないと記されている。私もこんな究極魔法を扱える程の腕はない。だから、もうこれは賭けでしかない


魔族もまた、最後の力を振り絞るかのように身体を歪ませる。骨が軋むような音と共に、その姿はゆっくりと崩れ、やがて異形とは言い表せれない程の変貌を遂げたと同時に、禍々しい魔力が周囲を震わせるほどに膨れ上がった。

奴もまた すべてを賭けた最後の一撃を放とうとしていた。


奴の最大魔力を感知した瞬間、私は理解してしまった

あぁ、この戦いで私は敗北するのだと。

そう諦めかけていた次の瞬間

手に持つ杖が光り輝き 空に巨大な魔法陣が浮かび上がると同時に 天から一本の光が降り注ぎ

光柱は魔族を貫き、その身体を焼き尽くしていく。


「ギャアアアアアア!」


魔族は苦痛の叫びを上げながら、ゆっくりと倒れる


「……勝った……のか……」


状況を理解する前に私は魔力を使い果たしてしまい

そのまま意識を失った。


____


だが。

魔族とは、狡猾な生き物だ。

黒く焦げ、ボロボロな消えゆくその時

奴は呪いを残した


「フッ、我が……一枚上手だったな……」


「こんな人間に……やられるとは……」


魔族は、嗤った

その笑みには 最後まで消えない悪意が宿っていた。


「永遠に……眠り続けるがいい」


次の瞬間

黒い呪いが、魔女リエールの身体を包み込む様な形で浸透していく


「ふふ……」


「ははははは……」


その不気味な笑い声を残して 魔族の身体は、完全に消滅した。


____


魔王が現世に復活してから、三十年。


言い伝えでは 百年前。


勇者、聖女、賢者、戦士。

四つの証を持つ者たちが、魔王を討ち果たしたと言われている。


つまり

勇者が現れなければ、魔族との戦いは終わらない。

実際、魔力を持つ人間が何度も魔王に挑んだ。

記録が残っているが帰ってきた者は一人もいない。


人々は怯えながら、待ち続けている。

勇者の誕生を。


そして

呪いに囚われた魔女リエールもまた。

眠りの中で、その時を待つことになった。


弟子たちは、彼女を救うために

あらゆる方法を試した。

古代魔法。

禁じられた秘術。

世界中の秘宝さえ集めた。


だが呪いは、解けなかった。


そして。


魔女リエールが再び目を覚ましたのは、

120年後のことだった。


彼女はまだ知らない。


この世界に残る数々の伝説が

すべて、自分の弟子たちのものだということを。

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