辺境令嬢、契約ドラゴン様に溺愛されて困っています。(でもキスはもう一回してほしい)
「あなたには“神竜との契約の資質がない”そうです。従って婚約は破棄します」
そう告げた王太子殿下は、ため息混じりに私を見下ろした。
雪のように白い大理石の謁見の間。集まった貴族たちの前で、私はきちんと背筋を伸ばして頭を下げる。
「畏まりました、殿下。辺境伯家としては、王家のご判断に従います」
口は勝手にそう言っていた。
心は、案外静かだった。
悲しくないわけじゃない。ただ、こうなると薄々分かっていたから。
この国で、繁栄を象徴するとされる神竜と契約できない者は、特別視どころか「足りない」と見なされる。ましてや王妃候補たる者が資質なしと判じられたなら、婚約破棄は当然に近い。
だから私は、泣いて縋る悪趣味な劇をする気はなかった。
王太子殿下は、少し拍子抜けした顔をする。
「意外だな。もっと、取り乱すと……」
「陛下と殿下の御世が安らかであることを、辺境よりお祈りしております」
それだけ言って、私は礼を終えた。
くるりと踵を返す。紅いドレスの裾が、冷たい床を滑るように揺れた。
ざわめく貴族たちの視線。哀れみと好奇心と、少しの嘲り。
背中に突き刺さるそれらを、私は全て無視して歩き出す。
——よかった。
胸の奥で、小さくそう思っていた。
こんな人たちの真ん中で、一生縮こまって生きるなんて、想像しただけで息苦しかったから。
私は雪深い北の辺境で育った。吹雪の夜に焚き火を囲んで笑う人たちのほうが、ずっと好きだ。
王都での窮屈な二年間は、これで終わり。
あとは故郷に帰って、静かに生きていけばいい——。
* * *
「……って、話が甘かったわね」
王都から送られてきた書状を握りしめ、私は深く深くため息をついた。
ここは北境を守るオルディナス辺境伯家の居城。雪に埋もれた石造りの城壁。窓から見えるのは、灰色の空と、果てない白。
手紙の差出人は、今は元婚約者さまの王太子。
『神竜との契約資質を持たぬ者を王家に迎える訳にはいかない。ついては、王都での支度金および諸々の費用を考慮し、これまでの縁に免じて、オルディナス家からの北境防衛費支給を半減とする』
「……要するに、“そっちの面倒はそっちで見てね”ってことよね」
思わず出た素の声は、かなり呆れていた。
婚約破棄だけならともかく、国境防衛の費用を削るとは。うちの領地は国境線と魔物の巣に挟まれた最前線だ。ここに圧をかけるのは、国の喉を細くするのと同じ。
「レイナ様、どうしましょう」
傍らで控えていた侍女のマリアが、不安げに眉を寄せる。
彼女は幼い頃から一緒に雪山を転げ回ってきた幼馴染であり、今では私の右腕だ。
「どうしましょうね。どうもこうも、お金がないと兵も補給も厳しいわ」
「お父様にご相談を——」
「お父様は今、最前線の砦。呼び戻す余裕もないでしょう。……ふうん」
私は窓の外に視線を向ける。
鉛色の雲。吹きつける風。遠くの山脈。
そのさらに向こうには、封じられた“銀の竜”が眠ると言われている。
子どもの頃から何度も聞かされた、おとぎ話みたいな伝承。
「レイナ様?」
「マリア。銀竜封印の谷まで、どれくらいかかるかしら」
「……まさか、行くつもりですか?」
「まさか。まさか、ね」
だけど、冗談にしては妙に具体的な地図が頭の中に広がる。北境の地形は、幼い頃から叩き込まれているから。
神竜に選ばれなかった私。
でもその代わりに、私は辺境で生き抜くために必要なものを全部覚えた。
雪の匂いで天候を読むこと。
山の怒りを聞き分けること。
魔物の気配を、冷気の揺らぎで察すること。
遠くの谷から、微かなざわめきがした気がした。
胸の奥が、不自然に高鳴る。
「……マリア。準備して」
「え?」
「軽装でいいわ。食料とロープと防寒具。それと、私の剣」
侍女は、数秒だけ固まった後、観念したように頷いた。
「やっぱり行くんですね、レイナ様」
「うん。ちょっと、お金になりそうな奇跡を拾ってくる」
「奇跡って、そんなコンビニ感覚で……」
「大丈夫。うちの辺境は、奇跡と災厄がセット売りだから」
だったらこちらから会いに行って、ちゃんと割引交渉をするしかない。
国が私たちを切り捨てるなら、私たちは私たちで生きる道を選ぶ。
神竜に見放された辺境令嬢レイナ・オルディナスは、そう決意して笑った。
* * *
封印の谷は、想像以上に静かだった。
雪に覆われた崖と崖の間に、ぽっかりと口を開けた谷。空気が重く淀み、音が吸い込まれていく。
「……ここ、嫌な感じです」
「帰りたい?」
「レイナ様がいるなら行きます」
「そういうところ好きよ、マリア」
苦笑しながらも、私は慎重に足を進める。
谷の奥に進むにつれて、空気はさらに冷たく、重く、鋭くなっていく。
そして。
「——あった」
目の前の光景に、息を呑んだ。
巨大な氷の結晶が、谷底に突き刺さるように生えている。その中心に——銀色の龍が、眠っていた。
翼をたたみ、長い尾を巻き、まるで眠れる彫刻のように。
銀の鱗は、氷の中でもなお淡く光を放ち、見ているだけで背筋が粟立つほど美しかった。
「銀竜様……本当にいたんだ」
「レイナ様、近づきすぎると——」
マリアの制止が聞こえたときには、もう私は氷に手を触れていた。
瞬間、凍てつく光が走る。
皮膚が裂けたかと思うほどの冷たさ。全身の血が凍るような痛み。
思わず膝をつきかけたその時——
『——誰だ』
頭の奥に、低い声が響いた。
息を呑む。マリアの声が遠ざかる。世界が青白い光に塗り潰され、私は氷と竜の間に吸い込まれていくような感覚に襲われた。
『この眠りを破ろうとする、小さき者よ。名を名乗れ』
「レ、レイナ……レイナ・オルディナス。北境を守る家の娘です」
『ほう。あの小さき剣士の血か。まだ続いていたか』
小さき剣士。きっと初代辺境伯のことだ。伝承に出てくる、銀竜と共に戦った英雄。
私は唇を噛む。膝が震えていた。恐怖か、寒さか、それとも——。
「銀竜様。お願いがあって参りました」
『願い?』
「この北境を、守る力が欲しいのです。国は私たちの支えを削りました。このままでは、人も城も守りきれません」
『……それがどうした』
冷たい返答。心臓がひゅっと縮む。
『我は人に裏切られ、封じられた。お前たちの王も、竜との契約を都合よく利用し、切り捨てる。人など、信じるに値せぬ』
「それでも、私は見捨てたくありません」
『なぜだ』
「だって、あの人たちは、私を育ててくれたから」
雪の中で笑う兵たち。薪を割る太い腕。凍える夜に、黙って毛布を増やしてくれた老婆。
「私を“足りない”って言った人なんて、あそこには一人もいない。……だから、守りたいんです」
言葉にすると、少し泣きそうになった。
『ふむ』
沈黙が落ちる。氷の冷たさは、少しだけ和らいだ気がした。
『お前は、神竜に選ばれなかった娘だな』
「はい」
『悔しくはないのか』
「正直に言えば、少し。でも、あんな人たちの中で選ばれるくらいなら、こっちのほうが性に合ってます」
思わず本音が出てしまう。
竜の気配が、微かに揺れた。
『面白い。よかろう、小さきオルディナスの娘よ。取引をしよう』
「取引……?」
『我を縛る封印を解け。そうすれば、お前の望みを一つ叶えてやる』
一つ。何でも?
なら、選ぶべき言葉は一つだけ。
「この北境で、私たちが生き抜く力をください」
『よい。では——始めよう』
次の瞬間、氷が爆ぜた。
* * *
「レイナ様!!」
マリアの叫びで我に返る。
氷柱が崩れ、雪煙が舞い上がる。轟音。冷気。風。
その中心から、銀の影がゆっくりと姿を現した。
巨大な翼。鋭い爪。深い湖のような蒼い瞳。
伝承に歌われた銀竜は——実在した。
そして、美しかった。
思わず見惚れていると、銀竜はぐっと顔を近づけてきた。瞳の奥に、私の姿が映る。
『約束だ。お前の望みを叶えよう、小さき娘』
「……ありがとうございます」
『ただし、一つだけ勘違いするな』
竜の巨大な頭が、ふっと微笑んだように見えた。
『今、お前は我と契約した。“神竜ではない竜”との契約だ。お前はこの瞬間から——我のものだ』
「え」
その言葉を理解するより早く、世界が眩い光に包まれた。
胸の奥に熱が走る。心臓に、何かが刻まれる。
そして——。
「っ——」
唇に、温かな何かが触れた。
冷え切った谷の空気の中で、それだけが、やけに鮮やかだった。
目を開けると、そこにいたのは銀竜ではない。
銀の髪と、蒼い瞳を持つ青年。長い睫毛。柔らかな唇。
息が触れる距離で、彼は笑った。
「これで契約は完了だ。レイナ・オルディナス」
「え、えええええ!? い、今、キス——」
「お前が俺を解放してくれた報酬だ。お前は望みを叶え、俺は縛りから解き放たれた。公平だろう?」
「公平の意味が違いません!?」
頬が一気に熱くなる。心臓が痛い。谷の寒さを忘れる。
マリアは口をぱくぱくさせたまま固まっている。
青年——いや、銀竜は肩をすくめて言った。
「名乗っておこう。俺はアーク。かつて“銀環竜アークティス”と呼ばれた者だ」
「アーク……様?」
「様はいらない。お前の契約竜であり、これからお前の傍にいる男だ。敬語も禁止」
「勝手に決めないでください!?」
「契約の仕様だ」
アークは楽しそうに笑う。その笑い方が、少し腹立たしいくらい綺麗で、目が離せなかった。
『お前の望みを叶える。そのためには、傍にいるのが一番早い』
頭に直接響く声と、目の前の青年の生の声が、重なって聞こえる。
私はふらりとよろけた。
「レイナ様っ!」
「大丈夫……たぶん。ただ、情報量が多すぎて」
「慣れる。お前はもう俺の契約者だ。俺から離れると気持ち悪くなるからな」
「そんな仕様いりません!」
でも、不思議と嫌ではなかった。
胸の中にある熱は、恐怖でも不安でもない。
何か、もっとややこしいものだった。
* * *
アークが城に戻ってきた日から、辺境は騒がしくなった。
まず、雪が和らいだ。
吹雪が少し弱くなり、春が早く訪れた。凶暴な魔物は、アークの気配を恐れて深い森へ退いた。
川は凍りつかず、畑に積もる雪も薄い。人々は驚き、やがて笑った。
「銀の御方のお陰だ!」
「レイナ様が竜を連れてきた!」
「これで冬を越せるぞ!」
誰も私を「神竜に選ばれなかった女」なんて呼ばない。
ただ、北境を救ってくれたと喜んだ。
城の中では、別の意味で騒がしい。
「レイナ。寒い。来い」
「自分で暖炉の前へ行ってください」
「お前の方が温かい」
「竜なのに寒がりなんですか」
「お前がいないと落ち着かない」
「それ、契約のせいにしてません?」
アークは人型の姿を気に入り、ほとんどそのままで過ごしていた。
銀の髪は陽光を受けてきらきらと輝き、蒼い瞳は氷湖のように澄んでいる。立っているだけで周囲の空気が違って見える、絵画みたいな男。
そんなのが四六時中、私の半径二歩以内にいるのだから、落ち着くわけがない。
「レイナ様、顔が赤いですよ」
「うるさいわ、マリア」
「惚れたら負けですからね」
「惚れてない」
即答した私を、アークが横目で見て、くつくつと笑った。
「嘘は契約に引っかかるぞ」
「どういう契約なんですかほんとに!!」
頬がまた熱くなる。彼はその反応を、ひどく楽しんでいるようだった。
* * *
そんなある日。
王都から、再び書状が届いた。
『北境にて強大な竜が目覚めたとの報告あり。至急詳細を報告されたし。場合によっては王都への召還を命ずる』
「……速いわね。情報の流れ」
私は書状を机に置き、アークを見る。
「どうする?」
「無視でいい」
「ですよね」
あまりにも即答で、笑ってしまいそうになる。
だが、王都を完全に敵に回すのも賢くない。
私たちの目的は、辺境を守ることだ。復讐ではない。
「“竜との契約により北境の安定が得られている。王都への敵意はない”って文面で返しましょうか」
「敵意ならあるが?」
「そこは飲み込んで」
アークは不満そうに眉を寄せた。
「奴らはお前を切り捨て、北境も削った。許す必要はない」
「許してはないわ。ただ、あの人たちが勝手に滅びるのを見るのも、ちょっと後味悪いの」
「お前は甘い」
「アークは辛口すぎるの」
睨み合い、そして同時にふっと笑う。
そのときふと、アークの視線が真剣になった。
「レイナ」
「なに?」
「お前は、本当にこれでいいのか」
「これって?」
「俺と契約したことだ。お前は神竜の花嫁にはなれなかったが、その代わりに竜そのものと契った。人としては、もう普通ではない」
その言い方は、妙に慎重だった。
私は少し考えてから、肩をすくめる。
「今さら“普通の淑女です”なんて顔できないもの。雪山歩いて封印解く令嬢に、普通は似合わないでしょう?」
「そうだな」
アークが目を細める。その目が、どこか安堵しているように見えた。
「俺はお前に、全部話しておくべきだ」
「ん?」
「この契約は、お前の願いを叶える代わりに、俺の執着も縛る契約だ」
「執着?」
「お前が俺を起こした瞬間から、俺はお前に繋がれている。契約者として。守るべき者として。——愛する相手として」
さらりと言われて、心臓が本気で止まるかと思った。
「……今、なんて」
「聞こえなかったか? もう一度言おうか」
「いいです!!」
両手で耳を塞ぐ。けれど、頭に直接響く彼の声からは逃れられない。
『レイナ。俺はお前を愛している』
「やめなさいってば!!」
バン、と机を叩く。インク壺が揺れた。
マリアが扉の外で「きゃー」と変な声を上げているのが聞こえる。聞き耳立てていたらしい。あとで説教だ。
アークは本当に楽しそうに笑っていた。
「契約だと言っただろう。お前の望みを叶える代わりに、俺の望みも通す」
「私、そんな項目にサインしてません!」
「口づけで承認した」
「不意打ちでした!!」
「うむ。あれは良かった」
この竜、本当にどうにかしたい。
でも——嬉しくないわけじゃ、なかった。
封印の谷で交わした口づけの感触が、まだ鮮やかに残っている。
あれは契約のためだった。儀式の一環。そう思おうとしたのに。
(……もう一回、してもいいかな、なんて)
そんな考えがよぎる自分に、自分で驚く。
「レイナ」
名を呼ばれ、顔を上げると、アークがすぐそこにいた。
椅子ごと引き寄せられ、距離が一気にゼロに近づく。
「ちょ、ちょっと——」
「さっき、耳を塞いだ。だから、もう一度だけ言う」
「言わなくていい——」
「俺はお前が好きだ。契約者としてではなく、一人の女として」
真っ直ぐな蒼が、逃げ場を塞ぐ。
心臓がうるさい。頬が熱い。足の先まで痺れる。
「お前の答えは、急がない。だが——」
彼は囁くように続けた。
「キスは、もう一度してほしい」
世界が止まった気がした。
口づけを求めているのは、今度は竜ではなく——私の方だ。
喉がからからに乾く。頭のどこかが、必死に冷静さを保とうとしている。
(落ち着きなさいレイナ。これは竜。危険。全身バグみたいな存在。甘い言葉にほだされると、そのまま一生囲われる)
でも、その全部が、この男の隣なら悪くない、と囁いている。
辺境を守る力をくれたのは、この人だ。
私を「足りない」と言わず、「面白い」と笑ったのも、この人だ。
私は小さく息を吸い込む。
「……アーク」
「うん?」
「キスは、一回だけじゃ足りません。契約の確認が、まだできてないから」
自分でも驚くほど素直な声が出た。
アークの目が大きく見開かれ、次の瞬間、唇が重なる。
今度は、不意打ちじゃない。
彼の手がそっと頬を包み、少しだけ深く、優しく触れて、離れる。
さっきより、ずっと温かかった。
「確認、できた?」
茶化すように問うと、アークはわずかに笑って、額をこつんと合わせてきた。
「ああ。これで確信した」
「なにを?」
「お前は、もう俺のものだ」
「言い方!!」
文句を言いながらも、否定しきれない自分がいる。
マリアが扉の向こうで「きゃー!!」と二回目の悲鳴を上げた。きっと今のも聞こえている。あと三倍説教だ。
* * *
数日後。
王都から再び届いた書状には、こうあった。
『北境における竜との共存が領民に利益をもたらしていると聞く。王家としても歓迎する。ぜひ王都へ赴き、竜と共に我らの前で忠誠を示されたい』
「行かない」
アークは一秒で言った。
「私も行きたくないわね」
私も一秒だった。
マリアが咳払いをして口を挟む。
「ですが、完全に無視すると、さすがに角が立ちます。……“北境防衛費削減の件を撤回いただけるなら、考えます”くらいは返しても」
「それは良い交渉だ」
アークがにやりと笑う。
「奴らが折れれば、お前の領民はもっと楽になる。折れなければ、そのままこちらで強くなればいい」
「前向きですね」
「竜だからな」
私はペンを取り、さらさらと文面を書き連ねる。
礼節も敬意も表向きは欠かさず、その実、一切主導権を渡さない文で。
書き終えて封をするとき、ふと思う。
王都にいた頃の私では、こんなふうに笑って手紙を書けなかった。
今の私は、竜と共に笑っている。
「レイナ」
「なに?」
「お前が望めば、王都ごと凍らせてやってもいい」
「物騒なこと言わないの」
「冗談だ。半分はな」
「半分冗談でもやめてね? 本気でできそうだから怖いのよ」
口ではそう言いながら、胸の奥は不思議と軽かった。
もしまた理不尽が押し寄せても、今度は一人じゃない。
銀竜アークと、マリアと、辺境の人たちと一緒なら、きっと笑って跳ね返せる。
窓の外では、雪解けの大地に小さな芽が顔を出している。
神竜に選ばれなかった辺境令嬢は、今、銀竜の隣で笑っている。
少しだけ図々しく、心の中で願う。
(このキスも、この日々も。もう一回どころか、何度だって、重ねていけますように)
それが、私の新しい“望み”。
竜はそれを聞き取ったのか、蒼い瞳を細めて、穏やかに囁いた。
「何度でも叶えてやるよ、レイナ」
その声があまりに優しくて、私はまた頬を赤くしながらも、笑ってうなずいた。
——辺境令嬢、契約ドラゴン様に溺愛されて困っています。
でも、もう一回のキスくらいなら。
困ってるふりして、素直に貰ってしまってもいいと思う。




