20 親の昔話は子供にあまりいい影響を与えない-2
4章20話です!
よろしくお願いいたします!
そこからふたりが仲良くなるまでそう時間はかからなかった。会う頻度が増え、ガレスの話を聞き、マルゼリアが微笑むようになった。やがて2人は卒業し、ガレスは卒業してすぐにプロポーズし2人は夫婦となった。
幸せな日々だった。ガレスが王となるための勉強をしている時、マルゼリアがそばで見て教えてくれた。
休みの日は2人で王宮内の庭や街を見て回った。
そして数年後、子どもができた。日に日に大きくなっていくマルゼリアのお腹を2人は優しく嬉しく見守った。
2つの産声が部屋に響き渡った。金髪の男児と銀髪の女児の双子だった。アルレスとルティア。そう名付けられた2人の子。これから家族4人でさらに幸せな日々が待っていると、そう思っていた。
ルティアが魔法を使った。まだ1才にもならない赤子が魔法を使ったのだ。その上その魔法は他と少し違った。他と少し違う魔法を使った。それだけだ。たったそれだけの理由でルティアは“魔王の器”だとまことしやかに囁かれるようになった。その噂はたちまち街中に広がり、ルティアではなく、ルティアを産んだマルゼリアが街の者から批判を受けた。
「なぜ器など産んだのか」「街に、国に不易をもたらしたらどう責任をとるつもりなのか」と。
勝手を言う民たちに対しガレスは憤った。逆にマルゼリアはその声を受け入れた。王の妻としてその声を聞くのは当然なのだと、子どもたちのために強き母でいなければならないと。
だが、日夜続く罵声や嫌がらせは着実にマルゼリアの精神を削り取っていった。
アルレスとルティアが生まれて1年がたとうかと言う頃、マルゼリアが病にかかった。対して重くもないもののはずだった。だが、民からの声を受け止め続けたマルゼリアの精神は限界だった。日増しに弱っていくマルゼリア。ちょうど1年たった頃、その時が訪れてしまった。
その時、部屋にはベッドに横たわるマルゼリア、そばでマルゼリアの手を取り優しく言葉をかけ続けているガレス。そして、扉のそばに立ち、2人を見守る従者の男の3人。マルゼリアは掠れた弱々しい声で、言った。
「あなた...あの子たちを...頼んだわよ。2人にとっての良いお父さんで...いてあげてね?」
「もちろんだ...」
「〇〇〇...この人は、あんまり国政が得意ではないから...そばで支えてあげてね?あなたになら...ちゃんとこの国を託せる...。」
「...貴方様から託されたこのランブル、見事守り抜いてご覧に入れましょう。」
2人の声に昔と変わらない微笑みで答えたマルゼリアは若すぎるその生涯に幕を閉じた。
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「彼女が空へ旅立ったその事実はその日のうちに国中へ広がりました。民から上がった声は、王妃が逝った悲しみでも、王妃を無くした王への労りでもなかった。ただ、器を産んだから、魔王の呪いにでもかかったのだろうと、哀れんだのです。」
聞けば聞くほど吐き気を催す。頭の血管が切れそうだ。アルレスは今までにないほどの悲しみと怒りを覚えていた。だが、話を聞いて余計分からなくなった。
「キリム、あなたはなぜそんな話を?」
「...当時話を聞いた時、私も迷ったものです。この国の民に本当に守る価値などあるのか、と。しかし、」
前置きし、深く深呼吸をしてからキリムはその眼でアルレスとルティアを見据える。
「私は国を託された。」
この時ようやく合点がいった。例えどんなことをしても、彼は母から託されたこの国を守ろうとしている。彼女の愛した娘からしあわせを奪ってでもだ。
「...父はこのことを?」
「おそらくは知っておられるでしょうな。アルレス殿下、あの方はあなたが思うほど愚かではありません。私と王妃が何度も彼にお教えして来ました。人並みに頭は切れるし、政治もできるのですよ。しかし彼は私に政治を託した。王妃が私に託されたからです。」
これこそが彼の覚悟。国を背負ったとても大きなその身体は今まで以上に強く見え、今までにないぐらい悲しみを背負って見えた。
「キリム、あなたの想いと覚悟はしかと聞き届けました。しかし、僕は今まで以上に妹たちを守りたいと言う想いが強くなった。民が愚かなどとは思わない。でも、民のために妹の笑顔を、友達を奪わせる気は起きない!」
「分かれとは言いません。ですが、このまま引き下がる気もない。」
「あなたは僕が止める!これ以上、その悲しみを続かせないためにも!」
「来なさい。その剣、誰があなたに教えて来たのか教えて差し上げましょう...!」
「はああああああ!!!」
勢いよく飛び出したアルレスとキリムの剣が交わり、もうひとつの戦いが始まった。
読んで頂きありがとうございます!
いやー今週は更新出来ずに申し訳ありませんでした!
繁忙期入ったかもしれません。嫌だ。
その代わりと言ってはなんですがこの三連休は1日1話は投稿させて頂きます!よろしくお願いします!