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元社畜令嬢 〜今世こそは良い人生を!〜  作者: 零式NINGEN
第1章 初めての異世界
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9 お隣さんにお忍び旅行-3

9輪です!よろしくお願いします!

セルゲイが差し向けた傭兵の男たちの和解(?)した直後。


俺の誘拐が上手くいった時馬車に乗って帰ろうとしていたのか、馬さんは無傷で生きてたので態勢を整え再出発する。


「騎手を任せても?」


「ああ、もちろんだ。」


長身の男に騎手を任せ馬車に乗り込む時、


「そういえば、あなたたちの名前を聞いてませんでしたわね。」


「ん?ああ、そういえば。」


「俺はマークだ!」


長身じゃない方の俺口調が真っ先に名乗る。


「自分はハンスです。」


自分口調の盗賊が次に。


「俺はベリルだ。よろしくな、嬢ちゃん。」


「ええ、よろしく。」


最後に長身の男が名乗って自己紹介も終わった。

そのまますぐにゴルドリッチ領に向け再出発する。


馬車の中で外を眺めているとカリーナから声をかけられた。


「お嬢様。」


「ん?」


「本当にお強くなられましたね。」


「え?ど、どうしたの急に。」


「いえ、素早くあの者たちを無力化し、許しと救いを与える。とても14の女の子とは思えませんでした。」


「そう?ありがとう。」


あの覚悟の顔は昔毎日鏡で見ていた顔だ。

明日にでも辞めてやる。そう心に決めるも結局毎日変わらず、変われずその日を過ごす。

変わりたいのに変われない自分を慰め、このままでいいのかと迷える心を無理やり納得させようとしている自分に苛立ちを覚えている顔だ。


あっ...また心臓がキュッてなる。


まぁ、それを抜きにしてもほっとけなかったし。


「しかしカリーナは少し心配でもありますよ?過度な成長は自分自身の勘違いを加速させてしまうこともあります。あまり危険なことはなさらないでくださいね?旦那様も心配されますから。」


「分かったから、もうっ...」


上げて落とされた。母さんより母さんしてる気がする。

カリーナの母親ムーブにげんなりしつつ馬車に揺られる。



馬車に揺られて......何時間だろう?

でも明け方出発してまだ日は高いのでそんな時間経ってないか。


騎手をしていたベリルから声が掛かる。


「お二人さんそろそろ着くぞ、準備しろ!」


「分かりました!」


カリーナとゴルドリッチ領に入るための準備をし、待つ。

窓から外を眺めていると街がひとつ見えてきた。

席に戻り寝たフリをしておく。

馬車が止まり耳をすませば外からベリルと見張りの人間であろう声の会話が聞こえる。


「ベリルだ。通してくれ。」


「よぉ。セルゲイ様に言われたもんはちゃんと回収してきたか?」


「ああ。中、見てもいいぞ。」


薄目で確認すると窓から眠り、拘束された俺たちを見る見張りの姿。数秒見つめて離れていくと「通れ」と言う声が聞こえた。


ザルである。


馬車が動き出して少しするとまた止まり、ベリルの声が聞こえる。


「もういいぞ。」


俺とカリーナは起き上がり拘束に見せかけた縄を置いて、外に出る。


「ここは?」


辺りを見回すとそこは街とは言えないようなボロボロの家が立ち並ぶ街の1部、その入口だった。


「俺たちの家がある場所だ。ついて来てくれ。」


ベリルについていき、街を見回す。

人の気配があまりない。建物はかなり老朽化しておりツタやコケが絡まっている。ところどころ壁がひび割れている家もある。とても財力がある領地には見えない。


2、3分歩き到着したのは小さな小屋が1件の場所だ。辺りに家自体があまりなく、さっきの場所より過疎化が進んでるような場所である。


「母さん、ただいま。」


ベリルは少し待っていてくれと言うと小屋の扉を開け、入っていった。


「それにしても、街に入ってからは警備がいませんね。」


「俺たちから税だの徴収した金も自分の懐に入るもんだ。必要以上に使いたくねぇんだろ、あの守銭奴は。」


「戦争では金にものを言わせた物量戦を行っていると聞きましたが。」


「勝たなきゃ意味がねぇからな。自分が不利益被る時には渋らねぇのさ。」


マークと話していると、ベリルが家から顔を出した。


「いいぞ、入んな。」


「失礼します。」


中に入ると、そこは小屋の面積全体を使った一室になっている。右手にはキッチン、中央に4人がけのテーブル、そして左手には床にしかれた毛布がひとつと痩せて顔が痩けた女性が眠っているベッドがひとつ。


あれが...


「母さん、この人が俺たちを助けてくれるって人だ。」


ベリルが話すと女性は目を開け視線を向けてくる。


「...ああ、随分、可愛らしい娘が来たね。」


ゆっくりと弱々しく話すその妙齢の女性はしかし、優しさと力強さを持ったいい声をしている。


「初めまして、小さな救い主。ワタシはリンネ、リンネ・ジルファードだ。客人をこんな姿で出迎えることになってすまないね。」


「いえ、お気になさらず。私はシーナ・ヴォルフフォード。こっちはカリーナです。よろしくお願いしますわ。リンネさん。」


軽く自己紹介をし、ベリルに促されイスに座る。


「とりあえず雑談は後にして、話してしまいましょう。リンネさん、あなた、ここから逃げる気はありますか。」


色々済ませたいこともあるので早速本題に入る。


「できるのかい?あんたのような小さな娘に。ワタシたちを連れて逃げることが。」


「警備は手薄、警戒も低い。2,3人気絶させてあなた方を連れ出すのは難しいことでは無いと考えています。私が今聞いているのはあなたの意思。ここで年中眠っている生活に満足されているのなら無理は申しませんが。」


「言うじゃないか。もちろん出たい気持ちはあるさ。お嬢ちゃん、ワタシの言う”たち”ってのはここにいる5人ちょっとの話じゃないよ。

この朽ち果てた街にいるヤツら全員だ。いくら警備が手薄だからといってそんな大勢連れてゾロゾロ歩けばバレる可能性は高い。そうなればヤツの玩具たちが捉えにやってくる。殺されちまうかもしれない。

アンタにそいつらを救う度胸とそいつらの命を背負う覚悟はあんのかい?」


全員での脱出をご希望か。


「この一角に住んでいる人の人数は?」


「だいたい140くらいだね。」


多い。街を出るのも出たあともその人数引っ張って移動しなきゃいかんのか。


「...いいでしょう。ベリルたちに救うと言いましたし、まとめて面倒見てやります。」


「フッ、決まりだ。ベリル、アンタアイツらに伝えてきてやんな。」


「お、おう。」


「決行は今夜11時です。私たちがこの街に来ていることをセルゲイとその仲間が知っている可能性もありますから。」


「分かった。その時間にここに集まるよう言ってくる。」


そう言いベリルは出ていった。


「お嬢様、私はこの街についてとセルゲイについて調べてきます。」


そう言いスっと立ち上がるカリーナ。

はっきり言って心配である。


「1人で大丈夫?」


「ええ、むしろ1人の方が動きやすいですから。ご安心を、脱出までにはちゃんと戻りますよ。」


そう言い残しカリーナも出ていった。


さて、俺の方も脱出させるための準備をしますかね。


「リンネさん、ここから1番近い森は?」


「西だよ。」


ざっくりしすぎやん。


「俺たちが来た森だ。」


マークから良いこと聞けた。

遠回りとかせずにヴォルフフォードに行けるのはありがたい。


俺は背中辺りに魔力を込めつつ、脱出のルートを頭で考え始めた。


読んで頂きありがとうございます!

小説1巻分が10万文字と聞いて驚いております!

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