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17 兄の天敵

4章17話です!

よろしくお願いいたします!

猛攻につぐ猛攻。されど荒々しさは無く、舞のように見惚れるほど美しい軽やかな動き。背は高いが筋肉ムキムキとは程遠い華奢な身体からは想像もつかないほどの重い剣。それが何度も続く。

この人に体力という概念はないらしい。5分程切り結んでそう感じた。俺とラーマン兄さん二人を相手に常に余裕の立ち回りを見せている。そして汗1つかいてない。


「クソッ...体力バカが...!」


「ふふ、もう疲れたかい?少し休憩しようか?」


「ほざけ!」


ラーマン兄さんが仕掛ける。少し遅れて俺も合わせる。肩に、腹に、脚に振り抜く剣はどれもアイン兄さんの剣に阻まれる。


「2人ともこの数ヶ月で随分腕を上げたね。ここまで着いてこれるとは思わなかったよ。」


俺とラーマン兄さんの攻撃が重なったタイミング。たまたまあっただけだと言うのにそれすら対処してみせる。2人の剣を同時に弾き蹴りの構え。俺のみぞおちを狙ったその右足はラーマン兄さんの背中に当たった。


「ぐぅッ!」


ラーマン兄さんに抱えられたまま2人一緒に吹き飛ばされる。俺は剣を持っていない左手で火球を作り鼬の最後っ屁を放つ。アイン兄さんの剣によって真っ二つにされた火球は廊下の壁にぶつかり弾け、黒く焦がした。


「チィッ...!シーナ、無事か?」


「はい。ラーマン兄さんは大丈夫ですか、背中。」


「問題ねぇ、もう一度だ。」


「次は私が。」


「任せる。」


俺は振り返り、いつの間にか来ていたアルレス殿下に声を飛ばす。


「殿下!」


「なんだ?!」


「今から私の立っている半径1メートルの床を壊します!よろしいですか?!」


「えぇ?!な、なぜ!?」


「よろしくですか?!?!」


「きょ、許可!許可...する!!」


無理矢理許可を得た俺は脚に力をこめる。兄さんたちは見ていない。完璧な対処は難しいはずだ。


力をこめた脚の力で思いっきり床をける。床がドゴンと壊れる音を残し、最速でアイン兄さんに接敵する。剣で叩けば絶対に骨が逝くと考えて拳でみぞおちを狙う意趣返し。何とか剣で防御の構えをとる兄さんだが、力のこもっていないその剣の壁は俺の拳を完全に受け止めることが出来ず、弾かれる。

そのまま俺の拳はアイン兄さんのみぞおち兄さん突き刺さり、今日初めてアイン兄さんへダメージを与えた。


アイン兄さんは「ぐおぁ!」とうなり、顔を歪ませながらも俺の腕を逸らし左へ転がる。


「あ〜〜れ〜〜.....」


━━━━━━━━━━━━━━━


妹の隠し球により少なくないダメージを受けたアイン。いまだに片膝をつきゴホゴホと咳をたてる兄にここぞとばかりに肉薄するラーマン。音か殺気か、それにいち早く気付いたアインは無理矢理身体をおこし応戦した。ガギィィィンとラーマンの重い一撃と、同等の力で受け止めたアインの剣から火花とともに快音が響く。


「少し驚いたよ...!」


「俺もだ...!」


「違うよ。」


「あん?」


「お前は妹のワガママとか聞かないやつだと思ってた。でも、やっぱりお兄ちゃんだからかい?」


「違ぇよ。俺はアイツのワガママなんて聞いた覚えはねぇ。ただ、ヤツの根性にあてられただけだ!」


剣を振り抜き、アインを弾く。

互いに目の前の強敵だけを見ていた。だが、“その方向”を向いていたラーマンは遠くからものすごい勢いで飛んでくるそれに気がついた。


「おい。」


「?」


「後ろがガラ空きだぜ?」


なにかに気がついたように首を回すアインだったが、遅かった。回転しながら振り下ろされた剣ではない柔らかい何かに頭頂部を殴打され倒れた。


━━━━━━━━━━━━━━━


どこぞの兵長並に回転した俺は今にも吐きそうになりながらも受け止めてくれたラーマン兄さんに礼をいい地に足をつける。


「つつつ...」


頭を抑えながらアイン兄さんが立ち上がる。


「全く...お兄ちゃんの頭を後ろからひっぱたくなんて。そんなはしたない子に育てた覚えはないよ。」


「育てられた覚えもありませんね。」


「だいたい何で叩いたの?」


アイン兄さんの質問に俺は手に持ったあるものを見せることで答える。


「......絨毯?」


「正解ですわ。」


そう。無駄に長い廊下をひとっ飛びしていた俺は着地地点の絨毯をいい感じのサイズに切り取り、丸め、筒をつくっていた。よく上司がこれで机をバシバシ叩いていたものだ。

さすがに剣で引っぱたけばアイン兄さんが死ぬ。

拳でやっても同様だ。みぞおちに入ったのはアイン兄さんの防御で多少勢いが落ちたからにすぎない。無意識下からの攻撃は普通に受けるよりもダメージが大きくなる。そのため俺は柔らかい武器でひっぱたいたのだ。とはいえ、絨毯だってそれなりの重量はあるし、あの速度で突っ込んだ勢いならそれなりのダメージにはなる。これですっ転んで頭でも打って気絶でもしてくれたならそれで良かったんだが...


絨毯を捨て、再び剣を構える。

そろそろ戦いはじめて5分。時間がない。

俺とラーマン兄さんは作戦Bへ移行することにした。

読んで頂きありがとうございます!

次回更新予定日は木曜日です!

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