13 兄は辛いよ-1
4章13話です!
よろしくお願いいたします!
「シーナ...?」
なぜしばらく手紙もなかった妹がここにいるのか。そんな疑問は彼女の背負う人物を見て遥か彼方に飛んでいった。なぜ王女であるルティア様をおんぶしているのか。俺が疑問符と感嘆符を頭に羅列し固まっているのをよそに、シーナとルティア様は笑顔を浮かべる。
「良かった、まだ生きてます。」
「良かった...本当に...」
シーナの背中から降り、こちらに歩いてくるルティア様。俺は小さな竜を抱えたまま片膝をつく。
「お初にお目にかかります、ルティア様。ヴォルフフォード家次男、ラーマン・ヴォルフフォードにございます。」
「ルティア・ランブルです。あなたのことは、シーナから、聞いています。とても、素晴らしい...剣技をお持ち...だと。」
「恐縮です。失礼ながら、ルティア様。ひとつ、質問をしても?」
「構いません...よ?」
妙な区切り方で少し遅い喋り方に辟易しつつ、気になっていることを聞く。
「なぜ、妹のシーナとルティア様が一緒に?」
「......友達、だから。」
我が妹はいつの間に王女と友人になどなったのだろう。連絡がない期間になにかあったのだろうが、だとしてもたった2週間足らずでおんぶまで許されるとは一体何をしたのか。まぁ今考えるのも仕方ないだろう。なんにせよ王家との関係が繋がるのは、ヴォルフフォード家にとってもいいことだと思う。
「すみません、もうひとつ。ここへは一体なんの御用で?」
「カロンを、探して、来たの。」
そういい抱えた竜を指さすルティア様。まさかとルティア様の後ろで話を聞いている妹を見る。真剣な顔で頷くシーナ。どうやらこの竜は王女のものらしい。流石に驚きが隠せない。ということはおそらく...以前現れたやつも、ルティア様の...?
「カロンを、こちらに、渡して...くれる?」
「......失礼ながら、ルティア様。」
「?」
「竜という存在が、民たちによく思われていないのはご存知でしょうか。私もこれで騎士を志す身。民に、家族に、国に、危険を及ぼす可能性のある存在を軽く受け止める訳にはまいりません。」
答えによってはこのままはいどうぞと渡す訳にはいかない。
「っ!」
「カロンは、友達。私が、させない。人を、襲うような子に。だから、お願い、します。私の友だt...家族を、返して...くれませんか...?」
頭を下げている。それだけじゃない、両膝をついてだ。俺だけじゃなく空気になっていた妹まで猛焦りである。
「あ、頭をお上げください!私なんぞに王女様が懇願する必要はありませんよ!」
「そうですよルティア様!“こんなヤツ”に綺麗なお召し物を汚されてまで頭を下げる必要なんてありませんわ!」
「おいぶっ飛ばすぞてめぇ!」
妹がサラリと言った悪口に注意(?)しつつルティア様に向き直る。
「ルティア様、ご安心を。この竜はお返ししますので。」
竜を離すと、死にかけの竜は必死に這いずり、ルティア様へと近づいていく。そしてルティア様の腕の中に収まったその竜は今までと比べて穏やかな顔をしている気がする。猫のようにゴロゴロと喉を鳴らしてルティア様に甘えているように見える。
「ルティア様、急いで戻りましょう。まだ生きていただけです。このままではカロンがもちません。」
「うん...!帰ろう!」
「シーナ、どういう意味だ?」
「カロン、この竜はルティア様の元で瀕死の状態から生きながらえて来ました。つまり、現状ルティア様の部屋でなければ生きることそのものが不可能になります。」
「なるほどな...」
それなら別に周りに被害をおよぼすことはないように思える。ルティア様に管理を任せていればいいのではないかと。だが、竜が生きていることを許さない存在もいる。アイツとかな。
「そういうことならさっさと戻っちまおう。カロン...だっけ?竜は俺が連れていく。シーナはルティア様を頼む。」
「良いんですか?協力してもらって...」
「ああ...コイツの根性に免じてな。」
この竜、カロンとやらは見つけたあの場所からただひたすらにルティア様の元へ向かおうとしていたのだろう。元々連れていくつもりではあった。コイツの向かう先にめぼしいものが王宮しかなかったためだ。
合わせるのが先か連れてくのが先かという違いだけだ。
竜をルティア様から託され、シーナonルティア様とともに街の屋根や城壁、道無き道を突き進む。
あっという間に王宮に到着する。なんだか随分騒がしい。いや、そりゃそうか。王女が勝手に出て行ったんだからこうなるのも必然....
「シーナ」
「何です?」
「お前ちゃんと許可とったの?」
「何のです?」
「いや...お前、王女様を街中に連れ出すんだぞ?王様の許可とかいるんじゃねぇの?」
「.............」
「とってねぇな?」
「いや、王様からルティア様をお外に連れ出して欲しいってお願いされてるので何も問題ないといいますかむしろ感謝されてもいいと思っt」
「とってねぇんだな?」
「とってないですねはい。すみません。」
なんというか、時たま周りが見えてないんだよな…うちの妹。
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