11 2人の目指す場所
4章11話です!
よろしくお願いいたします!
ランブル王国王宮。王族やそれに付き従うものたちが優雅に暮らすその場所で、ドタドタと騒がしく廊下を駆ける少女がいた。
彼女の目指している場所はひとつ。
最近父がこの場所に呼んだやけに自分に構ってくる同い年くらいのもう一人の少女の部屋である。
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「シーナッ!!!」
慌てた様子で呼ばれた名前に意識が覚醒する。
勢いよく体を起こし貸部屋の扉に目をやると、よほど急いで来たのか手を膝につき、息を切らして立っている少女がいた。
「ルティア様?どうされました?」
「カロンが...カロンがいないの!」
すぐさまベッドから飛び出て細かな情報も聞かずに廊下を駆ける。ルティア様の部屋に到着し、勢いよく扉を開け放つと、そこにはピンク色の液体だけが入ったガラスの筒があった。そして漂う強烈な異臭。
よく見るとガラスの筒にしてあった蓋が開けられている。
嗅いだことのある臭い。大会に現れたあの竜の死骸と同じ臭いだ。
「シーナ!」
「一体何があったんですか!?」
追いついて来たルティア様の肩をガシッと掴んで状況を聞く。ルティア様はまだ頭の整理が追いついていないのかしどろもどろになりながらも話してくれた。
「あの子...ミーゴと同じ...。私が起きたら...蓋が開いてて、お、お薬の匂いがお部屋にあって...気がついたら、カロンがいなくて...」
「昨日はお休みになられたのですか?」
「う、うん...久しぶりに、寝た...ミーゴが居なくなって、からは...初めて、かも。」
なんてこと!?大会から何日たってると思ってるんだ!?どおりで目の当たりが暗いはずだ。その日からカロンを生み出し、大切にしてきたのだろうな。
ん?というか...そういえば...
「カロンはここで生まれた子ですよね?」
「カロンは、東のディムステル森林で、生まれた子...よ?」
なんてこと!?ここで生み出された子じゃないのか!?今までずっと勘違いしてたのか…。
ん?じゃあ...
「なぜここであんなギリギリの状態で生きていたのですか?」
「...カロンと、ミーゴは、ディムステル森林で、死にかけの状態で、一緒...に、倒れてた。少し前に...ね、お父様、とか、お母様に、秘密で、探検に、行ったの。」
ディムステル森林。人が10人は詰められるのではないかと言うほど太く大きな幹の木が立ち並ぶ場所。俺の背丈程の草も密集しており、1度入れば出れる確率はとても低いとされているため、多くの自決を決めたものが訪れるとされている。
なぜそんなところに行ったのかはこの際置いておこう。竜はここで生まれたのではなくディムステル森林に住み着いていたのか。
人の手が入ってこず、森に住む動物を狩れば延命はできるだろうか。まぁ何も不思議なことはないか。
「それで、カロンとミーゴを連れ帰って来た...?」
「そう...。私は、人と話すのが、苦手だったから。私と、同じ、あの子たちと...なら、お話、できるんじゃないかって...。」
最初はただの話し相手。だが、接しているうちに愛着がわいたのだろう。俺にとっての重要書類とかと同じようなものだ。ただ自分の内側をぶつけるもの。それが長く続けば心の奥の方でそれに対する愛情がわく。
「ルティア様、探しましょう。多分、きっと、見つかりますよ!」
「どうやって...?」
「お任せください!考えがあります!」
少なくとも昨日の夜まではいたんだ。なら体にしっかりと染み付いているはずだ。ルティア様が改良に改良を重ねた愛情の結晶が!
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その小さな命を見つけてもう1時間程たっただろうか。
見つけた場所からおよそ200m程か。ゆっくりと、着実に前へ進んでいる。
しかし、確実に弱って来てもいる。先程から随分息が荒い。体も痙攣し、進みが遅くなってきている。
「ハッ...ハッ...」
力なく息をする竜を見つめ、ラーマンは考える。
大会に現れた巨竜と同種なら、なぜこの竜は学園なんかにいた?あの竜は生後2歳前後と聞いた。
では目の前のコイツは一体何歳だ?同じように体が腐っているが、なぜコイツは死んでいない?あの竜は既に息絶えていたところを操られていた。死んでから成長することなんてないだろう。
「チッ...ああクソッ!」
考えるのが苦手なラーマンは頭を書いて竜を見る。
「っ!」
止まっている。十数m離れた位置で歩みを止めていた。息はある。この位置からでも竜の息は聞こえてくる。
竜に駆け寄り、様子を伺う。体を動かすのもままならないらしい。それでも、その目は変わらず前を見据えている。なにかに取り憑かれたかのような執念でただ、一点を目指している。
「.........」
フゥと息をつき、剣を鞘に納める。
そして崩れそうなその小さな体をそっと抱き抱えた。
「コッチに行きてぇんだろ?」
竜が目指す方向へ歩き出した。心なしか竜の息が安らかに、されど元気になった気がする。自分のやってることが正しいのか正しくないのかも分からないが、なにか放っておけなくなったラーマンは、森を歩く。
目の前が眩しい。森を抜けた。学園の敷地内にある小さな丘だ。昼休みにはよくこの辺りで昼飯を食べている男女を見かける。丘の上まで歩き、街を見渡す。
そして目的の方角にゆっくりと目をやる。
「...まさかな。」
そこにあるのは王宮だけだ。この竜がそこを目指す意味は分からない。だが...
「まぁ、行ってみるか...」
竜の執念に従い、王宮まで歩き出す。空はすっかりと茜色に染まっている。
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